~32.俺の死亡フラグ、もうひとつ追加オーダーいただきました!~
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は珍しく(?)まともな方なのでちょっと堅いお話ですがお付き合いください。
『すまない。冷静さを欠いてしまった。』
伯爵は少し恥ずかしいのか、頭をかきながら2、3度頭を下げて平謝りをした。
今は落ち着いているか実際命がけの説得だったな…人生の中で一番必死だった5分間だった気がするぞ。
そう思いながら手で額の汗を拭っていると夜空を一筋の光が通り過ぎた。
流れ星にしては随分と大きくエメラルドのような鮮やかな緑色をしていた。
「準備ができたみたいだな。」
これはウィンからの合図だ。俺は空から伯爵へと視線を移した。
『伯爵、時間があまりない。今の状況を説明するぞ。』
『ああ、頼む。』
耳を傾けた伯爵に俺は今の冥族の状況と流星についての説明をした。
『…それはまずいな。』
伯爵は冥族の状況については予想していたらしいが、流星が行われるのには驚いたのか一気に顔が青ざめた。
無理もない。そんな攻撃がここに来るなんて考えただけで恐ろしい。
そんなのがきたら自分の種族が大量にやられる…そんなの知ったら青くもなるだろう。
俺はそんな風に考えていた。
…だが伯爵が青ざめたのはまったく別の理由であった。
『流星…その作戦ではフィジレスの思惑どおりだ。』
『思惑?』
『ああ…ここのフィジレスは別の個体に乗り移ることが出来るのだ。』
『なんだと!』
伯爵から告げられた言葉を聞いて俺は思わず叫んでしまった。
『勘違いしないでくれ。通常フィジレスは乗っ取った人間が死ぬかフィジの機能が停まるまでは離れる変える事はできない。』
『そ、そうか…よかった。』
『だが、この都市「ダルクンイーズ」にいるフィジレスは例外だ。ここには奴がいる。』
『奴…?』
『そう。ここにはフィジレス達を統べる王…「レフィスト」が君臨している。』
『レフィスト…』
…その言葉を口にしたとき体中が身震いした。
ようやく倒すべき敵の名前が分かった。ただそれだけのことなのに胸がざわつく。
『あいつは鉱石であるにも関わらず我々と変わらない知能を持っている。』
『知能を?』
『ああ。それを生かして周囲のフィジレスを操ることができるのだ。自在に動かすことも、自由に魔技を使うことも…そして強制的に人とフィジレスを分離させて別の人間へ乗り移させることさえもできる。』
『なんつう能力だ。バランス崩壊もいいところだろ…』
簡単に言えばただでさえ厄介なフィジレスに統率が生まれる。
魔技無効化を効率よく使い相手を封じつつ、こちらは一方的に魔技を使い殲滅。
さらに源炉が弱くなったら別の人間に変えることで無尽蔵に使用することができる。
それは鬼畜という言葉ではまるで足りないほどのレベルアップだ。
『おそらく流星に参加している優秀な魔技使いを操り、それを駒のように使うつもりだ。』
まさか流星すら作戦のうちだとは思わなかった。
そうしたら相手が強大な戦力を手に入れ、かつこちらの戦力を大幅に削られることになりシンビオシスは窮地に追いやられるだろう。
流星が自分の首を絞めることになるとは夢にも思わないだろう。
かといって今から相手が鉱石だなんて言っても誰も信じない。
レフィストの目論見どおりに進むことは明白である。
『まじかよ…随分スケールが大きくなったじゃないか。』
本来の目的は冥族を護るためだったが、いつの間にか世界を護ることになろうとは…随分大事になったな。しかも「フィジレスの親玉をぶっ壊す」とか子供が考えそうな安直な方法で。
『うん。まあいっか。』
『…はぁ?』
しかし俺はこの状況からは想像ができないような軽い言葉で頷いた。さすがに伯爵も何を言っているのか分からないにといった様子でこちらを見ている。
『伯爵、なおさら時間がない。今から言うことをやってほしい。』
『まさか…この状況をなんとかできるのか?』
『ああ。』
伯爵はなおも軽く返す俺を見ると目を見開いたまま固まった。
『ようはレフィストを倒せばいいんだろう?元々やろうとしたことは一緒だしな。』
『そ、それはそうだが…魔技が通用しないのだぞ?勝てるわけがないだろう!』
『いや勝てる。』
その目は妄言に呆れているのか、動揺しているか…俺には分からない。
まあいきなり言われても信じられないのだろう。
現状、伯爵は多くの人質にとられているため下手な行動は出来ない。
仮に反旗を翻しても要である魔技が封印されてしまうためまともに戦うことすらできない。
さっきの話を聞けば他の人が束になってやっても墓穴を掘るだけだ。
まあ常識で考えてこの状況を打破するなんて無理だ。
…そう、常識で考えれば。
『俺、源炉持ってないし。』
『はぁ?』
伯爵から本日二回目の「はぁ?」いただきました。
ああ。よく考えたら教えてなかったな。
『俺は元々魔技なんて関係ないんだよ。だから無効化されても意味ないし、持ってないから乗っ取られる心配もない。』
『………。』
その言葉を聞いた伯爵は固まった。パソコンもびっくりするくらいのフリーズだ。
『…どうだ?勇者ってすごいだろ?』
俺はそう言うとニカッと笑った。まあよく考えると自虐にも聞こえるが、まあ気にしない。
『はははっ!確かにすごいな。』
伯爵は少しして噴き出すように笑った。その顔は今まで見た中で一番明るく見えた。
『それで我と互角に戦っていたのか…わかった、勇者を信じようじゃないか。』
『ありがとう。』
俺はその場で一礼すると、伯爵に今後の作戦の説明と矢ってほしい役割を伝えた。
『…ふむ。かなり無茶苦茶なやり方だな。』
話を聞いた伯爵は思わず眉間にしわを寄せた。
『や、やっぱり?』
内心自分でも思っていたことを突っ込まれ、俺も苦笑することしか出来なかった。
『でも、それしか方法があるまい…わかった。やってみよう。』
『ああ。』
そういうと俺は剣先を伯爵に向ける。
対する伯爵も同じ様に剣先を向け、剣同士を重ねる。
まるで握手をするようにクロスした剣をみつめながらお互いにうなずく。
そして天へと高らかに突き上げると、その剣を中心にまばゆい光が全体に広がった。
この神々しい光に包まれながら、俺たちはそれぞれ別の方向へと走り出した。
…ちなみに神々しい光景の裏では
『…なあ、勇者。もしこの作戦が成功したら…』
『ちょ、ちょっと伯爵!その死亡フラグ的な発言はまずいって!』
『成功したら…勇者がリムぽんと一緒に寝たことを許そう。』
『…あ、やっぱりまだ怒ってたのね。』
『当たり前だ!さっさと終わらせないと蒸発させてやるからな!』
『こっち親バカのほうがフィジレスより厄介だ!』
などと会話していたことは内緒である。
読んでいただきありがとうございました。
結構説明ばっかりになってしまい申し訳ございません。
ですが、これでいよいよ舞台が整いました。
次から大ボス!フィジレスの王、レフィストとの決戦が始まります。
盛り上がるように精一杯書いていきます!
次回の投稿は一週間後を目標に頑張っていこうと思いますのでもう少しお待ちください。
9/22追記
申し訳ございません。この話を仕事が忙しく小説はおろかパソコンの前にすら立てていません…月末には落ち着くと思います。そしたら全力で書きますのでもう少しお待ちください
10/4追記
大体落ち着きました!そのため次回の投稿が見えました。10/6 21:00に投稿します。長いことおまたせして申し訳ございませんでした




