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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
美咲は震える手で絵を拾い上げた。
「……これ」
それは、小学生の頃に描いた絵だった。
青い空。
花畑。
笑っている自分と母親。
「どうして持ってるの……?」
雫は答えられない。
人生の本のことなど説明できるはずもなかった。
だが雫は必死に言葉を探した。
「その絵、すごく綺麗だった」
美咲の瞳が揺れる。
「……え?」
「本当に好きなんだなって思った」
美咲は俯く。
「でももう描いてない」
「なんで?」
「笑われたから」
その声は痛々しいほど小さかった。
“暗い絵”
“気持ち悪い”
そう言われ続けたらしい。
雫は胸が締めつけられる。
好きだったものを否定される苦しさ。
それはきっと、心を殺されるのと同じだ。
「私は好き」
雫は真っ直ぐ言った。
「美咲ちゃんの絵、もっと見たい」
美咲の目から涙が零れ落ちる。
「……そんなこと言われたの、初めて」
時計の針が進む。
五時三十二分。
だが。
本来訪れるはずだった“終わり”は来なかった。
運命が、少しだけ書き換わった瞬間だった。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




