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煌びやかな装飾のされた公爵邸を、決別場所に選んだ。
公爵邸からの誘いなら確実にアレクシス様は来るだろうし、アレクシス様のパートナーとしてヴィヴィアン嬢も来るだろうと思ったからだ。
思惑通り、二人は会場に来ていた。
なお公爵邸で揉めるのは公爵に悪いのではないかと思ってルーカス様に確認をすると、どうやら公爵は私たちの揉めごとを余興として楽しむつもりらしいとのことだった。
趣味が悪いとは思うけれど、今回に限ってはありがたい。公爵のお望み通り、彼らには存分に揉めてもらおう。
「お前、どうしてこんなところに」
そんなことを考えている間に、アレクシス様の方から私を見つけてくれたようだ。こちらから話しかける手間が省けるなんて幸先が良い。
「お久しぶりですね、ラミレス伯爵」
私が優雅にお辞儀をすると、アレクシス様の隣に並んだヴィヴィアン嬢が高らかに笑った。
「あら、ジゼル嬢。野垂れ死んだわけではなかったのね!」
「ヴィヴィアン嬢もお元気なようで何よりです」
今日はその元気がいつまで続くか見物でもある。
ヴィヴィアン嬢が私を見下すような嘲笑を続ける一方で、アレクシス様は怪訝そうな顔をしている。
「お前は不参加だとオルコット男爵が言っていたぞ」
お父様もこのパーティーに来ていたのか。お父様が絡んでくると話がややこしくなりそうだから、お父様に見つかる前にやるべきことを済ませてしまいたいところだ。
「ジゼルは本当にこのパーティーの招待状を受け取ったのか?」
この質問に、あえて曖昧に微笑む。
「もしかして忍び込んだの?」
私の様子を見たヴィヴィアン嬢が先程よりも大きな声で笑った。よくこんなにも他人を馬鹿にした笑い方が出来るものだ。真似したくても簡単に真似できる笑い方ではない。
「みっともなーい。ジゼル嬢はネズミのような真似をするのね! 屋敷内にネズミが忍び込むなんて公爵もお可哀想に」
「おいおい。一応は俺の元妻なんだから、恥ずかしい真似はしないでくれよ」
ヴィヴィアン嬢の嘲笑にアレクシス様が乗っかった。
二人して私のことを馬鹿にしつつ嘲笑している。
「はあ、本当に。あなたの元妻だったなんて、恥ずかしい限りです」
勝ち誇る二人に向かって、私は反撃に転じた。
「なんだと!?」
すぐにアレクシス様が反応した。あまりにも煽り耐性が無さすぎる。
だから私は、あえて再び煽ってみせる。
「あなたと結婚をしたことは、私の人生における汚点です」
今にも私に掴みかかりそうなアレクシス様の腕に、ヴィヴィアン嬢が自身の腕を絡ませた。
「気にすることはないわ。負け犬の遠吠えよ」
ヴィヴィアン嬢がアレクシス様を止めてくれたのはありがたい。こんなところで終わってしまってはつまらないから。
さあ、どんどん行こう。
今度はアレクシス様を落ち着かせようとするヴィヴィアン嬢に矛先を向ける。
「あなたも可哀想な人ですね。嫉妬で他人の人生をめちゃくちゃにするような男と結婚をするなんて。いつ自分の人生がめちゃくちゃにされる番が来るか分かりませんもの」
「アレクはわたくしの人生をめちゃくちゃになんてしませんわ! ねえ、アレク!?」
「もちろんだ。負け犬の言うことなんか気にする必要は無い。いや、負けネズミか」
アレクシス様まで私のことを負け犬呼ばわりし始めた。
さらに私を侵入者と決めつけて、近くのスタッフを呼んだ。
「おい、スタッフ! この侵入者をつまみ出せ!」
しかしやって来たのはスタッフではなく、ルーカス様だった。
スタッフにも、今日の喧嘩は余興だから止めないように、と公爵の指示が入っているのかもしれない。
「私のパートナーがどうかしましたか?」
「……ルーカス・サンチェス!」
アレクシス様がルーカス様のことを、憎悪のこもった瞳でにらんだ。
それに対してルーカス様は涼しい顔だ。
その様子を見た瞬間、きっと仕事上での二人もこんな感じなのだろうと察した。他人に嫉妬し他人を蹴落とすアレクシス様と、淡々と成すべきことを成すルーカス様。アレクシス様がルーカス様に勝てないのは当然だ。
アレクシス様が他人を蹴落とすことで手に入れたものを、ルーカス様は実力で手に入れているのだから、手に入れた仕事を上手くこなせるのは確実にルーカス様の方だ。
そのためアレクシス様はいつまで経ってもルーカス様に仕事で勝つことが出来ないのだろう。そしてルーカス様に対する負の感情を膨れ上がらせている。
「そう、彼はあなたが嫉妬してやまないルーカス様です。私は今日、彼のパートナーとしてここに来たのです」
「なっ!? どうしてお前がルーカス・サンチェスのパートナーに!?」
この質問にはルーカス様が答えた。
「なぜ私が彼女をパートナーに選んだのかは、ラミレス伯爵もよく知っているでしょう? だからこそあなたは彼女と結婚をしたのですから」
ルーカス様への嫌がらせのために私と結婚したことを、当のルーカス様に知られるのは一体どういう気持ちがするのだろう。
今のアレクシス様は表現しようのない顔をしている。
強いて言うなら、羞恥と憤怒、そこに悔恨と憎悪と混乱が混ざっている顔、だろうか。
アレクシス様自身も自分の感情に頭が追い付いていないのか、何も言うことが出来ないでいるみたいだ。




