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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
「……え?」
震える指で、本を見つめる。
自分の名前。
間違いない。
「どうして……」
青年――九条玲は静かに本を拾い上げた。
「触ってみな」
雫は恐る恐る本に手を伸ばした。
瞬間。
視界が白く染まる。
知らない景色。
泣いている自分。
病院の白い天井。
雪。
そして誰かの声。
『ごめん』
次の瞬間、意識が戻った。
「今の……何?」
呼吸が荒くなる。
玲は静かに答えた。
「君の未来だよ」
雫は思わず後ずさる。
「そんなの、ありえない……!」
「信じなくてもいい。でも、その本には君の人生が全部書かれてる」
玲はページをゆっくり開いた。
そこには、本当に雫の日常が記されていた。
昨日食べたコンビニのおにぎり。
今日、教師に注意されたこと。
誰にも言っていない本音まで。
全部。
全部書いてある。
「……なんで」
声が震える。
玲は一瞬だけ目を伏せた。
「人はみんな、自分だけの物語を持ってる」
そして彼は、あるページを開く。
そこに書かれていた一文。
『二十二歳の冬、朝比奈雫は静かに消える』
雫の時間が止まった。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




