第13話 100日目。
「それでは、行ってまいります。」
穏やかな笑みを浮かべて、リーゼは100日目のお参りに出掛けて行った。
2月。まだ暗い時間だ。息が白く見える。
真っすぐ前を見て、綺麗な姿勢で。
今朝は、また使用人が揃って見送っていた。こっそりだけど。
今日、日の出とともに、心願成就かあ、、、、どんな願いなのかは聞いていないが。
あの子のことだから、ただひたすらに、ジークの幸せを願っているんだろうなあ、、、
その思いが、成就するといいなあ、、、、
「さて、皆さん。皆さんにお願いがあります。」
*****
「た、、、、大変でございます!ジーク様!!」
毎朝の日課になった乗馬を終えて、馬を繋ごうとしたら、珍しく執事長が慌てていた。
「お、、、お嬢様が!お嬢様が!!」
「え?リーゼが?どうしたんだ??」
「は、、、早く!早く!神殿に向かって下さい!!!」
「え?」
「ああ、ジーク様、この外套を羽織って行ってください。」
「ん」
執事長が差し出した、真っ赤な外套を羽織り、繋ごうとした馬にまたがる。
何があったんだろう?大丈夫か?リーゼ??リーゼ!!
神殿までは、幼い頃から何度かリーゼとピクニックに出掛けたことがある。東だ!
夢中で馬を駆る。
昇ってきた陽に、山の稜線が銀色に染まっている。
*****
いつものように長い階段を下りて、
門まで戻って、一礼する。
ああ、、、、、終わってしまったわ、、、、達成感、と、同じくらいの喪失感。
一礼したまま、泣きそうになる、、、、涙が、一度こぼれたら、止まらなくなってしまった。あの人に、婚約破棄されたときも、泣かなかったのになあ、、、うまく、、、気持ちが整理できなかったから。
じゃあ、この涙はなんだろうなあ、、、、他人事みたいに、考える。
力が入らなくて、ひざまずく。
涙は、止まりそうにない。
「リーゼ!」
ほら、、、、空耳まで聞こえる。
あの人が、私の名前を呼ぶなんて、、、、
「大丈夫か?リーゼ?立てるか?」
神様!ありがとうございます。幻聴でも嬉しいです。そんなことは、望みませんでしたが、、、、
「リーゼ?」
神殿に延びる階段に向かったまま、崩れ落ちる。何年分かの涙がこぼれる。
不安だった、、、いつか来るとは思っていた。学院に入ってから、、、
いつもへらりと笑ってかわしていたけど、、、、ジークが私のもとを去る日を、何度となく、、、、
「ジークのことが、好きなの、、、何度も諦めようとしたのに、、、、」
「リーゼ?」
「動けなくても側にいてほしかったの、歩けなくても、いてくれるだけで良かったの、、、わがままだったわ、、、私、、、、ジークの気持ちなんて考えなかった、、、、ごめんなさい、、、好きな人といたいわよね?ご、、、、っめ、、、ん、、、」
しがみついた幻は、少し暖かかった。
さっきまで晴れていたのに、雨が降り出した。冷たくて、、、気持ちがいい、、、、




