~34.時と場所をわきまえない行為を許すわけにはいかないんだ!~
いつも読んでいただきありがとうございます。
本当に長い間お持たせしてしまいまして申し訳ございません!
1/13追記
ただいま内容を少し修正しております。
そのため次話は1/16 21:00 “投稿確定”になります。
そしてさらにその次話は最も遅くても1/24 21:00までに投稿します。
前回からだいぶ遅れてしまい申し訳ございません。
もう少し、もう少しだけお待ちください。
俺の間の前には思いのよらない光景が広がっていた。
そこには先程まで続いていた廊下も階段も扉もない。
ましてや視界を遮っていた黒い霧なんて存在しない。
あるのは満天の星がきらめき黒い空に光のカーテンを敷き詰められ、月によって照らし出された建物がその造形美を披露するように輝いている。
その景色は美しく息をするのも忘れるほどに圧倒される。
確かに綺麗なのだが…何でこんなもんが見えるんだ?
確か俺は窓ではなく扉を開けたはずなのだ。しかもここは2階、外から見た城の高さから来て最上階じゃないだろう…こんな光景を前にも見た気がする。
「まさか…防衛魔技か?」
俺は朝のやりとりを思い出した。
ここはヴァリアント城…種族の最高位が住む城だ。
ここもハムアンレイスのようにあってもおかしくないのだが…
「おかしいな…試してみるか。」
俺は首をかしげながらそのまま扉の奥へ足を運んだ。
部屋の中に入る第一歩をしっかりと踏み込む…ことはできずに足が床に沈んでゆく。
というか沈むというより落ちてないか?
「嘘だろっ!」
俺はとっさに両手を扉の端に掛け力を入れて、身体を強引に戻し廊下へ転がった。
「…強制的に瞬間移動させられるってところか…。」
俺はそのまま廊下に座ったまま振り返り、先程の部屋…いや城の外を見てつぶやいた。
危なかった…勢いよく入っていたら地面に落下するところだった。
まあ、今の身体能力なら怪我はしないだろうけど。
「やっぱ防衛魔技だったか、しかも面倒だなこれ。」
ウィンのところと違い、この防衛魔技は俺自体が移動するため無視していっても意味がない。
そもそも冥族を象徴する城のようなので防衛魔技が施されているのは当然だ。
しかしまさか発動しているとは思わなかった。
俺がそう考えていた理由は二つある。
一つは侵入者が出てくる恐れがなかったことだ。
この城は今やフィジレスの本拠地といってもいいだろう。そんなところに侵入しようとする奴は誰もいないだろう。そんなことをしたら自ら乗っ取られにいくようなものだ。
そしてもう一つはあまり考えたくないのだが……。
「ん~…とにかく防衛魔技を破壊することが最優先か。」
頭をかいて立ち上がると霧を掻き分けながら一度階段のところまで戻った。
俺はそのまま手すりに手を掛けて頬杖をついて一階へと目を落としながら今後の行動を考えた。
「とりあえずこの階を全て調べるしかないよな。」
これはレフィストを見つけるのにはかなり面倒なことになりそうだ。
俺が目的の人物を見つけられる魔技とか使えたらいいのに。
…ここに来て何度も思ったが、魔技ってずるいよな、本当にいいよな!
火を自在に操るとか光線みたいなの出せるのは凄いし、そういうの使えるのは男のロマンだよな。
物を命があるように動かせるのもかっこいい、そういうの操れるのは男のロマンだよな!
それに遠い場所へも一瞬で移動できるのならすごく便利だ…し?
俺は自分の言葉に違和感を覚え、思わずその場に立ち止まった。
魔技は俺が使えないというのは共通していえるのだが…なにかが引っ掛かる。
理由を考えていると背後から以前に感じたことのある嫌な気配を察知した。
俺はとっさに振り返りながら剣を構え、前方の空間を斬りつけた。
その剣先には禍々しい黒みがかった火の粉が乗り移り、左右の壁は爆発音とともに砕けた。
…それは、フィジレスの火球だった。
「…!なるほど、そういうことか!」
俺は違和感の正体を悟り、剣を構えながら走り出す。
それが合図となったのか次々に黒い火球が俺を目掛けて飛んできた。
この狭い通路では存分に剣が扱えない。これでは全ての火球を斬りきれないし、その斬った火球によって他に誘爆する恐れがある。
幸いにも火球は霧を分散させながら飛んでくるので、避けるのは難しくない。
俺はどこぞの土管工の赤いおじさん並にうまく回避しながら前へと進んだ。
扉が見えるところまで進むと火球の量が多くなった。
やはり火球は扉の先、あの空が見えた場所から打ち込まれている。
城の外から攻撃されているとも捉えられるがおそらくそれはない。
軽く覗いた限りでは正面に誰かいる姿は見えない。
この火球からフィジレスであるため自分の姿を消すなどの魔技は使えないはずだ。
これは扉の先で待ち構えて放っているとしか考えられない。
その場で火球を回避しつつ、隙を見て扉の先の景色を観察した。
先程はいきなりのことで驚い手気づかなかったがよく見るとおかしなところがいくつかあった。
特に目を引いたのは小さく見えているリングだ。
たしかリングは伯爵との戦闘で大部分が壊れ、周辺の建物もガラスが割れるなどの被害があった。
しかし扉の先から見えるリングはほとんど壊れていないし、周囲の建物も無事なままである。
つまりこの見えている景色は…偽者だ。
おそらくこれは一度リムが見せた空間を錯覚させる魔技だろう。
だがリムのものと比べると妄想りょ…こほん創造力が足りない。
「同じならばどこかに変わっていないものがあるはずだ。」
俺はその場で立ち止まり剣を構えつつ、さらに景色を集中した。
飛んでくる火球を捌きながら見ていると急に景全体が一瞬暗くなったように感じた。
すぐに元に戻ったが俺は見逃さなかった。
俺は壁の破片をひとつ持ち、一気に扉の奥へと飛び込んだ。
そして体が落下している間に俺は破片を勢いよく目標に向かって投げつけた。
…パリンとその外装からは想像のつかない音を立てて、月が割れた。
「…見事!」
どこからか俺に向かって賞賛の声が聞こえた。
それと同時に周囲の景色は歪むように姿を変え始める。
だんだんと黒い霧は濃くなり、周囲からは燃えるような熱量を感じ、殺気立つ人の気配が増えてきている。
それに何かが焼き焦げた匂いもしてきて、思わず袖で鼻を押さえた。
そしてとうとうこの部屋の本来の光景を目にしたとき俺は呆然とすることしか出来なかった。
そんな俺を尻目に黒い霧の中から一人の男が俺の前へ姿を現した。
容姿と背丈は伯爵と瓜二つの男性だ。
しかし、目の色は血のように赤く暗く微笑を浮かべる口元から見える歯は肉食獣を彷彿とさせる鋭くとがっている。
そして額には怪しく光る紫色の宝石が埋め込まれている。
伯爵よりも吸血鬼に近い…いや吸血鬼そのものだ。
「ここにまでたどり着くとは忌々しくも嬉しく思うぞ!私の名はレフィスト…この世を支配す…」
「んなことはどうでもいい!」
そう興奮気味に話すレフィストの声を遮るように俺は大声を発した。
許されざる行為に俺の血が沸騰したかのように身体中が熱くなる。
俺は拳を強く握り、レフィストに怒りをあらわに叫んだ。
「室内でバーベキューしてんじゃねぇぇぇぇぇ!!」
…まさか第一声がこんなことを叫ぶとは俺自身も思わなかった。




