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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
時雨堂へ戻ると、栞が静かに笑った。
「初仕事、お疲れ様」
雫は疲れ切ってソファへ座り込む。
全身が重い。
まるで何日も眠っていないようだった。
玲が本棚から一冊を取り出す。
『藤崎美咲の人生』
雫は息を呑む。
ページの内容が変わっていた。
『彼女はもう一度、絵を描き始める』
雫の胸が熱くなる。
「助けられた……?」
栞は頷いた。
「完全じゃないけどね」
「完全?」
玲が静かに言う。
「人の傷は、一回じゃ消えない」
雫は本を抱きしめた。
それでも、生きてくれる。
それだけで良かった。
その時。
頭に激痛が走る。
「っ……!」
視界が揺れる。
玲がすぐ支えた。
「雫!」
脳の奥が、何かを削られるような感覚。
そして突然。
――母親の顔が思い出せなくなった。
「……え?」
雫は青ざめる。
思い出そうとしても、輪郭がぼやけている。
「なんで……」
栞が静かに呟く。
「運命を書き換えた代償ね」
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




