1ページ
人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
雨の匂いが、街を包んでいた。
高校からの帰り道。
朝比奈雫は濡れたアスファルトを見つめながら歩いていた。
誰とも話さない一日。
笑うこともなく、ただ時間だけが過ぎていく毎日。
「……疲れたな」
小さく漏れた声は、雨音に消えた。
その時だった。
見慣れない路地の奥に、淡い灯りが見えた。
古びた木造の建物。
『時雨堂』という看板。
こんな場所、今まであっただろうか。
吸い寄せられるように扉へ近づく。
カラン――。
鈴の音が静かに響いた。
店内には無数の本。
古い紙の香り。
時計の針の音だけがやけに大きく聞こえる。
「いらっしゃい」
低い声に振り向く。
そこには、黒髪の青年が立っていた。
「ここは……?」
「人生を探す場所だよ」
意味のわからない言葉だった。
だが青年の瞳は、なぜか悲しいほど真っ直ぐだった。
「君、自分の未来を知りたい?」
その瞬間。
店の奥から、一冊の本が落ちた。
バサリ、と。
表紙には銀色の文字。
――『朝比奈雫の人生』
雫の背筋が凍った。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




