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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
「誰……?」
雫は警戒する。
だが青年――神代透は無表情のまま本棚を眺めていた。
玲の顔が険しくなる。
「透。何しに来た」
「見学」
透は淡々と答える。
「また誰かを不幸にするのかと思って」
空気が凍る。
雫は意味が分からなかった。
「どういうこと?」
透はゆっくり雫を見る。
「運命を書き換えるたび、誰か別の人生が壊れる」
「そんな……」
「知らなかった?」
玲が睨む。
「黙れ」
だが透は止まらない。
「救われた人間がいるなら、その代わりに沈む人間もいる」
雫の背筋が寒くなる。
栞が静かに言った。
「全部が間違いじゃないわ」
「……え?」
透は苦笑する。
「だから俺は止めてるんだよ」
そう言い残し、闇の中へ消えていく。
雫は立ち尽くした。
もし本当に、誰かを救う代わりに別の誰かが傷つくなら。
自分は何をしているのだろう。
玲は静かに呟く。
「気にするな」
だがその横顔は、ひどく苦しそうだった。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




