第十四話:VSゴブリンエリート
いざ、二度目のボス戦
「ここが洞窟の奥ですね」
「何かボスっぽいのもいるな」
洞窟の奥は広間のようになっていた。商隊から奪い取ってきたのであろう食料品や雑貨が無残に転がっている。
中には通常のゴブリンが三体、そして通常個体よりも背丈が高く、革鎧を着たボスらしきゴブリンがいた。
「私たちには気が付いていないみたいですけれど……」
ゴブリンたちは食料を食い散らかすのに夢中になっていて、俺たちには背を向けている。
「これ、明かりを消せば不意打ちできないか?」
松明を消して近づけば、不意打ちでこちらの有利に戦闘を進められるはずだ。
「でも明かりを消してしまうと、その後が戦いづらいかもです……」
アーちゃんが不安点を挙げてくれる。
確かに、暗いなかで複数のモンスターを相手にするのも嫌だな。
何かいい案はないかと考えを巡らせながらゴブリンたちを観察していると、視界の片隅に無残にも壊された木箱の残骸が映る。
あれ、使えないか?
「一つ作戦があるんだが、良いか?」
「何ですか?」
「片方が明かりを持ったままここで待機。もう一人が明かりを消して、不意打ちをする。手下のゴブリンを一匹倒しきるのが理想だな。そうすれば戦闘になるから、そのタイミングで待機していたもう一人があの隅の木箱に火をつける。そうすればしばらくは明かりが確保できると思うんだ」
そうすれば俺も、両手を空けてボスと戦うことができる。
「不意打ちと、そのままボスは俺が受け持つよ。アーちゃんは取り巻きのゴブリンの相手をしてもらえないか」
「分かりました、任せてください!」
よし、作戦が決まった。
松明の火を消す。上がったレベルポイントをDEXに振ったら初期スキルが習得できた隠密系統のスキル、〈消音〉を発動。これでしばらくの間、足音が小さくなる。
スキルの熟練度が全然足りないから完全なステルスはできないが、ないよりマシだろう。
こちらに背を向けて食料を貪っているゴブリンたち。狙うは一番近い奴。
日本刀を静かに構える。足音を殺し、ゆっくりと忍び寄る。
まだ、まだ気が付かれていない。食事に夢中になっていて助かる。
あと一歩……よし、踏み込みの射程に捉えた!
鍛えたAGIを活かして一気に踏み込む。流石にゴブリンたちが俺の存在に気が付いたが、もう遅い。
振り返るより先に〈横薙ぎ〉を発動。ゴブリンの首を断ち切る。不意打ちと急所攻撃によるクリティカルヒットの手ごたえ。
一撃で絶命した手下のゴブリンがポリゴンとなって砕け散った。
他のゴブリンが大慌てで武器を手に取る。
その隙に別の手下ゴブリンに一撃当てて怯ませ道を作り、俺はボスのゴブリンを相手取る。
不意打ちは成功、ボスが俺たちに気が付いたと同時に目の前に戦闘アイコンが浮かび上がった。
『BOSS ENEMY ENCOUNT!』
『VS ゴブリンエリート』
「アーちゃん!」
「任せてください!」
俺の声に合わせて松明の火をつけたまま待機していたアーちゃんが広間に駆け込み、木箱に火をつける。途端に広間が明るくなり、視界が僅かながら確保される。
「グギャギャ!」
ボスゴブリンが刃こぼれした剣を振りかぶり切りかかってくる。
牙を剥き出し、凶悪な表情で襲い掛かってくるゴブリンは恐ろしいが、
「そんな大振り当たらねぇよ!」
細かくステップを刻んで剣を避ける。振り下ろしを半身で避け、続く薙ぎ払いは後ろに下がって距離を取る。
後ろから手下も切りかかってくるが、当たらねぇ当たらねぇ!
手下の攻撃を避け、ボスの切りかかりを受け流す。攻撃を当てられないように気を付けて、回避を重視しながら数度切り結んでいれば――。
「お待たせしましたリョーダンさん!」
「助かる、取り巻き任せた!」
火付け役のアーちゃんも戦闘に参加。俺が相手していた手下二体に切りかかり、相手を変わってくれる。
よし、これで俺はボスに専念できる!
今度は俺から攻勢に出る。前に踏み込み、
「〈十文字切り〉!」
縦横二連撃を当てる。斬撃はうまく剣に防がれたが、ボスゴブリンは大きくバランスを崩した。好機!
「シッ!」
がら空きの胴に横振り一撃、浅いか!
流石にボスともなればゴブリンの動きも戦闘に慣れているな。冷静に距離を取られる。
踏み込んで追撃。右から斜めに振り下ろし――。
「グギャギャ!」
「――パリィ!?」
やべぇコイツ、パリィしやがった!?
甘く入った追撃の刀に合わせた強打で剣を弾かれ、今度は俺が体勢を崩してしまう。
踏み込み、来る!
崩れた体勢に逆らわず、地面を転がるようにして回避。だが完全には避けきれずに腕を斬られた。
VITにほとんどステータスを振っていない分、この浅い一撃でもHPが大きく削られてしまった。
追撃の振り下ろし。日本刀を横にしてどうにか受け止める。
「ぐっ!」
重いな! STRが足りねぇ!
「大丈夫ですか、リョーダンさん!」
だがそこでアーちゃんが援護をしてくれた。ボスゴブリンの背中を切りつけ、一時的に注意を引いてくれる。おかげで力が弱まり、鍔迫り合いから抜け出せた。
「助かった!」
アーちゃんのおかげで危機を切り抜けた俺は立ち上がり、再度ボスゴブリンに切りかかって注意を引く。
横目で確認すると、手下のゴブリンの数が減っていた。アーちゃんが片方を倒していて残り一体のようだ。
俺も負けてられないな!
「〈横薙ぎ〉!」
スキルを絡めて一撃、しかし避けられる。想定内だ。
後ろに引いたゴブリンの動きに合わせて一歩踏み込み、攻撃を誘う。
懐に潜り込もうとする俺を嫌ってボスゴブリンが横振り。
――釣れた!
相手の剣撃に刀を添えるようにして受け流してステップ、背中側にくるりと回り込む。
「〈十文字切り〉!」
がら空きの背中にスキルの二連撃を叩きこめば大ダメージの手ごたえ。
「グギャァ!」
悲鳴交じりのゴブリンが大きくよろめいた。
追撃を嫌ったゴブリンが遮二無二剣を振るが、そんなものに当たってやる気はない。前に踏み込んで自分の優位な距離を保つ。
腕に一撃、引こうとするので踏み込んで距離を維持し、もう一撃。
相手の無理やりな太刀筋に合わせて、回避と斬撃を交互に織り交ぜていく。
「甘い甘い!」
大きく振りかぶれば気勢を挫くように先制で浅く一撃。小手先の牽制は受け流し、攻撃のリズムを崩さない。
引かば寄り、寄らば引く。
日本刀のリーチはゴブリンが持つ刃こぼれした剣より少し長い。この絶妙な間合いを維持して切り結ぶ。
ゴブリンが俺の体勢を崩そうと強打を放つ。ステップで回避、だが後ろには引かない。
体を逸らし、頬を掠るほどのギリギリで避ける。良い集中具合だ。ちゃんと太刀筋が見えている。
「リョーダンさん、こっちは倒しました!」
背中からアーちゃんの声がかかる。取り巻きは倒しきったようだ。
俺も決めに行く!
着実に重ねたダメージ、上段にフェイントを入れて防御を誘ってから足を斬れば、ボスゴブリンの足がふらついた。
「これで終わりだ!」
〈十文字切り〉発動。横薙ぎがふらついたボスゴブリンの体を斬り、とどめの振り下ろしが頭に突き刺さる。
頭からばっさりと斬られたボスゴブリンはHPを失い、砕け散る。
・刃こぼれした剣
モンスターが持っていた剣。刃こぼれが激しく、このままでは使えない。
・謎の石板
文字が書かれた謎の石板。書かれている文字は古く、読めそうにない。
「シャァ!」
俺は思わず雄叫びをあげてガッツポーズ。
「やりましたね、リョーダンさん!」
「アーちゃんもナイスだ!」
俺は思わずアーちゃんに駆け寄ってハイタッチ。勝利の喜びを分かち合う。
「いや、途中助かったよ。あの援護がなかったら負けていたかも」
「えへへ! リョーダンさんもボスと一対一でお疲れ様でした」
今の戦闘でさらにレベルがあがり、レベル11になった。
「これでクエストクリアなんですかね?」
アーちゃんが首を傾げる。
俺はメニューを開いて、クエストの進行状況を確認した。
するとクエスト目標が『謎の石板を冒険者協会に届ける』に更新されていた。
「アーちゃん、ボスドロップで石板がドロップしなかった?」
「あ、しました!」
なるほど、アーちゃんもドロップしたのか。ならこれはきっと確定ドロップだな。
この石板が、アリアちゃんに依頼された『取り返してほしい骨董品』だろう。これを持って帰れば無事にクエストクリアだな。
次話は2/10の夜に更新予定です。




