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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
雨の中、遥香は泣き崩れていた。
雫は肩で息をしながら立ち尽くす。
頭の奥がまだ痛む。
何かを失った感覚だけが残っていた。
「……私、何を忘れたの」
小さく呟く。
だが答えは出ない。
遥香は涙を拭いながら言った。
「私、本当は書きたかった」
震える声だった。
「小説家になりたかったの」
雫は静かに頷く。
「じゃあ、また書けばいい」
遥香は苦しそうに笑う。
「もう遅いよ。二十七にもなって……」
「遅くない!」
雫は強く言った。
「生きてるなら、まだ終わってない!」
その言葉は、自分自身へ向けた叫びでもあった。
遥香はしばらく俯いていた。
やがて小さく言う。
「……怖い」
「うん」
「また傷つくのが怖い」
雫はそっと答える。
「それでも、生きてほしい」
雨が止み始める。
遥香はゆっくり空を見上げた。
その瞬間。
遠くで、誰かが雫を見ていた。
黒いコート。
神代透だった。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




