第三十二話 100連突き
あれから一ヶ月。時は平穏に過ぎていた。
「いいお湯でしたー」
今日は竜の王女、ソメノが泊まりに来ている。温泉が気に入ったようでここ数週間、毎週のように来ている。
「はっはっはーいいお湯だろう! 余も気に入っておる!」
シャールにアネスも泊まりに。
「では飲みに行こうか」
皆で飲みに出かける。
「ああ、ソメノ。来週はちょっと出かけるからお泊まりは無しな」
「ちらっと言ってましたね。遠征でしたっけ」
「一週間はくらいは帰ってこないね」
ウッドさんのお誘いに乗って遠征へ。アネスを一緒に連れて行くならOKと王様から了承を得ていた。
「そうですか、気をつけてくださいね」
「ああ」
それから2日後、出発の日。皆と共に待ち合わせ場所のギルドに来ていた。
「いやぁ、待たせてしまったかな」
「いえいえ、待ってませんよ」
相変わらず爽やかだ。
「じゃ行こうか」
馬車を4台ほど借り出発。
「久しぶりの長旅だ」
「と言っても2日で着くんだったな」
「うん」
途中要塞をのような関所をいくつか越え、2日後目的地に到着。そこは高く分厚い壁に囲まれた巨大な要塞であった。
皆で要塞壁の上部の歩廊に上り、そこから景色を眺めた。
「ここから北側は見渡す限り森。別名永遠の森と言ってね」
「たしかにずっと森ですね」
「この森から悪さをする魔獣がたまにあらわれてね、しかも強い。そこで国はここに最大の戦力を置いているんだ」
「ほほぉー」
「おう、ここにいたのかウッド」
ガタイのいい男がウッドに話しかけた。
「オダさん、会議は終わったんですか」
「ついさっきな。んー、そいつらか、冒険者の援軍というのは」
「はい、そうです」
「あ、挨拶は後でまとめてやろう。とりあえず昼飯食ってこい」
「ここは、ちょっとした街になってんだ。昼飯後は会議だからお酒はまだにしてくれよな」
「はい」
ガーハッハと笑いながら去っていくオダさん。
「豪快な人ですね」
「ここで一番偉くて一番強い人だよ」
オダ・ドン、バトルマトリックスにも出てくる。その強さはウッドさんと同じくらいだ。
「とりあえずご飯にしようか」
要塞の中へ。オダさんが言う通りそこはちょっとした街になっていた。
「ここは最前線でね、かなり過酷なんだ。そこで兵達をもてなすために様々な店が建てられたんだ」
皆で店に入り昼食。食べ終えて会議の場所へ。
「さーて、会議を始めようかな」
大人数でテーブルを囲む。20人くらい居るかな。中にはゲームに登場する人もいる。
「ワーッハッハッハ、いっぱいいるな。それじゃこっちから順に自己紹介をしていけ」
「サイモンです」
全員終わったところで、今回の魔獣討伐、作戦の説明。
「魔獣カランのデータだ。狼のような見た目で体長は10メートル。森の中だってのにとんでもなく素早い、もちろん攻撃力も高い、非常に厄介な相手だ。群れで生活しているからまずはコイツとその仲間を引き剥がす必要がある。そっちの作戦は他のチームな。そうだな、他チームの作戦も簡単に説明しておこう」
作戦は簡単に言うと他チーム(今ここに居ないチーム)が魔獣の仲間を倒すといったもの。
「んで同時に俺達でカランを叩くと言ったところだ」
「前衛は俺、ウッド、サイモン、シャール、アネス。他は中衛と後衛」
「カランは強い。とにかく基本防御に徹してジリジリと体力を奪ってからトドメといこう」
「決行日は明後日だ。各自体調を整えておいてくれ」
「はい」
決行日当日。100名近い兵士や冒険者が要塞の外に並んでいる。
「これより作戦を開始する。1班から4班、出発してくれ」
「おう!」
俺達は5班。カランが孤立するのを待つ。
「カランとその仲間たちを引き剥がしました」
「よし、いくぞ!」
オダさんの号令とともに皆森の中へ駆け込む。
「いた、ヤツだ」
少ししてカランを見つける。オダさんの指示通り前衛、中衛、後衛に別れたところで、予想外の出来事が起こる。
「オダさん! カランの手下たちがこちらに向かってきています!」
カランの仲間たちが俺達に向かって走ってきている。
「なんだ! おびき寄せに失敗か!?」
他チームで何が起きたかわからないがこのままでは取り囲まれてしまう。
「グッ! このままでは」
「俺がやりましょう」
「なんだって!?」
のんびりと説得する時間はなさそうだ。コイツラ一体一体でもシャールくらいの強さがある。となると頭をさっさと片付けてしまうのが一番効果的だ。
VRモード起動。久しぶりに本気でやるか。本気5の攻撃主体。
ゲームスタート、音楽もスタート。光る床の上を走り一気にカランの前へ。
『グラァァァー!?』
逃げようとするがもう遅い。カランの頭の上には100の数字が。
「ズシャシャシャ」
中段の構えからカランの頭に100連発の突きを食らわせた。
「ボンッ」
カランの頭は吹き飛んだ。
俺の上着も吹き飛んだ。




