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Dear Four Seasons 〜魔剣使いが往く異世界剣聞録〜  作者: 鹿島ジュン
1章︰Adventures of the Four Seasons

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12話 今を生きる/Seize the Day

生き死にを賭けた生存競争の後で。




 ──久しぶりに懐かしい夢を見た。


「ひっぐ⋯⋯えぅ」


 見慣れない男の子が、幼稚園の隅の金網に背にして蹲っていた。最近この辺りに引っ越してきた子だろうか。


「どうしたの? だいじょうぶ?」


 泣いている理由はよくわからないが、放っておけずに声をかけてみるも、こちらを一睨みするなり拒絶の意を示す。


「なんもない。あっちいけ」


「なにもないのにないてるの? どっかケガしてない? 先生よんでこよっか?」


「なんもないってゆってるやん! はよどっかいけ!」


 周りではあまり聞かない喋り方で怒鳴る姿に、もしかして──と思い尋ねてみる。


「きみ、おおさか? からきたの?」


 時々テレビや動画で聞き覚えのあるイントネーションにピンときて質問すると、男の子は「だからなんやねん!」とより険しい表情で睨みつける。


「もしかして、だれかにしゃべりかた、わるくいわれたの?」


 そう尋ねると、図星を突かれたらしい男の子は一瞬驚いたようにこちらの顔を見つめ、目元を乱暴に袖で擦る。


「おれ⋯⋯ヘンなんかな?」


「ぜんぜんヘンじゃないよ。そのままでいいんじゃないかな」


「ハルくんハルくん! あっちであそぼう!」


 男の子と話していると、背後から普段から仲良くしている女の子に声をかけられた。振り返ると、そこから少し遅れてぽてぽてともう一人の女の子が追いついてきた。


「あれ? そのひと、となりのあさがおぐみのひと?」


「うん、そうみたい。きみ⋯⋯えーと、あきひろくん?」


 胸につけた名札を見て言うと、この子にも提案する。


「いっしょにあそぼうよ。ナツとフユもいい?」


「うん! いこいこ!」


 ナツは満面の笑顔で歓迎し、その後ろで人見知りなフユも、緊張した様子だが嫌がる素振りはなく、こくこくと頷く。


「じゃああきひろだから⋯⋯アキだ! アキでいいかな? おれはハルね」


 そう提案すると、フユがぴくりと反応した。


「はる、なつ、あき、ふゆ⋯⋯ぜんぶ⋯⋯そろっちゃった、ね」


「ほらアキ! いっしょにいこう!」


「え!? おいっ!」


 突然の展開に唖然とするアキの手を取り、ハルは問答無用に広場へと走り出す。「あ、まってー」とナツとフユもそれに続いた。


 夜永春斗。牧夏海。和泉秋大。小山内冬華。


 偶然の交錯が織り成した四季の奇跡。

 今日まで続く「春夏秋冬」は、ここから始まった──。



 ◇



 身体の軋みと怠さが思い出したかのように浮上し、彼方からの声に導かれるまま、夜永春斗は目を開けた。


「あ、ハル! よかった⋯⋯ちゃんと起きてくれた⋯⋯! ねえ二人ともー! ハル起きたよー!」


 覗き込んだナツの表情が一気に明るくなり、少し離れた位置で座り込んでいたアキとフユに呼びかけた。

    

「ハル! マジで焦ったぜ! もう二度と起きねえんじゃねえかって⋯⋯!」


「脈も、呼吸もあったよ⋯⋯不吉なこと、言わないで」


「悪い悪い。でも今のオレたちならわかんだろ? ハルが明らかにキャパ超えた魔剣パワー引き出してああなっちまったって。ずっと目ぇ覚まさねえって可能性もあったんだからよ」


「うん。あの最後に撃った黒い衝撃波、ホントに凄かったもんねー。あれが火事場の馬鹿力なのかな?」


「あとな! 驚くなよ! オレら三人とも『魔剣』を使えるようになったんだ! お前にも見せてやりたかったぜ! オレらがバシッと決めてる勇姿をよ!」


「そうか⋯⋯やったな」


 ハルは幼馴染たちのいつもの元気な姿に対して穏やかに、そして短く賞賛した。


「⋯⋯あれ? あんまり驚かないんだね?」


 ナツが意外そうに目を見開くと、ハルはゆっくりと上体を起こし、さも当然のように微笑む。


「俺がこうして生きててあのバケモノがいないってことは、お前達も魔剣に覚醒して倒したとしかあり得ないだろ? あのバケモノたちが諦めて帰るわけがないからな」


「こんなときでも冷静だな⋯⋯お前」


「それより、あれからどれくらい経った?」


 思えばあの廃工場で光に飲まれてから、異形の怪物に襲われるナツに魔剣の覚醒。さらに第二波の軍勢を相手取って意識を失うなどの怒涛の連続で、現状を確認する余裕が一切なかった。


「今は夜の八時過ぎだな。あの工場に行ったのが夕方の四時くらいだったから、結構経っちまったな」


 アキが画面にヒビが走ったスマホをハルの眼前に突きつける。その右上には電波状況を表すマークが「!」となっており、電波やネット環境が圏外であることを示していた。


「バケモノと戦ってからもだいぶ経つのか?」


「うん。ボスを倒したあとさ、すぐ木の上のハルを迎えに行って。そこからあたしたちも結構休んでたの。ハルが倒れたみたいじゃないけど、やっぱり魔剣って疲れるね」


「⋯⋯ねえ、それよりみんな、聞いて?」


 復帰したハルに現状確認をしていると、フユが改めて口を開く。


「私たちがいる、この森⋯⋯やっぱり、日本じゃない⋯⋯。外国の、どこでもない⋯⋯」


「あたしたち、あの魔剣に触れてここに飛ばされたんだよね? どういう仕組みでそうなるんだろ?」


「それにスマホも圏外だもんな。つーか日本でも外国でもないって? ならここどこだよ?」


「それは⋯⋯わからない⋯⋯。ほら、みんな⋯⋯空を見て?」


 フユが空を指差したそこには、黒のキャンパスに丸く大きな月を中心に、きらめく星屑たちが散りばめられているように見える満天の星空だ。この光のお陰か、人工的な電灯もない森でも比較的明るかった。


「キレイ⋯⋯こんな星空、東京だと見れないよね」


 ナツはぼんやりと空を仰ぎながらそう漏らす。

 寂寥と不安と疲労を、感動で包みながら。

 自分たちが住む八王子市は、東京でありながら田舎でも都会でもない、どちらかと言えば田舎寄りの地だ。

 そんな場所でも、これほどまでの星空は見られるものではない。

 見惚れるナツに、フユが「そうじゃなくて⋯⋯」と続ける。


「北極星も、北斗七星も、カシオペア座も、夏の大三角形も⋯⋯なにもない⋯⋯知ってる星が、ないの⋯⋯。月とか太陽はともかく、星はあんなに沢山、あるのに⋯⋯」


「北半球と南半球で違うとはいえ、星を見れば大まかな方角と時間を割り出せる。未知の星しかないとなると、もう答えは明白だな」


 フユの言葉を受け継いだハルが、結論を出す。




「ここは、俺達の知る地球上じゃない⋯⋯『異世界』ってやつらしい」




※読み飛ばしOKのおまけ


タイトル名《今を生きる》は、マジック︰ザ・ギャザリングにおける、クリーチャーのアンタップと、追加の戦闘フェイズと戦闘後メインフェイズを得る赤の4マナソーサリーカード。墓地からのフラッシュバックでもう一度使える。


行動不能(タップ状態)だったハルが目を覚まし(アンタップ)、冒頭に過去の回想フラッシュバックが入っているというカード名やカード効果、プロットの噛み合わせ。


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