~35.お約束はいわせません!~
投稿がだいぶ遅くなり申し訳ございません。
次回からバトルします!
次話投稿は先日お伝えしたとおり1/24 21:00までに
更新いたします。詳細はここに追記しますのでよろしくお願いいたします
2/21追記
大変お待たせいたしました。2/22 21:00に次話投稿を確定します
また、かなり間が開いて大変申し訳ございませんでした。
レフィストは俺の叫びを聞いて驚いたのかキョトンとした様子でこちらを見た。
「バーベキュー…なんだそれは?」
「お前らが今やっていることだよ。」
「ふむ…つまり我々の侵略を世間では「場別窮」というのか…人という居場所から強制的に別れさせられ、窮地へと立たされてしまう…ふふふ、上手いことを言う。」
「なんでそんな伯爵みたいに奇跡的な解釈してんだよ!」
「それはこの身体が双子の兄のものだからだろう。」
「ああ…なるほど。」
レフィストの言葉を聞いてなんか納得してしまった。
「というか、その前になんとかしろよこれ!」
俺は周囲にあるバーベキューのテーブルを剣で指した。
よくは見えないが少なくとも十数台はあるだろう。
そんだけの数でバーベキューをし続ければそ黒い煙が充満するのは当たり前だ。
その仕草をレフィストは最初じっと覗き込むように見つめていたが、やがて理解したのか何度も頷いた。
「先程から視界を遮り、呼吸も苦しくなるこの霧は…お前の仕業だったのか!」
「違う!こんなとこで肉焼いているからだろ!」
「肉?…はっ!まさか…毒殺?なんて卑劣なやつだ!勇者の風上にもおけぬ!」
「だから違う!お前らが室内で肉とか焼いているからだろ!」
「何かを燃やして作っているのか!なんて…むっ?どこに行った…霧に紛れて逃げるな!」
「一歩も動いてねぇよ!」
勝手な解釈しすぎだろこいつ…頭が痛くなってきた。
なんかこのままにしているだけで自滅しそうだな、主に酸欠とかで。
「…とりあえず俺の話を聞いていただけないでしょうか?」
俺は半ばやけくそでレフィストに対し深くお辞儀をした。
「そんな風にされては仕方ない。話を聞こうではないか。」
その低姿勢に気をよくしたのか、口を閉じ俺のほうへ意識を向けた。
上目線なのが鼻につくが、なんとか話を聞いてもらえる態勢になったようだ。
「この霧は室内で食べ物を焼くことによって生まれたものだ。今も肉とかを焼いているからずっと煙が出っぱなしだ。しかも部屋を閉め聞いてるから煙は溜まる一方だ。だから今燃えている火を止めて換気をすれば…。」
「つまりこうすればいいのか。」
俺のかなり初歩的な話を聞くと不意にレフィストは指を弾き音を鳴らした。
すると燃えさかっていた炎が嘘のように全て消えると同時に部屋の壁からはカチッと何かが開く音が聞こえた。
そしてガラッと何かが開くと、今まで漂っていた霧がゆっくりと壁のほうへ動いていくのが分かった。
「おお!薄くなっている。これで合っているようだな。」
レフィストは何食わぬ顔で俺に確認する。
「そうだな、少し経てば全てなくなるだろう。」
俺はそれに対してただ呆然と答えることしか出来なかった。
それくらいに今の行動は衝撃的だった。
レフィストがやったことはおそらく魔技を使ってテーブルの炎を消化して窓を開けたのだろう…その行動自体はもう驚かない。
しかし問題はそれを「レフィストがやってのけた」という事実だ。
レフィスト…もといフィジレスは魔技をうまく使うことが出来ない。
たとえどんなに乗っ取った者の優秀であっても利用できるのは源炉だけであって魔技を使う技術ではない。
だからこそ器としては申し分ないリムを乗っ取ったにもかかわらず、使えた魔技は粗悪な火球だけであった。
しかし目の前に居るレフィストは数十にもおよぶテーブルと窓を対象に炎を消す魔技と、窓の鍵を開ける魔技をそれぞれ同時に行なった。
…しかも集中する素振りもなく指を鳴らすだけという簡単な動作だけで。
それは相当なレベルで「魔技を使いこなせている」ということを意味している。
どうりでリムが以前見せた魔技がこの部屋にかかっていたわけだ。
(それだけだったらよかったんだがなぁ…)
レフィストが他のフィジレスと違っていることは分かっていた事だ。
魔技が使いこなせるのは想定していた範囲ではある。
俺が衝撃を受けたのは別の事だ。
「ところで勇者…トウヤといったか。」
レフィストが俺の名前を呼んだところで俺は思考するのを一旦止め、気持ちを切り替えた。
「トウヤがここにいるということは…インヴァースは敗れたか。」
そうつぶやいたレフィストは何が嬉しいのか口元が緩んでいる。
「しかも一瞬でここに来るほどの瞬間移動の使い手…素晴らしい戦闘能力だ!我は歓迎するぞ!」
「…はぁ?」
「いや、ここに来たのは我の仲間になりたいということだろう?」
「んなわけねぇだろ!」
「では……観光か?」
「そっちのがありえねぇだろ!」
「そうか…では我と契約して魔法剣士になろうとしたのか?」
「う…、ん、んなわけないだろ…」
最後の質問に一瞬考えてしまった。
…魔法剣士とか、男の子だもの。多少あこがれても仕方ないよな、うん。
軽く頭を振り邪念を払うと俺は剣をレフィストに向けて構えた。
「俺が来たのはレフィスト…おまえを破壊するためだ!」
その言葉を聞いた途端、レフィストの口元から笑みが消えた。
俺の様子を見て本気だとわかったのだろう…普通ここに来た時点でわかるはずだが。
「ほう?我を破壊すると、しかも勇者とはいえトウヤ…一人だけとは随分舐められたものだな。」
「あいにく俺以外は忙しくってな。」
「なるほど。なめられたものたな。」
そう言いながらレフィストは俺に向かって手をかざした。
その動作に思わず剣を握るが強くなる。
なにかしらの魔技を放つと思ったがレフィストはそのまま手を上に持っていった。
「消えろ。」
そういうとレフィストを中心に風が巻き起こった。
風の勢いは強く、周囲の霧もろとも次々に部屋の外へと追いやる程だ。
俺はその風を受けても微動だにせず、ただまっすぐレフィストを見つめた。
少しすると先程まで人の姿が見えなくなるほどの濃い霧が徐々に薄くなり次第に視界が晴れていった。
「ふふふ…トウヤよ。単身で来るとはあまりに無謀だったな!」
レフィストは意味深に薄ら笑いを浮かべながら腕を振ると、先程よりも強い風が駆け巡り、残りの霧を一気に外へ消し飛ばした。
「さあこの状況を見て絶望を感じるがよい!」
これによって俺はこの部屋の現状を知ることとなった。
ここは大きな舞踏会が開催できるほどの広さがあり、天井も高い。
視線の先には赤い絨毯がまっすぐと敷かれ、その先では数段の段差があり高くなっている。
その段差の上には豪華な装飾が施された椅子がひとつだけ置かれている。
ここは何かで見たことがある…たしか玉座とかいったか。
レフィストはその椅子に手をかけ寄りかかりながら俺を見下ろしていた。
「すごいな。玉座なんて初めて見たぞ…立派なものだ。」
「そこじゃない!それでは誰も絶望感じないだろう!」
「いや、一般人との格の違いを見せて絶望させようとしたかと…」
「まわりくどい!そんなもの今みせても意味がないだろう!」
あれ、意外とレフィストはツッコミがそこそこできるんだな。
こちらの言葉に律儀に返すとは意外だ。
「この状況でとぼけるとはたいした度胸だ。もっと周りをみろ。」
「見たくないんだよ!」
レフィストはそう促すが、俺は先程から気づいていた。
俺を囲む、おびただしい数の気配と殺気に。
ここまでの圧力は今まで蒼月流の修練でも味わったことがない。
…少しくらい現実逃避させてくれてもいいじゃないかな。
まあこんな理由ででとぼける俺も相当バカだが。
俺はため息を一つ吐き、今度は自分の周りの様子を窺った。
「…はぁ?」
そこには想像もしていなかった光景が広がっていた。
まず虎や狼といった凶暴な肉食動物が先頭に立ち俺の周りを囲んでいる。鋭利な牙や爪を光らせこちらを狙っているようだ。
その後ろには魔道士たちが杖を光らせながらこちらに構えている。魔技を撃つ気満々だ。
終いには竜や火の鳥など絵本の世界からでてきたような生き物までいる。口周りが燃えていたり変な光を纏っていたり、なんかよくわからない。
…え~っと、なにこれ?…この世界のサファリパークか?
並んでいる種族の統一性がまったくないが、どの種族でも身体のどこかにあの、黄金色の宝石…フィジレスが輝いている。
俺はあまりにも現実からかけ離れている状況に言葉を失った。
「無謀という言葉が理解できたようだな。」
「…随分と用意がいいな。」
笑みを隠そうとしないレフィストに向かって俺は言葉を吐き捨てた。
見た限りではあるが、こいつらの陣形は考えられたものだろう。
接近戦に長けた猛獣を前衛に置き、遠距離からは魔技を使った攻撃と補助。大型の竜などは防御の壁というところか。
「うわっ、倒すのが面倒だな。」
「あのインヴァースを退くほどの戦闘能力を持ち、この状況で倒すという言葉がいえる気概…気に入った!どうだろう。我とともに世界を破壊しないか?仲間になった暁には世界を…」
「断る。」
「半分くれ…って断るのはやいな!まだ話してる途中だろ…」
「いや、だってこその台詞お約束だし。」
「だったら最後まで言わせろよ!」
「それにこの世界いらないし。」
「我の野望を否定するなよ!」
「…ツッコミが忙しいな。」
「おまえが言わせてるんだよ!」
レフィストは俺の言葉に熱があがったのか身体を前のめりにさせて必死に言葉を放っている。
俺はそのやりとりの隙に、周囲のフィジレスの数と宝石の場所をできる限り把握する。
(数はざっと百。宝石の場所も統一がない…厄介だな)
「まあなんとかするしかないか。」
俺はこのかなり難しい状況におもわず苦笑した。
その様子を見てさらに激怒したレフストは手を上にあげた。
「もういい。それなら勇者トウヤ、おまえの存在は危険でしかない…同志よあいつを倒せ!」
そういってあげた手を俺に目掛けて降ろすと、俺を囲んでいたフィジレスが一斉に俺を目掛けて襲い掛かってきた。




