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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
その夜。
雫は遥香の勤務先近くで彼女を待っていた。
雨。
終電間際。
遥香はふらつくように駅へ向かっている。
顔色は真っ白だった。
本の通りなら、この後――。
雫は勇気を振り絞って声をかける。
「あの!」
遥香は驚いて振り向く。
「……誰?」
疲れ切った目だった。
雫は必死に言葉を探す。
「あなた、小説好きですよね」
その瞬間。
遥香の表情が止まった。
「なんで……」
「諦めたくなかったんですよね」
遥香の目から涙が零れる。
「……もう無理だよ」
「無理じゃない!」
雫は叫んでいた。
「好きだったものまで捨てたら、本当に何もなくなっちゃう!」
雨が強くなる。
遥香は震えながら泣いていた。
「頑張ったのに……」
雫はその言葉に胸が痛む。
誰にも認められない苦しさ。
壊れるまで頑張ってしまう痛み。
その時。
雫の頭に激痛が走った。
視界が白く染まる。
そして――。
幼い頃の“ある記憶”が、完全に消えた。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




