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剣しか勝たんVRMMO  作者: 雉里ほろろ
第三章:海に轟く勇名 地に眠る神名

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第五十五話: 波打ち際のBBQ


 さく、さく、さく。

 素足で砂浜を踏みしめるたび、柔らかい音がなる。時折、波が浜辺に寄せ、足首まで濡らしては引いていく。

 仮想空間ながら、その水の心地よい冷たさやくすぐったさが真に迫っていて、俺は驚いた。

 どういう原理でこんなにリアルなゲームが作られているんだろうか。フルダイブ型VRに使われている技術は脳科学や電子工学を組み合わせた難しいもので、俺はあまり原理を理解できていない。


「えへへ、冷たいですね!」


 アーちゃんはテンション高く、爪先で波をぱしゃぱしゃと蹴ってはしゃいでいる。


「もう、アサガオさんは子供っぽいなぁ」


 アーちゃんよりよっぽど子供みたいな見た目のナギは、そんな様子を呆れたように見ている。ただ、ときおり波を爪先で蹴っているのは彼女も同じだった。何だかんだいって、ナギも浮かれているようだ。

 海岸線に沿って進んでいくと、プレイヤーが集まっている区画にたどり着く。

 砂浜に等間隔に並んだ海の家近辺がプレイヤーたちの集まりやすいエリアになっていて、おおまかなレベル帯ごとに分かれているようだ。

 その中でもやや街から離れた場所までやってくると、海辺に似つかない目立つ兜姿の一団を発見する。


「ナギ、あれじゃないか?」

「ああ、間違いないね。おーい、ノブシゲさん!」


 三人で手を振りながら近づくと、向こうも俺たちの存在に気が付いたようで、手を振り返してくれる。


「おお、ナギ殿にリョーダン殿。お元気そうで何より」

「お久しぶりです、ノブシゲさん」

「誘ってくれてありがとう、ノブシゲさん。僕たちも混ぜて貰って良いのかい?」

「勿論でござる。お二人がいれば心強い。ところで、そちらのお嬢さんは?」

「アーちゃんです!」

「ふむ、よろしくアーちゃん殿」


 ノブシゲさん率いるギルド、『戦国同盟』の皆さんとも挨拶を交わした。

 彼らはノブシゲさんと同じく、普段は戦国甲冑のような揃いの防具を着ているらしいのだが、今回は夏イベント配布の水着姿だ。ただし、兜だけはみんな装備したままなので、凄まじい違和感。

 また、戦国同盟のプレイヤーだけでなく、他にも何人ものプレイヤーが集まっていた。ノブシゲさんが主体で声をかけていったらしく、皆が腕利きの実力者とのことだ。


「俺みたいな初心者が混ざっていいんですかね? 皆さんレベルが高そうですけど。俺、まだレベル25ですよ?」

「私もまだレベルが22です!」

「別に問題ないでござるよ。今回の集まりの趣旨は、拙者が知り合いを集めてワイワイと遊びたいだけである故にな。それにレベルが20もあれば、初心者の領域は既に脱しているでござろう」

「リョーダンの強さは、僕が保証するよ。そんじょそこらのプレイヤーには負けないさ」

「ナギ殿のお墨付きもあれば、何の心配もござらんよ」


 そういうことなら、ありがたく甘えさせてもらおう。


 俺たちは砂浜でさっそく武器を構え始める。


「他にも人を誘ったので、夕方から合流の人が何人かいるでござるな。ケン殿は仕事終わりに来るそうでござるよ」

「ケンさんも呼んだんですね」

「リョーダン殿はケン殿をご存じでござるか?」

「あぁ、以前に一度お会いしたことがあります」

「なら話は早いでござるな」


 どうやら、星剣使いさんも後から来るそうだ。あの人もスタブレにどっぷり浸かっている人だろうから、喜んでくるだろう。

 そのとき、「来ますよ!」と戦国同盟のギルドメンバーの一人が声をあげた。

 ザブン、と飛沫をあげ、海面からモンスターが飛び出てくる。


「ガッガッガッ!」


 現れたのは、大きな二枚貝――ホタテの怪物だ。まるで威嚇するように上下の貝を打ち鳴らし、噛みつくように飛び掛かってくる。


「さぁ、戦でござる!」


 法螺貝が吹き鳴らされ、メンバーに攻撃力強化のバフがかかる。

 ノブシゲさんがすかさず日本刀(ブシドーブレード)を抜き天に掲げて叫ぶと、飛び掛かってきたホタテ弾丸を力強く弾き返した。

 ナイスホームラン。打ち返されたホタテは海に還っていった。

 浜辺に現れたのは二十を超えるホタテの群れ。それだけではなく、鉄砲魚のように口から水を吐く巨大魚、刃物のように鋭利な触手を持つイカなど、多種多様な海洋モンスターが浜辺に上陸してくる。

 その数に俺は圧倒されそうになるが。


「ヒャッハー、食材だぁ!」

「狩りつくせぇ!」


 そんなモンスターの群れに物怖じすることなく、むしろ蛮族のような雄叫びをあげて剣を抜くプレイヤー一同。

 彼らは我先にと波打ち際に走り、襲い来るモンスターをバッタバッタと切り倒していく。


「あぁ、そういう感じ?」


 みんな随分と陽気でテンションが高い。

 ナギも、早速相棒の二刀を抜いてホタテの弾丸を華麗に撃ち返している。キラキラと目が輝いていて、とっても楽しそうだ。やはりスタブレを遊んでいる人たちは多くが戦闘狂なのだろう。

 最近、俺も人のことを言えなくなってきている気がするが。

 ここは彼らを見習い、俺もテンションあげていかねばなるまい。


「オラァ!」


 愛刀を抜き放ち、前進。近くにいたイカの怪物の触腕を切り落とす。悲鳴をあげて怯んだところを、ノブシゲさんが追撃に入ってくれた。


「やりますな、リョーダン殿!」

「ノブシゲさんには負けますよ!」


 居合刀(ヤマトブレード)と日本刀(ブシドーブレード)、俺とノブシゲさんは並び立って刀を振るい、モンスターを次々と撃退していく。

 ノブシゲさんが振るう日本刀(ブシドーブレード)は力強い。高いSTRから繰り出される一撃はまさに剛剣だ。


「チェェェェェスト!」


 スキルエフェクトを纏った縦振り。気合の籠った一撃は、衝撃波で砂浜の砂を巻き上げ、周囲のモンスターをまとめて吹き飛ばした。

 舞い上がった砂の幕を突き抜け、俺が追撃に飛び出す。

 〈抜刀〉から〈連閃〉に繋げ、素早い二連撃。一撃目でイカの触手を切り飛ばし、返す刃で胴を真っ二つにしてやった。一体撃破だ。

 チャージを溜めるため、納刀しながら後ろに下がる。


「えいっ! やぁっ!」


 代わりにアーちゃんが前に出て、包丁のような短剣(ダガーブレード)を振るって連続攻撃を放つ。鉄砲魚が三枚に下ろされ、光の粒子になって散る。


「み、見事な腕前にござる……!」

「ワザマエ!」

「やるな、お嬢さん!」

「えへへ、頑張りました!」


 にこやかな笑みに見合わぬ、巧みな短剣捌きだ。随分と戦い慣れしている。

 そうして参加者全員の奮戦もあり、襲い掛かってきたモンスターの群れを見事全滅させた。



・弾丸ホタテの身

 プリプリと弾力のある身には旨味が詰まっている。


・鉄砲アジの身

 三枚に下ろされた鉄砲アジの切り身。淡泊だが、料理の幅は広い。


・アイアンスクイッドの触手

 鋭く尖った触手はアイアンスクイッドの武器だが、熱を通すと柔らかくなる性質があり、食材としても重宝されている。



 イベントだからか、倒したモンスターたちの食材が沢山ドロップした。

 あと、地味に経験値が美味しい。レベル上げの効率もよさそうだ。

 見事勝利し、戦国同盟の皆さんはそろって勝ち鬨をあげる。俺もノリにまかせて声をはりあげる。


「うおおぉぉぉぉぉ!」

「この食材で早速バーベキューでござるな!」

「やりましょう、バーベキュー!」


 ノブシゲさんたちと男同士で肩を組み、テンション高く盛り上がる。


「それなら私、料理スキルを持ってますよ!」

「お、女子(おなご)の手料理!?」

「何と言うご褒美!?」

「いえ、ただ焼くだけですけど……」


 異様に盛り上がる男性陣に、ナギとアーちゃんはやや冷めた目線。

 このままアーちゃんが調理のメイン担当となり、みんなでドロップアイテムを使ったバーべキューと相成った。

 食事をとれば、イベントボーナスによって攻撃力や防御力にバフがかかる。魔物を狩り、手に入れた食材を食べ、また魔物を狩る。

 その後、ノブシゲさんの声掛けによって集まったプレイヤーも続々と合流し、俺たちは夕方過ぎまで海で狩りとバーベキューにあけくれたのだった。


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