第三十話:改めて森の神殿へ
今日もスタブレにログイン。
ここ二日は森の神殿で起こした交通事故の反省を活かして、新スキル〈土竜突〉のスピードに慣れる練習をしていたのだが、正直まだ十全に使いこなせるとは言い切れない。
これからも要練習だ。
ただ、今日は一旦練習をお預けにしておいて、森の神殿にリベンジに向かうことにした。
今日もスキル練習の続きをしようと思ってはいたのだが、ログインと同時にメッセージが届いていたのが原因だ。
送り主は以前に一緒にゴブリン退治に行った、アサガオ三号さん。通称アーちゃん。
彼女からメッセージが届いたのだ。
メッセージの内容はこうだ。
『リョーダンさん、お久しぶりです! アーちゃんです!
私は最近では、北の湿地によく行っています! 可愛いカエルのモンスターがいました! リョーダンさんは森の神殿の攻略は順調そうですか? また都合がつけば、一緒に遊びましょうね!』
アーちゃんは一緒にゴブリン退治をして以来、時々こうして近況報告のようなメッセージを送ってくる。
そんなアーちゃんは現在、カッペルの北に広がっている湿地帯フィールドを探索しているらしい。メインクエストはどうしているのだろうか。
俺の方も適度に返信して、近況報告をしている。現在は森の神殿の攻略に取り掛かっていることを伝えると、応援のメッセージが届いていた。今回もその類いだ。
アーちゃんが冒険をしているというメッセージを見て、何となく俺も負けていられないという気分になったので、今日は予定を変更して森の神殿の攻略を急ぐことにした。
まぁ、〈土竜突〉の成功率もかなり上がってきているし、大丈夫だろう。
ということで早速森の神殿へ向かい、躊躇うことなく中へ踏み込む。
「さて、今日は交通事故に気を付けないとな」
初日はいきなり交通事故を起こしてリスポーンしたので、ほとんど中は探索できていない。
でも事故にさえ気を付ければ、今のレベルならサクサクと攻略できると思うんだよな。
迷路のような遺跡の中をずんずん進んでいく。
すると、昨日俺と交通事故を起こした警備ロボが現れた。
「ギギ……」
「来やがったな!」
腰の居合刀に手を添えて身構える。ロボは両腕の剣をブンブンと振り回しながら、俺にめがけて爆走してくる。
「よっしゃ、かかってこい!」
事故が怖いので加速スキルは使わず、自分の足で走り出す。
相手も突進してくるが、よく見ていれば雑な剣筋を避けることは容易い。ぶつかる直前でステップを踏んで剣を回避し、すれ違いざまに〈抜刀〉で首を刎ねる。クリティカルヒット。
ズバッと一太刀で首を切り落としてやれば、制御を失ったロボはそのまま遺跡の壁に激突して消滅した。
・ウッディガーディアンのコアの破片
遺跡を守護していた装置の核だった宝石の欠片。すでに力は失われている。
ドロップ品は緑色の石ころみたいな欠片だった。うーん、これは使い道が分からない。
説明文には宝石の欠片とか書いてあるし、これを宝飾屋とかに持っていけば何か使い道があるかな。
いや、というより。
「宝飾屋で思い出した。あの『地脈樹片』も使い道を考えないといけないんだった」
封土神殿で手に入れた『翡翠の地脈樹片』と『深紅の地脈樹片』。どちらも最初の愛刀を何度もへし折ることで手に入れた貴重な宝石だ。
あれを宝飾屋に持っていけば、強力な効果を持ったアクセサリになるかもしれない。アクセサリの装備枠はまだ空だから、楽しみだ。
今日はログアウトする前に一度宝飾屋に立ち寄ろう。
さて、肝心の爆走ロボの話だが。
「突進してくると圧はあるけど強くはないな」
多分、レベルがもっと低いうちに相手するような敵なんだろうな。フルチャージ居合刀が高火力とはいえ、一撃で倒せるくらいに歯ごたえがない。
刃物を振り回しながら突進してくるのはビジュアル的に怖いが、実際の脅威度はそこまで高くなさそうだ。
「サクサク進める分には楽でいいか」
ということで、刃物ブンブン爆走警備ロボを倒しながらダンジョンを進んでいく。
ときどき通路に面した部屋があるが、基本的には通路ばかりで何もない遺跡だ。
出てくるモンスターはコーナーを爆走してくる警備ロボだけで、ダンジョン攻略の代り映えがしない。
そうして何度も角を曲がり、空っぽの部屋をいくつも覗いていると、そのうちの一つの部屋でとあるものを発見した。
「お、あれは……宝箱だ!?」
木製の厳重そうな箱。Oh、トレジャーボックス!
急上昇したテンションのまま急いで駆け寄り、蓋に手をかけ、ぐっと力を入れて持ち上げる。ギギっという錆びた金属がこすれる音と共に中を覗くと。
「どれどれ、お宝は……回復ポーションか」
しょっぱい。いやでも、この宝箱を自分の手で開ける感動、プライスレス。
何というか、こういうの良いなぁ。自分の手で攻略をしている楽しさがある。
戦闘のワクワクとはまた少し違った良さだ。
暗い部屋の中から宝箱を見つけたり、迷路のようなダンジョンの中から先に進むための上り階段を見つけたり。地味な作業だけど、楽しさがある。
このダンジョンは階段を上って上のフロアにあがることで進む。トレットが解読した石板での最奥は、最上階のことかな?
そんなこんなで順調にダンジョンを攻略していると、
「お? ここは……」
のぞき込んだ部屋の中。そこは何と、宝物庫だった。これまでもいくつか見つけてきた宝箱が五つ以上並んでいる。
「おお、スゲェ!」
俺はテンションが上がり、意気揚々と部屋の中へ。そしてまずは一番近い宝箱に手をかける。
「さぁ、コイツは何が入っているのかなー?」
そうして力を籠め、蓋をあけた瞬間。
ビー! という警告音。宝箱の中身は空。
同時に、部屋の入口に殺到してくる警備ロボたち。
「…………あれ?」
これって、ようするに。
「モンスターハウス……!?」
ゲームでは王道ともいえるトラップだ。宝箱などでプレイヤーを釣り、迂闊に入れば多数のモンスターが襲い掛かる部屋。
いや、確かに油断はしていたけれどさ。
「まさかマジで自分がこの手のトラップに引っかかるとは……」
ゲームならではのトラップ、ある意味で貴重な経験かもしれない。
部屋の入口に押し寄せてきたのは五体もの警備ロボ。部屋の入口は狭いのでつっかえている。
入り口でお互いにぶつかりあっている警備ロボたちは馬鹿っぽいのだが、しかし逃げ道を塞がれた。
幸いにも宝物庫の中は広い。複数のモンスターを相手にする練習は、つい最近に強敵と組手をしたばかりだ。
「全部ぶった切ってやるぜ!」
威勢良く啖呵を切り、俺は居合刀を構える。
全員が部屋の中になだれ込んでくると対処の難易度があがってしまう。減らせる隙があるうちに、数を減らしておくべき。
居合刀に手を添え、俺から先に距離を詰める。
「ギギギ……!」
接近に反応して腕を振り回し、俺を攻撃してくるロボ。頭の上をかすめる剣筋をスライディングで回避し、懐に一気に潜り込んで〈抜刀〉。車輪の付け根を斬ってやれば、ロボはバランスを崩して転倒した。そのまま隣のロボを巻き込んで大クラッシュ。この隙に〈納刀〉して再チャージ開始。
三体目が事故を恐れず爆走してくる。だけど、
「モグラのほうが速かった!」
横方向に〈瞬歩〉でステップ移動。突進を回避しつつ大きく距離を取る。
ロボは車輪で突進してくるので微妙にホーミングが効いているみたいだが、ギリギリまで引き付けて大きく横に動けば避けられる。
避けた先に待ち構えていたロボの胴を蹴って反転。チャージは――まだ三割か。
「このチャージ速度、どうにか改善できねぇかなッ!」
部屋の隅まで移動。引き付けてから突進を回避してやれば、警備ロボは勢いそのままに遺跡の壁に激突して転倒した。ダメージはないが、ジタバタともがいていて、起き上がるまで時間がかかりそうだ。
あんまり頭良くないな、このロボ。
転んだロボは無視して、無事なロボに一気に詰め寄る。チャージはまだ五割強だが、十分だろう。
「〈抜刀〉、〈連閃〉!」
素早い二連撃で胴体部分を攻撃して撃破。
うん、やっぱり強くない。五割チャージでも二発当てれば倒せるようだ。
その後も軽くいなしてやり、無事にモンスターハウスを突破した。
・ウッディガーディアンのコア
遺跡を守護していた装置の核だった宝石。淡く緑色に光っている。
・ウッディガーディアンの部品
遺跡を守護していた装置に使われていた木製の部品。どの部分に使われていたのかは不明。
ドロップアイテムがいくつか手に入った。欠けていないコアもドロップするんだな。
「別の宝石系アイテムも手に入ったし、一回帰るか」
大体、半分くらいは攻略できただろうか?
今日はまだもう少し遊べるのだが、街に戻って宝飾屋に立ち寄ったりしていれば遅い時間になるかもしれない。
今日の攻略は一度ここで切り上げておこうかな。




