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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
老人の名は、秋山修司。
七十三歳。
彼の本には、“妻を忘れていく人生”が書かれていた。
「認知症……」
雫はページを読みながら呟く。
修司は苦しそうに笑う。
「最近な、顔が思い出せなくなるんだ」
写真を見ても曖昧らしい。
「でも忘れたくない」
その言葉に、雫の胸が痛む。
自分も同じだった。
消えていく記憶。
大切なものほど、遠ざかっていく恐怖。
修司は震える手で写真を撫でる。
「妻はもう死んでる。でもな……」
彼は涙を浮かべた。
「忘れたら、本当にいなくなる気がするんだ」
時雨堂が静まり返る。
玲は雫を見る。
「今回の依頼は難しい」
「どうして?」
「病気による運命は、簡単に変えられない」
栞も静かに言う。
「でも、“想い”は残せるかもしれない」
雫は修司を見つめた。
忘れたくない。
その願いが、痛いほど伝わってきた。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




