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剣しか勝たんVRMMO  作者: 雉里ほろろ
第二章:土竜と竜と遺跡と宝石、世界は星のみに非ず

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第三十三話:アップデート前情報と修羅場の気配


 ナギとミーニャと俺の三人は、商談後、雑談に興じていた。

 内容はスタブレの話題。特に夏休みに控えるイベントと、それに関連したアップデートの話題についてだ。


「そういえばリョーダンくんは次のイベント内容は確認した?」

「いや、言われてみればまだちゃんと確認していなかったな」


 ナギに教えられたときに、事前告知だけは見た。

 イベント名は確か、『サマーバケーション! 修羅海BBQ』だったか?

 随分と陽気なイベント名だったと記憶している。

 メニュー画面から運営アナウンスを開いてホームページを確認すれば、イベントの詳細が追記されていた。

 俺が未だ訪れていない、南の港街ニール港周辺で行われるこのイベントのメインコンテンツは、水生モンスターのレイドバトルだ。


 水生モンスターの異常発生が確認され、多数のモンスターがニール港周辺の砂浜に上陸している。この危機に多くの冒険者が招集された。仲間と協力し、モンスターの群れを打ち倒そう!

 

 という煽り文がついている。

 さらにイベント中の特殊効果として、水生モンスターからドロップする食材を砂浜に設置された専用調理器、バーベキューグリルで調理して獲得できる料理を食べれば、レイドボスに対して効果的なバフが得られる、とのこと。

 これが予告であった「料理系統スキルが役立つかも」というやつか。


 水生モンスターを倒してBBQをして、料理バフを受けたらレイドボスとバトル。撃破スコアに応じて冒険者組合から報酬がもらえるイベントだ。


「レイドバトルか、俺でも戦えるかな?」

「大勢のプレイヤーで挑むボスだからね。きっと強いんだろうなぁ、今から楽しみだなぁ」

「出た、バトルジャンキー」

「私はバトル系のイベントは乗り気じゃないのよねぇ。珍しいアイテムが出るなら意欲も湧くのだけど」


 ナギは目を輝かせて、次のイベントを心待ちにしている様子。俺は自分のレベルでついていけるかがちょっと心配なくらいだ。

 ……イベント前に、少しでもレベルを上げておこう。


「次のアップデートはイベント前日だよね?」

「うん、イベント以外にも新しい要素が追加されるらしいね」


 ナギ曰く、次のアップデートではイベント開催だけではなく、新要素も含めたアップデートになるらしい。


「新しい要素ってどんなのなんだ?」

「噂によると、乗り物機能が追加されるんじゃないかって」


 へぇ、乗り物か。

 このスターブレード・ファンタジーのフィールドは広大だ。

 各都市にある雑貨屋では、その街まで転移するための使い捨てアイテムが販売されている。例えばカッペルの街の雑貨屋では、カッペルの街まで転移できる転移石というアイテムが売られているのだ。

 しかし転移石はそれなりの値段がするし、ダンジョンなど都市以外の場所は自分の足で探索しなくてはならない。

 自分の足で広大なフィールドを探索するのはスターブレード・ファンタジーの魅力の一つである反面、貴重なゲームの時間の多くを移動にばかり割きたい人はいないだろう。

 乗り物機能が実装されれば、フィールドの移動が快適になって、より冒険が楽しめるようになる。


「王道で行けば馬とかか? 乗馬スキルみたいなのが追加されるのかもな?」

「いや、もしかしたらバイクみたいなのが実装されるのかも」

「モンスターテイムとか追加されないかな。ほら、ペットの背中に乗って冒険って素敵だよね」


 俺たちはアップデートで実装される要素をそれぞれ予想しながら、雑談に花を咲かせる。


 するとそんな俺たちの元へ、足音が近づいてきた。

 まさかまたしてもナンパか? 男の俺がいるのに?

 そう思いながら俺たちが振り返ると、そこにいたのは。


「お久しぶりです、リョーダンさん! 隣のお二人はお友達ですか?」

「あれ、アーちゃん?」


 ニコニコと手を振りながらやってきたのはアーちゃんだった。直接に顔を合わせるのはこれが二度目、パーティーを組んでゴブリンを討伐したとき以来である。


「……アーちゃん?」

「おや、これはひょっとして修羅場の予感?」


 ナギとミーニャが小さな声で何か言った気がするが、聞き取れなかった。

 俺はアーちゃんに向き直る。


「久しぶり。どうしてここに?」

「今日は冒険をお休みして、街をお散歩してたんです。そうしたら、テラス席にリョーダンさんの姿が見えたので!」


 それでわざわざ挨拶に、ということか。

 するとナギが俺の脇腹を肘でドスドスと突いてきた。痛くはないけど、何なんだいきなり。


「……誰かな? 紹介してもらってもいいかい?」


 ナギとアーちゃんが会うのは初めてだ。確かに紹介する必要があるな。


「ああ、彼女はアサガオ三号さんだ。俺と同じ初心者で、前に俺がメインクエストを進めるときに一緒にパーティを組んで知り合ったんだよ」

「初めまして、私のことはアーちゃんと呼んでください!」


 ニコニコと邪気を抜かれる笑顔のアーちゃん。それとは対照的に、何やら気難しそうな顔をしているナギ。そしてその両者の間でニヤニヤしているミーニャ。


 ……何この雰囲気。


「初めましてアサガオさん、僕はナギ。リョーダンの友達だ」

「あ、私はミーニャね。私もナギちゃんとリョーダンくんのお友達だよ」

「よろしくおねがいしますね!」


 軽く挨拶を交わしたあと、アーちゃんは「用事があるので、今日はこれで!」とこの場を離れようとする。だがその前に、俺の方を振り返った。


「そうだ、リョーダンさん。予定が空いている日はありませんか? また一緒にダンジョンの攻略をしましょう! 素材集めとか、あんまり一人でやっても楽しくないんですよ」

「ん? あぁそうだなぁ、予定か……。もう少ししたら夏休みで、俺は纏まった時間が取れるんだが」

「そうですか、それじゃあまた連絡します!」


 シュタ! と手をあげて、アーちゃんは駆け出した。

 相変わらず元気で、ちょっと慌ただしい人だ。


「……ちょっとリョーダン。夏休みは僕と一緒にイベント攻略するんじゃなかったのかい?」

「いや、イベント以外の時間もあるだろ。俺だってメインクエストも少しずつは進めたいし、他のフィールド探索もしたいし」


 前にメールを貰った時は、アーちゃんはカッペルの北にある湿地を探索していると言っていた。そっち側は俺もまだ探索していない。


「…………ふん、じゃあ攻略頑張ってね」


 ナギは口では応援の言葉を言っているが、何だか不服そうに鼻を鳴らした。目線を横に向け、唇をつんと尖らせたその横顔を見て、俺は思った。


「何か、お前急にマンガのツンデレキャラみたいなこと言ったな」

「馬鹿にしてる?」

「ちょっとだけ」


 このあと滅茶苦茶殴られた。あとミーニャ、今スクショ取ったでしょ、消しなさい。



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