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剣しか勝たんVRMMO  作者: 雉里ほろろ
第三章:海に轟く勇名 地に眠る神名

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第七十三話:結界の解放


 居合刀を鞘に収めると同時、張り詰めていた緊張の糸が切れた。そのまま地面にへたり込んでしまう。


「はぁ、はぁ……疲れたぁ……」


 しばらくは動けそうにない。体力的には疲れなんて感じないはずなのに、達成感と頭痛とで動く気力が湧いてこない。


「頭いてぇ……。大丈夫だよな?」


 ちょっとテンションがあがりすぎたのかもしれない。何だか、視界がグラグラしている気もする。VR酔い?

 少し心配にはなったが、近ごろのVR機器には、使用者の体調に深刻な異変があった場合に強制シャットダウンさせる、セーフティ機能が標準装備されている。

 つまり、ゲームが落ちていないということはセーフということ。


「とはいえ、今日はもうこれ以上戦う元気はないな……」


 ゆっくりと体を起こし、少し落ち着いてから戦利品の吟味に移る。

 まずはメインのドロップアイテムだろう。


・割れた宝玉

 込められた力は失われていない。片割れを求め、未だ輝く。


 このアイテムを手に入れるのは二回目だ。一つは考古学者ボナパルトの家で手に入れたものがある。


「あとはこれを組み合わせる必要があるとは思うんだが」


 とりあえず、元々持っていた方の『割れた宝玉』もオブジェクト化させてくっつけてみる。


「まぁ、こうやって簡単にくっついてくれれば楽なんだけど」


 両手に持ってカチャカチャと合わせてみると、確かに繋ぎ目は一致していそうだ。ただ、そのままくっついてくれるわけではない。接着剤とかでくっつけたら怒られるのかな。


「……ん?」


 そうして二つの割れた宝玉をもてあそんでいると、いつのまにか背後にモグラたちが集まっていた。その数三匹。頭の上のアイコンはNPCを表す緑色で、敵対の意思はない様子。


「モグ……」「モグモグ……」「モグモグモグ……」


 彼ら三匹は互いに何やら頷きあうと、俺についてくるようにジェスチャーをした。


「なんだなんだ、イベントか?」


 よく見ると、何だか彼らの歩き方はどこかたどたどしい。顔つきも、これまでのモグラと比べると年老いている? ように見えなくもない。

 モグラの顔だけで年齢は判断できないんだけど、ちょっと目つきに好戦的な感じがない、とでもいうのだろうか。


「ひょっとして、お前らって長老的なポジションだったりする?」

「モグ……」


 肯定か否定かもわからねぇよ。


 モヤモヤしつつも彼らの後をついていく。案内されたのは、封土神殿の最奥にある祭壇の部屋だ。

 地面には魔法陣のような模様が刻まれていて、壁には立派な壁画が描かれている。奥の祭壇にはこれまた立派で大きな宝石が置かれている。

 祭壇は、その宝石に触れることで地上へとテレポートができる不思議な装置だ。何度か宝石樹の採掘のために封土神殿を訪れた際も、この祭壇を使って地上に戻っている。

 モグラたちは俺をこの祭壇の前まで連れてくると、何やら祈りを捧げるかのように唸り始めた。


「モグ……モグモグ……!」


 モグラたちの祈祷を受けて、祭壇が光って動き出す。ざりざりと岩が擦れるような音がして、台座が回転する。祭壇に宝石を飾っている台座が動き、地面の中からもう一つの台座がせりあがってきた。

 こっちの台座には宝石をはめ込む支えがあるものの、まだ宝石が置かれていない。つまりはこういうことだな?

 俺は二つの『割れた宝玉』をくっつけながらその台座にはめ込む。台座の支えによって離れることなく、見た目だけはくっついた宝玉は、俺の想像通りに機能を発揮して光を取り戻した。

 次の瞬間、俺の視界に真っ赤なノイズが走る。いくつかの演出的なエラーメッセージが流れたあと、システムウインドウが浮き上がった。


 ――クエストが変質しました。

 ――『ユニーククエスト:封土決壊』が発生しました。


「モーリーが教えてくれたとおりだな」


 キーアイテムを手に入れたことによる、ユニーククエストの変化。

 変化したクエストの達成条件は『決壊に謁見する』とだけ書かれている。うーん、ボス戦の匂い。


「あとは、この宝玉を起動すればきっとボス戦だろうな」


 ついにここまで来た。あとは準備を整えて挑むだけだ。


「まずはモーリーに連絡して、あとはナギと……」


 頭のなかで、一緒に戦ってほしい人の候補を思い浮かべる。これから共闘の申し込みになるから、ひょっとすると断られてしまうかもしれないけれど、もし断られたらその時だ。

 その場でDMを書いて送る。あとは相手の反応を待とう。


「んじゃ、流石に何の準備もなしにいきなり挑むわけにはいかないから、今日のところは一回帰るわ」


 言葉が通じているのか分からない老モグラたちに一声かけてから、俺は元から台座にあった方の宝石に触れて、地上へと帰還した。






 地上に戻った俺は、一度近くのカラム村まで戻ってきた。


「さて、忘れちゃいけない戦利品確認その2だな」


 今回のキングモグラとの戦闘で手に入れたのは、ユニーククエストを進めるためのキーアイテムだけではない。大量の経験値と、それに伴うレベルアップによるステータスポイント。

 さらに新たなスキルの習得だ。

 一番の目玉は、クエストクリア報酬で手に入れたEXスキル〈土竜撃〉だろう。

 以前の報酬で手に入れた〈土竜突〉は移動系の効果ながら、頼れる相棒スキルになっている。

 きっと今回も、それに勝るとも劣らないスキルに違いない。


「種類は攻撃系。効果説明は――前方へ回転しながら斬撃を放つ。地面に接触時、半径1mのエネミーに対して1秒のスタン効果」


 俺の想像通り、あのキングモグラが使ってきた大技を再現するようなスキルだ。

 威力はキングモグラ戦で体感した通りの高火力。さらにスタン効果は短いものの、うまく使えば相手のモーションを阻害することができそうだ。

 しかも面白いのが、この攻撃スキルはEXスキルであり、スキルツリーに依存しない。つまりどんな武器でも使えるスキルということだ。

 基本的に攻撃系スキルは『居合刀系統』や『短剣系統』といった、武器のスキルツリーに依存して習得するもので、他の武器では発動することができない。

 例えば居合刀系統のスキル〈抜刀〉を、短剣で発動することはできない。

 ところがこの〈土竜突〉は居合刀でも短剣でも、どちらでも発動可能な攻撃スキルなのだ。


「まぁ、クエストをクリアした人がどんな剣を持っているかによっては死にスキルになる、なんても

のだと報酬として渋いしな」


 さらに『歩行系統』から、戦闘中にも使用可能なAGI上昇のバフスキル〈韋駄天〉。『跳躍系統』から、壁に足をかけて発動することでより高い距離を跳べる〈三角跳び〉。

 『短剣系統』も連続攻撃系の基本スキルである〈二連撃〉やクリティカル発生率が高まる〈致命の一撃〉などを習得した。


「短剣を正統に活かしていくなら『隠密系統』とかも鍛えた方がいいんだろうけど、もう割とプレイスタイルは確立してきているからなぁ……」


 これまでの戦闘も、大抵は正面切ってのタイマンばかりだし、せっかくならこのままスピードを活かせるスキルツリーを育てた方が良いだろう。


「スキルの確認も終えたし、今日はもうログアウトしようかな」


 流石に疲れた。


前回の振り返りメインでした

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