第三十一話 魔女の悩み
3人で街を散歩。公園が何やら騒がしい。近づくと一人の女性が数十人の男に囲まれている現場に出くわした。
「普通じゃないな」
「あの人は傾国の魔女と呼ばれるクリス・ジャックさんね」
女性の周りを取り囲んでいる男達は熱病に冒されたようにボーッと彼女を見つめている。
「クリスさん、好きです」
「あちゃー、術にかかっちゃったか。ホウキで逃げようかなぁ」
「どうしました? どうもおかしな状況ですけど」
「わわわ、また一人増え、あれ? アナタ男性なのに大丈夫なのね」
「?」
「とにかく逃げるねー」
ホウキにまたがり空を飛んでこの場を離れた。
「結局なんだったんだろう」
俺は空を飛んでいく彼女を見ながら首を傾げた。
「あれ? 俺はなんでこんなところに」
徐々に意識を取り戻し始める男達。
「よくわからんが帰るか」
男達は皆公園から出ていった。
「ミュー、彼女のこと知ってる?」
「知っているけど、良い話ではないな」
「彼女は悪人かい?」
「ん~、どうなんだろう。二つ名の通りの話は聞いている」
「どんな話?」
「元々は王宮勤めの魔女。ある時貴族の不倫問題とか兵士の不倫問題が起きて彼女がその当事者だったんだ。結局彼女に非はなかったっという結論だったんだけどその後も同じようなことが起きてね、とうとう王宮を辞めてしまったようなんだ」
「で、今は冒険者になっている」
「二つ名はそこからだね」
「うーむ、ぱっと見、困っている風だったけど何とも言えないな」
とりあえず考えるのをやめギルドへ。
「はい、昨日受けた依頼」
「お疲れさまでした。お預かりします」
「確認させていただきました、依頼クリアです。それと、おめでとうございます。ポイントがたまって刻印が一つ増えました」
「おお」
俺とファムが4、ミューは5になった。
「結構頑張っているけどなかなか上がらないね」
「これでもかなり早いほうだけどね。今後はさらに上がりにくくなるよ」
依頼板を眺める。今日は良い依頼がなさそうだ。
ギルドのテーブルにつき、それぞれ椅子に座る。
「今日はどうしようかな」
3人でしばらく談笑していると先程の魔女が入ってきた。
「あ、いたいた。さっきはありがとね」
「いやいや」
歳は18くらいかな? 黒いローブに黒い帽子、魔女のイメージそのままだ。
「クリスって言うの、よろしくね」
こちらも名乗る。
「とりあえず座って」
「はーい」
クリスは空いている席に座った。
「さっきは何が起こっていたんだい?」
「魅了しちゃってね」
「魔法?」
「魔法と言えば魔法なんだけど、制御下にない魔法になるかな」
「ふむ?」
「生まれ持って魅了の力をもっててね、それが彼らに効果を及ぼしてしまったのよ」
クリスは胸元から大きな宝石を取り出す。
「この宝石を持っている間は抑えることができるんだけどさっきは割れちゃってね」
「なるほどね」
「一度にたくさん持っていても効果は変わらないし、同時に割れちゃうのよ。ハァ~ホント面倒な身体だわ」
「そいつは大変だな」
となるど不倫騒動は魅了能力のせいか。
「ところがよ! さっきアナタは魅了にかからなかった」
「そんなこと言ってたね」
「だからちょっと付き合って! 実験したいの!」
「いいとも」
「コホン、もちろん私もついていく」
「私もー」
街を出て近くの人気のない森へ。
「では早速。宝石を外すわね」
宝石を外し少し遠くへ置いてこちらへ。
大体30分くらいたったが何も起こらなかった。
「どうだ?」
「やっぱり魅了が効かないね。初めてよ、私の魅了が効かない人。何か特殊な力を持っているとか?」
「んー、どうだろうなぁ」
下手なことを言えないが困っている彼女を助けてあげたいのもある。問題のなさそうなところを伝えてみるか。
「そうだ、俺は魔力がないって言われたことがあったな。それかもしれない」
「うそー!」
彼女は額を俺の額に当ててきた。
「ンーこほんこほん!」
ミューが激しく咳払いをする。
「あー、魔力を見ているだけだから」
へー、そんな力を持っているのか。
「ホントだ! そうか、となると私の魔力が相手の魔力に干渉している可能性が。ってことは――」
ブツブツと独り言を言い出すクリス。
「あっりがとー! もしかしたらうまく制御できるかも!」
「早速研究しなくちゃ! じゃあね!」
ホウキに乗りクリスは飛び去った。
「まあ、お役に立てたようで良かったかな」
「なんだかアネスみたいだったね」
「ハッハッハ、そうだな」
「さて、街に帰りましょ」
「ああ」
三人は街へ帰った。




