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(4)苦労の種

これは実際の個人、団体、地名その他の固有名詞とは一切関係まりません。

つまるところフィクションです。




 「それじゃあ優紀乃、気を付けて帰るんだよ」 

 「はい、お兄様」

 「じゃあ行ってくる」

 「では後ほど」

 軽く挨拶を交わした後、それぞれ反対の方向に歩き出す。優紀乃は駅舎へ、連を伴った悠斗はスクールバスのバス停へ。

 「なんかお前。非常に憎たらしい」

 優紀乃に声が届かない距離まで離れると、連はいきなりそんな事をいった。まあ気持ちは分からないでも無いが。

 「そんな事言われても、俺にはどうする事もできないぞ?第一兄弟なんて選べるもんじゃないだろ」

 「気が付いたか、いまのでウザさレベルが格段にあがったんだぞ」

 おどけた口調だが、故意であることがバレバレな(おそらくわざとだろう)それを聴かなかったことにして、

 「そういえばお前は一人っ子か?」

 無理やり話題を変える。

 「ああ」

 「それならむしろお前がうらやましいよ。俺は誰かと比較されるのを好まないんでな」

 「別に兄弟がいようが、いまいがこの高校に通ってる奴らはみんなそうんじゃないか?親はみんな世間体気にする奴らばかりだし」

 「そういうことは大声で言わないほうがいいぞ」

 「別にかまわないさ。誰だって思ってることだしさ」

 あまりサラッと言われると、かえって自分が間違っているような気さえしてくる。

 「・・・・・・」

 「そのせいで、いらない荷物まで背負われてるんだ。跡継ぎがどうのって話だって、俺の話なのに俺にはまったく関係ないって感じで話が進んでるんだぜ?お前分かるか?」

 言葉自体は疑問系のイントネーションをとっていたが、思わず家庭の事情をさらけ出してしまった醜態を恥じているのか、悔いているのか、あるいは両方なのか、それ以上の会話を退けるように窓の外へ顔を向けてしまった。

 このところ連絡がないと思ったらそういう話が進んでいたのか、と納得しつつ。不可抗力とはいえ、まずい雰囲気を作る話題を選んでしまったことに多少なりとも責任を感じる。

 「すまない、余計なことを言わせてしまった。」

 「・・・・・・」

 それからしばらく、外を流れる景色に意識を向けていたようだが、一度大きなため息をついて、

 「一日中こんな態度を貫くのは、俺には無理だ。この話は終わりにしよう」

 言われなくとも、その気でいた悠斗はうなずいて、明るく言う。

 「もうすぐ学校に着く」

 この高校は、普通に子息、令嬢と呼ばれる人間がたくさん通ってきている。そういう生活をしていれば当然家庭内の事情だって生半可なものではない。

 お家事情についてはあえて触れ無いことが暗黙の了解となっている社会なのだ。

 悠斗だって、そういう生活には十分慣れているはずだ、だが春季休業中にいろいろと面倒ごとに巻き込まれたせいで、内側にも外側にも、ガードが甘くなっていたのだろう。

 それに気が付いて、改めてきを引き締める悠斗だった。



   ☆★☆★☆★☆



 進級する際にクラス替えを行う。というのは、この学校の場合ほとんど意味を成さない。中には成績に浮沈によって新たなクラスへ配属されたものもいるがそれは、少数派でもちろん、悠斗も連もそこに含まれてはいない。

 「いまいち進級したきがしない」

 始業式が終わり、クラス分け発表がメインエントランスで行われる。かなりの人だかりが出来ていたが、高い場所に張り出された横長の名簿を見るのに不都合は無かった。

 が、その内容には結構不満があったらしい、開口一番そんな愚痴をこぼす蓮だが、それには悠斗も共感をせざるを得なかった。

 「もう少し工夫の使用がないのかな」

 さらにこぼす蓮を、周囲からの迷惑そうな視線が射止める。

 「もうそのくらいにしておけ」

 「だけどよ」

 「いいから。もうここには用はないし新しい教室を見に行こう。特別教室の使用場所も変わってるはずだから、それの確認もかねてさ」

 これにはそれなりの共感を覚えてくれたようで、人影を縫うようにしてその輪の中から抜け出す。

 

 

 HRホーム・ルームの時間か近づいてきたので教室に戻ると黒板に座席表が張り出されていた。 そして、蓮の席が一番前であることが気に入らなかったらしい。

 座席は男女含めた出席番号順なのだから、連が一列目になることは理の当然なのだが、これまた両親のせいにしそうな雰囲気だったので、急いで軌道修正を試みる。

「三階だから去年より楽になったな」

 校舎のつくり上、一年が四階、二年が三階、三年が二階にHRをもつ。別にエレベーターが無いわけではないのだが、校舎の両端に一機ずつあるだけだから、教師も合わせて800名以上いる人間を移動させるにはさすがに回転が悪い。

 それもあって、HRが階の中よりにあれば、中央階段を利用したほうがよほど早い。当然、教室はAから順番に並んでいるのだから、Eはほぼ中央にあるのだ。

 クラスメイトだってほとんどが中央階段を利用している。

 「その点に関していえば、別に問題ないが、わざわざ特別教室を三つずつ作るか?」

  が、憤怒の原因の一つが、悠斗の席が窓際から二列目の一番後ろ。というなかなかのポジションだったこともあり、返ってきたのは機嫌の悪そうな声だった。不可抗力だ!と本気で叫びたいのを堪え、

 「まあ、常に同じ階にあれば移動が少なくなるんだ。愚痴るほどのことじゃないだろ」

 と言ってみるが、依然として機嫌を直してくれる気配は無い。

 その時、HRの開始を告げるチャイムが鳴り響き、悠斗は救われた。



すみません。なかなか回り道をしております。

次には真打登場でございますのでどうかごようしゃを;;

そして悠斗君がかわいそうなことになってますが、可愛過ぎる妹にお兄様なぞ呼ばれている悠斗に嫉妬した作者が仕組んだ罰です。ここにきて、悠斗君に若干へたれが混ざってるような・・・

 初期設定ではもう少し、違う性格をしていたはずですが;



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