~29.何話か使って頑張ったのに無にされた俺…~
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回の投稿は1週間以内(できたら18日くらいには載せたい)と考えてますのでよろしくお願いします。
8/18追記
申し訳ございません、まだかかりそうです。
というのも今ある小説(某新人賞応募用)と平行して書いているのです。
遅くても22日までには投稿できるように頑張ります。また書き終わり次第ご報告いたしますのでよろしくお願いします
8/29追記
大変お待たせいたしました。明日、8/30(金)21:00に次話投稿します。また、 もうひとつの新人賞に向けての作品も月末に投稿予定ですのでよろしくお願いいたします。
俺たちは自ら生みだした衝撃に吹き飛ばされ、すこし離れたところでほぼ同時に大地へと帰還した。
お互いが相手の方向を見ずにゆっくりと立ち上がる。
ここまでは互角のように見えたが、互いの立ち姿はまるで違っていた。
かたや剣についた火の粉を振り払い悠然と立つ姿。
かたや方腕を押さえて身体を傾かせている姿。
…どちらに軍配が上がったのかは一目瞭然である。
それを証明するかのように、押さえた腕からは赤い血が筋となって流れていた。
「俺の方が一枚上手だったな。」
俺は振り向き伯爵に声をかけながらゆっくりと近づき肩を叩いた。
伯爵はその場から逃げるのでも近づくのでもなく、ただ俺の姿を見つめていた。
「…まさか打撃を加えて剣の軌道を変えるとは。」
「正面に一番強く防御壁を張っているだろうからな。」
「見事な読みだな。」
そう言う伯爵の口調からは苛立ちや憎悪といったものは感じられず、むしろこちらを賞賛しているようにさえ聞こえた。
あのとき俺が身体を反転させたのは攻撃の軌道を変えた。
これにより防御壁が厚くなっている正面を避け、剣は防御壁の脇を通過した。
そして剣を横から掌打し、疾風の特長である「蹴撃を加えた斬りあげ」を無理やり「掌打を加えた横薙ぎ」へと別の攻撃に変えて伯爵の腕へ斬撃を与えたのだ。
おかげで掌が痛い…とっさとはいえ自分でも馬鹿な方法だったかもしれない。
まあ、その甲斐あってようやく相手に一撃を加えることが出来た…けど。
「で、…ああなるんだよなぁ。」
俺は伯爵を見ながら…詳しく言えば斬撃を与えた腕のところを見ながらため息をついた。
その部分をよく見ると押さえた手の付近が優しい光に包まれている。
そうすると…なんということでしょう。致命傷といえる大きな傷口が、その光によって徐々に薄くなり、まるで何も無かったかのように消えたではありませんか…ってあほか!
これが回復の魔技か。本当にズルイだろ!
これだけでも俺使えないかな…結構本気で。
「ふふふ…どうやらこのままでは勝ち目は薄いようだな。」
伯爵は何かを悟ったようにそう言いながらヴェルフレアを召喚する。
「…全然薄いとは思えない行動じゃないか。」
言ってることと矛盾してますよ伯爵さん?
「いや、怪我を治癒するには膨大な始源を使うのだ。このまま戦闘を続ければ確実に我の源炉が枯渇するだろう。」
「へぇ、そうなのか。」
普通に魔技で治癒するのには限界があるというわけか。
「今のではっきりした…おそらく今の我では勇者を倒すことはかなり難しいだろう。」
自嘲気味に話す言葉とは裏腹に、どこか伯爵は嬉しそうだった。
(今の我では…ねぇ。)
これはもう確定でいいだろう…俺は伯爵が置かれている立場を理解した。
なんとかして解放してあげないとまずいな。多分このままじゃ冥族が滅んでしまう。
「だが我はなんとしても勇者を倒さねばならないのだ。そのためなら…!」
伯爵は言い切る前にその場から大きく上空へ飛び上がった。
いきなりだったため追いかけることが出来なかった。
とっさに後ろへ下がり、上空の伯爵が見える位置に移動した。
おそらく遠距離からの攻撃が来るだろう。
俺は全てを斬り伏せるつもりで剣を構えた。
しかし…視界で捉えた伯爵の姿に背筋が凍った。
なんと伯爵は赤く輝くヴェルフレアを逆手に持ち、身体を反らしながら落下してきたのだ。
まるで弓にでもなったかのような姿は、次に何をするかを堂々と分からせてくれた。
「ちょ、そ、それはシャレにならねぇ!」
あいつ投げる気だ…あの反則まがいの得物を!
そんなものが爆発したら本当にまずい。今からじゃ避けられない。
あんなに勢いをつけたヴェルフレアの投擲…いくら広範囲に会場を作ったとはいえここは街中だ。いままでの攻撃でも会場に近い建物にはひびが入るなどの被害が出てるんだぞ。
俺を倒すためだけにこの街もろとも吹っ飛ばすつもりか!
「ふざけんなよ!それが代表がすることかよ!」
「勇者を倒すためには仕方のないことだ。」
「それでいいのかよ!」
「我にはこれしか方法がないのだ!」
俺の声につられたのか伯爵は大きな声をあげた。
これはまずい…完全に冷静さを失っている。
今からじゃ迎撃するのは無理だ。たとえ今から飛び上がり剣で迎撃しても、ヴェルフレアの特性上、その火花をきっかけにその場で大爆発を巻き起こすだろう。
直撃が爆発ではなく衝撃波に変わるだけだ。街が吹き飛ぶのは間違いない。
全力で蹴って遠くに飛ばすことも考えたが、あの高さから投げ落とされたら投擲の加速度に加え、落下の加速が重なり凄まじい速度になる。
くそっ、この世界でもニュートンさんは健在かよ。
そんな速度で向かってくるのをうまく蹴れる自信がない。失敗したらそれこそ終了だ。
というか素人が思いっきり蹴ってもたいして飛ばないだろうし、ほとんど意味がないな。
何か他に方法はないのか…いや、まて落ち着け。
俺は癖で胸に手を当てようとした。
が、なにか金属のようなものが当たりそれを阻止された。これは…
(!…そうか、もしかしたらいけるかもしれない!)
俺はあることを思いついた。これなら効果があるかもしれない。
というか、このためにがんばってきたんじゃないか。
でも最悪の場合、火に油を注ぐ結果になる…最初で全てが決まるだろう。
「…迷ってる場合じゃないよな。」
俺は覚悟を決め、剣を脇に突き刺した。




