~31.伯爵様。本気になる場所を間違えていますよ?~
いつも読んでいただきありがとうございます。
大変お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。では、どうぞ~!
まず最初に攻撃したのは伯爵。
大きい得物とは思えない速さで、牽制とばかりに袈裟斬りを放った。
俺はそれを半歩下がり身体をひねってかわしつつ、横薙ぎを繰り出す。
すると高速でヴェルフレアを戻してそれを弾き返した。
すでにお互いが演技と分かっているため、火花が散っても爆発は起きない。
先程とは雰囲気がまるで違う。今は戦闘を楽しむように互いに剣を交えていた。
自然と顔が笑顔になる。
『そういえば勇者よ…いつから我がフィジレスに操られていないと気づいたのだ?』
そう言いながら俺の剣を弾くと、今度は斬撃を連続で放った。
大剣なのになんという速さだ…まるで木の棒でも振り回しているくらいだ。
『最初から予想はしていたんだけど…確信したのは伯爵の放った火球を見たときかな。』
俺はその攻撃を全て剣で弾き返しながら答えた。
『火球?そんなもので分かるのか?』
『ああ。俺はフィジレスと一度戦っているし、そのときにフィジレスの特性をみているんだ…フィジレスは乗っ取った人の源炉を利用するけど、魔技の能力は使えない。だからあんな威力の高い火球は放てないんだ。』
最後の斬撃を弾いた反動を利用して、一回転して袈裟斬りを放つと伯爵はバク転をして避けた。
『っと…なるほど。』
そう言いながら涼しい顔で、体勢を整えると今度はウェルフレアを正面に構えた。
対する俺は、左肩を前に低い姿勢で剣を構えた。
その姿は居合いの構えに似ているが、鞘がないところは右手で補っている。
お互いに膠着したまま、空気だけがどんどん張り詰めていく。
だが、実際にはお互いは仕掛けることはせずに話をするために過ぎない。
『では、フィジレスに操ってないと知っていて我を戦っていたのはなぜだ。』
『それは伯爵…あんたとだけ話すためだ。普通に話したらそのブレスレットや監視に気づかれてしまうからな。』
『話すため?』
『ああ、ウィンが教えてくれたんだ。』
実は戦っている間に俺は一度ウィンと会話をしていた。
それはリングの下に逃げていた時だ。俺はなんとかコンタクトをとれないかとウィンに相談した。
すると「念話がベストね。」と教えてくれた。
どうやら念話は話している相手以外が聞こうとすると弾き返す能力があるらしい。
それを無効化し盗聴するのにはかなりの能力者でないと出来ない。
伯爵ならともかく、能力では劣っているフィジレスではまず不可能だとウィンは断言した。
しかし、それが分かっていても念話をすることはできなかった。
なぜなら念話をするには条件が二つあるからだ。
一つは番号を知っていること…ウィンのときは元々渡された魔法石に入っていたし、リムの場合はあのとき無作為に自分の番号を配信していたらしい。
この条件である伯爵の番号はウィンとの念話の後にリムから聞くことが出来た。
そしてもう一つは…その相手と接触をしていることである。
相手に触れるという行動は思いのほか難易度が高い。
意識をしなければ他人に触れる機会なんて普通ないだろう。
しかもただ触れるのではなく、掌で相手と触れなければならないらしい。そのため難易度はさらにあがる。
ウィンとは出会ったときに手を握ったことで条件をクリアすることができた。
しかし、それがなくてもウィンとは触れることが出来たであろう。それはお互い友好的であったからだ。
そしてリムの場合は腕に掌底を当てて避けたことで偶然にも条件を満たしていた。
…よく考えるとその後からリムの声が聞こえてきた気がする。
しかし伯爵は俺に敵意を(先程の段階では)持っていることは明白だし、大きさは俺と変わらない。
この場合触れようとしたら攻撃とみなされすぐに火球なりなんなり飛んでくるだろう。
知っていたら最初に握手でもして条件を満たせたのにと、ウィンの話を聞いて嘆いた。
おかげで条件を満たすのに何時間もかかってしまった…
しかし初めに予想していたフィジレス全員と戦うのよりはマシだった。
『そういうことだったのか。』
説明を終えると納得したように相槌をうった。
しかしその言葉とは裏腹に伯爵は右手を俺に向けた。
え~っと…どういう意味なんだ?
最初この伯爵の行動の意味が分からなかったが、その先に始源が集まり大きな球体になるとすぐに理解した。
『ちょ、ちょっとなにをしていらっしゃるんですか伯爵さん。』
『なにというのは?』
『いやいや!それ明らかに魔技でしょ。』
さっきからみたことがあるその光景に、俺の身体から冷や汗が流れた。
『いかにも。岩をも解けるくらいのあっつあつの火球だ。』
『熱いってレベルじゃねぇ!しかもさっきよりも威力あがってないか?』
『我が出せる最高の熱量…そして威力だ。』
いや、目がマジなんですけど?今までで一番の殺気を感じるぞ。
『…勇者よ、許せ。我には絶対に負けられない戦いがここにはあるのだ。』
『負けられない戦いってなんだよ。』
『我の愛娘に触れたことだ…それも一緒に寝たんだろう?』
そう告げると火球はより大きくなり、激しい炎に包まれている…まるで小さな太陽だ。
…やっぱり聞かれてたか。
考えていることが伝わってしまうのは本当に危ないな…こう、今まさに実感したよ。
とはいえリムとどうやって触れたのか本当のこと言えるわけないし、伯爵からしたらそこで触れたとしか考えられないよな…俺死んだな。
『待ってくれ!俺の話を聞いてくれ!』
俺は必死の形相で伯爵を止めに入った。
『…いいだろう。冥土の土産だ。5分だけ聞いてやる。』
5分って…結構寛大だな。
『えっと。たしかにリムと一緒の布団で寝ただけですが、フィジレスのことがあって夜が不安らしくって大丈夫だよって安心させたかっただけです。』
これは事実だしな。というか何故か敬語になってるな。
『それで手をつないだくらいだから、なにもしていないです!』
…俺からは、な。実際にはリムに抱きつかれたりとかしているけど。
『不安なときは安心させるのが《友達》としての務めですよね!』
ある一部分を強調して説明した。
『ふむ…手をつないだのはともかく、それは友達としての好意だったと?そこに男としての気持ちがなかったと?』
『はい、そうです。』
『貴様…あんなに可愛いリムぽんと寝ててなにも思わないなんて魅力的じゃないってことか!』
『めんどくせぇ親父だなおい!』
『お義父さんだと?誰がそう呼ぶことを許した!』
『んなことといってねぇ!いいから落ち着け!』
…ちなみに伯爵を落ち着かせるのに5分以上かかりました。
お待たせしてしまった挙句、説明を含めたやりとりなので内容は進んでいないという情けない内容…本当にごめんなさい。
次話にはフィジレスの親玉の名前と、その目的が分かります。
しかし再び解説に近い内容なので早めに更新して物語を進めたいと思います。
次回の投稿は…9/11 21:00確定です。
※ちなみに掌で触れている場面は12話と29話に書いてあります。




