~30.あだ名で呼ぶのは友達間だけにしたほうがいいのでは?~
大変お待たせいたしました。
ここから物語は核心へと変わっていきます!ちょこっと説明がくどくなるかもしれませんがなるほど!っと思っていただけるようになんとか頑張っていきます。
次回は一週間以内に投稿する予定です(もう一つの進行具合により変化する恐れがあります)。変更する場合はすぐにここにお知らせいたしますのでよろしくお願いいたします
9/9追記
お待たせいたしました!
9/9 21:00に次話投稿いたします。よろしくお願いいたします
俺のした行動を見て伯爵は目をまるくした。
先程のように計算されて投げたのではない…自分の意思で剣を突き刺したのだ。
「なんのつもりだ!」
大きな声をあげて俺に尋ねた。不快感を表すかのように声を荒げている。
…無理もない。
戦いの中で剣を置く行為はどのようなことを意味しているのか伯爵は理解しているはずだ。
それを…しかも優勢と思われるほうがそれをしているのだ。
伯爵から見れば侮辱されているようにも捉えられる。
俺はその声を聞いても口を開かずに、その姿を胸に手を当てて見ているだけだった。
「わかった、ならば散るがいい!」
伯爵は俺の姿を失望のまなざしで見ながら、おおきく身体をしならせた。
すでに攻撃のモーションにはいった。俺の声はもう間に合わないだろう。
『待て伯爵』
「!」
いきなり聞こえた声に思わず伯爵の動きが止まった。
俺たちの距離では到底聞こえないような小さな声だったが、どうやら届いたようだ。
『待ってくれ伯爵。俺はあんたを倒しに来たわけじゃない』
「なんだ…と、勇者なのか?」
『ああ、そうだ。』
俺はそう答え、胸にある緑色に光るネックレスを強く握り締めた。
そう、伯爵に聞こえた俺の声は魔法石を通じて送られた念話であった。
以前にリムがやっていたものを真似させてもらったのだ。
『もう一度言う。俺はあんたを倒しに来たんじゃないんだ。頼む、一度攻撃を辞めてもらえないか?』
俺はそれを行動で示すように両手を上げてその場から数歩後ろにさがった。
降参というか戦闘の意思がないことをあらわしたのだが、こっちの世界でも通用するのかな。
俺は不安でいっぱいのまま少し間、沈黙が流れた。
『…わかった。話を聞こう』
俺にとって何時間とも思える沈黙の後(実際にはほんの数秒だっただろう)伯爵は、ヴェルフレアの発光を止めてゆっくりと地面に降りていった。
どうやら俺の誠意が伝わったらしい…助かった。
俺はその姿を確認してから上空を見上げた。
「…どうやら、うまくかかってくれたみたいだな。」
ある場所を確認した後に視線を伯爵へと戻した。
「どこを見ていた?」
伯爵は地面に着地すると俺の行動を不審に思ったのか俺に声かけた。
警戒のためなのかヴェルフレアを構えたままである。
「それよりどうして勇者の声が聞こえるんだ?」
『ああ、すぐに説明するよ。一応会話は念話のみでお願いできないか?それと俺と適当に戦ってほしい。』
『…どうしてだ?』
その疑問を伯爵は言葉ではなく念話で投げかけた。話を聞いてくれるというのは本当のようだ。
『念のためさ。この状況をお互いに気づかれたくないだろ…特にこいつにさ。』
俺はそう言いながら地面に刺した剣を抜くと、おもむろに天に剣を向けた。
『…なんのことだ?』
伯爵は俺の行動をみてから、間をおいて質問をしてきた。
『分かってるはずだろ?監視されていることに。』
『監視?さっきからなにをいっているのだ?』
その様子だと意味がわからないといいたいのだろう。
そんなわけがない…俺はその発言が嘘であることを見抜いていた。
さっきの行動をしたとき、伯爵の身体がほんの一瞬固まったのに気が付いたからだ。
しかしそれを指摘して本当のことを聞き出せるとは思えないな。
なにせフィジレスに人質をとられている状況だ。
この都市部に集合していることから、おそらくフィジレス同士は連絡を取り合うことが出来るか、大きなフィジレスが全体のフィジレスをコントロールできると考えていい。
どちらにしてもこの現状を知られた場合、操られた冥族はこっちに総攻撃を仕掛けてくるだろう。
そんなのが来たら間違いなく混戦になり、冥族や都市に甚大な被害が出る…それを国の代表が望むわけがない。
この状況で何を言ってもこっち話を聞いてもらえないだろう。
困ったな…これは難題だ。
時間もあまりないぞ。リムの魔技もどれだけ持つか分からないし…
『今、なんて言った?』
頭をかきながら必死で打開策を考えていると、急に伯爵から強く声をかけられた。
『えっ?俺、なんか話したか?』
『ああ、時間があまりないとか言っていただろう。』
…なるほど。考えてた事がそのまま伝わってしまったようだ。
でも、ウィンと話してるときはそういうのなかったよな…こっちの電話の定義がよくわからない。
『ああ、さっきも言っただろう。俺には時間が…』
『そこじゃない!その後だ!』
『その後?…リムの魔技もどれだけ…』
『それだ!勇者、リムぽんのこと知っているのか?』
『リ、リム…ぽん?…え~っと俺の知っているのは、リムリス・ハドイースって子だ。』
『その子だ!気づかんか?我の名前を覚えているか?』
『インヴァァース・ハドイース…そうか。』
『わかったようだな。リムぽんはなんと我の娘だ!どうだ、驚いたか?』
『いや、それよりも娘をそう呼んでいることに驚いた。』
いくらなんでもリムぽんって…友達じゃないんだから。
というか娘の名前が出たらすごくいい笑顔になったな…さっきまでの緊張はどこへ行ったんだよ。
『それよりもリムぽんを知っているというのは…?』
『…最近知り合ったんだ。フィジレスに襲われたところをウィンと一緒に保護したんだ。』
俺は一部の事実を伏せてリムとの関係を話した。
フィジレスに身体を乗っ取られていたとはいえ、自分の娘が人族の都市部で暴れていたなんて洒落にならない。
ましてやそれが冥族代表の娘なんて…ってリムもお姫様だったのかよ!
道理でウィンと仲がいいわけだ…って気づけよ俺!
というか俺、昨日リムと一緒のベッドで寝たよな。
…それってか、かなりやばいよな?
いくらリムから頼まれたからって…この事実が伯爵にバレたら消されるな。主に物理的に。
恐る恐る伯爵を見ると、「よかった」と胸に手を当てながら心から安堵したように大きく息を吐いていた。
『とりあえずフィジレスの事情は大体リムから聞いた。』
『なるほど…リムぽんは今もウィンヒール嬢と一緒に居るのか?』
『いや、今はこっちに来てフォローしてもらっているよ。』
『なに!ど、どこだ?リ~ムぽ~ん!』
『うるせぇ!念話で大声出すな。頭に響くだろうが!』
あまりの声に思わず頭をおさえた。
この行動から分かる、この人は確実に親ばかだ。
…うん、昨日のことは絶対バレないようにしよう。
『リムはあの監視役の中に紛れているよ。』
俺はそういってもう一度剣を上にあげると今度は伯爵も上を見上げた。
その先には大型の鳥類が数匹、群れをなして飛びまわっている。
全員が足で魔法石を持ちながらこちらへ向けている。おそらくフィジレスの親玉に配信しているのだろう。
その中に一羽だけ明らかに違うものを持っていた。
…ってあれ枕じゃねえか!しかも俺の部屋にあったやつ。
いまさら気づいたが明らかに変だろ!しかもこのタイミングでなに持ってるんだよ!
思い出しちまう。は、話を切り替えないと!
『ま、まあ監視役に紛れてそいつらに変化の魔技をかけてもらっているところだ。今フィジレスたちには俺たちが戦い続けている映像が流れているだろうな。』
『一体いつからなんだ?そんな規模の大きい魔技、いくらリムぽんでも一時間も持たないぞ?』
『それは大丈夫だ。俺たちが空中で交錯していたときに合図を送ったから…まだ数分も経ってないんじゃないか?まあ、いつ戻ってもいいように攻撃しているフリはしておいたほうがいいな。』
『了解した。それならまだ大丈夫だろう。』
(よしっ!うまく話題を変えられたぞ。)
俺は心の中でガッツポーズをすると、気持ちを切り替えて真剣な顔へと戻す。
それを見た伯爵もゆっくりとヴェルフレアを構えると互いに走り出した。
予想外に時間がかかってしまったが、何とかここまでいけた…間に合わせるぞ。
そして気持ちを新たに戦闘…という名の会話が始まった。




