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運命の栞  作者: あーちゃん


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12/150

12ページ

人はきっと、誰かに救われながら生きています。


大きな言葉じゃなくてもいい。

たった一言。

たった一つの優しさ。

それだけで、生きようと思える夜があります。


この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。


けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。


苦しみながらも誰かを想うこと。

忘れたくないと願うこと。

誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。


そんな、不器用で優しい人たちの姿です。


もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。

この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。


『時雨堂に、雪は降りつづく』


どうか最後まで、見届けてください。


美咲は震える手で絵を拾い上げた。


「……これ」


それは、小学生の頃に描いた絵だった。


青い空。

花畑。

笑っている自分と母親。


「どうして持ってるの……?」


雫は答えられない。


人生の本のことなど説明できるはずもなかった。


だが雫は必死に言葉を探した。


「その絵、すごく綺麗だった」


美咲の瞳が揺れる。


「……え?」


「本当に好きなんだなって思った」


美咲は俯く。


「でももう描いてない」


「なんで?」


「笑われたから」


その声は痛々しいほど小さかった。


“暗い絵”

“気持ち悪い”


そう言われ続けたらしい。


雫は胸が締めつけられる。


好きだったものを否定される苦しさ。


それはきっと、心を殺されるのと同じだ。


「私は好き」


雫は真っ直ぐ言った。


「美咲ちゃんの絵、もっと見たい」


美咲の目から涙が零れ落ちる。


「……そんなこと言われたの、初めて」


時計の針が進む。


五時三十二分。


だが。


本来訪れるはずだった“終わり”は来なかった。


運命が、少しだけ書き換わった瞬間だった。

最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。


この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。


誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。




全部を救いたい。

誰も傷ついてほしくない。


そう願っても、現実は簡単ではありません。


それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。


その小さな希望を、この物語に込めました。


雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。

そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。


人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。


もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。

それが、この作品にとって何よりの救いです。


あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。


本当にありがとうございました。

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