~27.俺だって頭はそこそこいいんだからね!(形的に)~
投稿が遅くなりまして申し訳ございません。
やはりまだ全快ではないのでいつもよりも短位い文章の割りに時間が倍以上かかってしまいました…お恥ずかしい。
次回は一週間以内に投稿します。確定次第この前書きに追記しますのでよろしくお願いいたします。
8/12追記
8/12 21:00に投稿します。よろしければ読んでください!
「さて…合ってるかどうか試してみるか。」
俺はそう言ってゆっくりと伯爵へ身体を向け、その姿を睨みつけた。
すると伯爵は顔色を真剣なものに変え、立ち上がると使い物にならなくなったマントを脱ぎ捨て、ヴェルフレアを構えた。
「その目は…我に勝てると思っているようだな?」
「いや、顔が黒ずんでいる奴に言われても意味ないぞ。」
「なんだと!」
気づいていなかったのか俺の言葉を聞くと一旦構えを解き、服の端で顔をこすり合わせて顔を拭った。
「し、仕切りなおしだ……我に勝てると思っているようだな?」
うわっ…本当に仕切りなおしたよこの人、しかも真剣な顔で。
なんか突っ込んだら負けな気がするぞ。
俺はひとつ咳払いをすると意識を切り替えた。
「元々あんたに勝つ気はないよ。」
「なに?」
「だけど…少し大人しくなってもらおうか。」
そういいながらおもむろに左手に持った剣を伯爵へ向けた。
「…なんの真似だ?」
「これは俺の世界では『予告ホームラン』って言うんだ。」
「予告ホームラン…?」
「まあ、簡単に言えば必ずその方向に飛ばしてやるって意思表示だ。」
「それが何で我に向けているんだ?」
そう言い放つながらゆっくりとヴェルフレアを構えた。
先程とは違い言葉には殺気を帯び、その構えからは恐ろしいほどの威圧感を感じる…なんとなく意味がわかっているようだ。
しかしその言葉を聞いても恐怖とか危機感とはまったく感じなかった。
「それは…指した奴を必ず倒すってことだ!」
俺は口元を緩めながら言葉を放つと同時に、その構えのまま地面を強く蹴った。
その姿を瞬き一つせず、剣を強く握るとヴェルフレアが赤く輝きだした。
こちらの攻撃を正面から迎えるつもりだ…冷静だな。
あの威力からは想像できないかもしれないが、大剣ヴェルフレアは防御することで真価を発揮する武器だ。
普通に考えればあの爆撃は攻撃する際の追加効果として使うのがセオリーだろう。相手は防御しても致命傷を喰らうのだから恐ろしい。
…だがそれは相手との速度が均衡している場合に限る。
先程の戦闘からも分かるように、速度でいえば俺は伯爵を圧倒している。
実際に通常の状態でも輝いていた状態でも俺はその爆撃をかわすことができた。
しかも大型の武器、隙が大きい…それを考えればこのまま攻撃するのは自殺行為だといえるだろう。
しかしひとたび防御に回ると相手が速かろうが力が強かろうが関係ない、難攻不落の要塞へと変貌をとげる。
なにせ防御することでも爆撃が発動してしまうのだからうかつに攻撃できない。
後は冥族お得意の火球や、他の遠距離攻撃で相手を攻撃すればこちらに勝ち目はなくなるだろう。
あんなに赤く輝いちゃって……俺を確実に消滅させる気かよ。
(でも、これはチャンスだ!)
俺はその様子をみて地面に着地すると一気に加速し距離を詰めた。
「いくぜっ!」
俺は気合の言葉を放ち勢いそのままに横薙ぎを一閃放つ。
伯爵はその軌跡にゆっくりとヴェルフレアを持っていく。
考えられる未来は…爆発。この刹那に訪れる衝撃に思わず体を硬くした。
―が、そんな未来は起こらない
「んなっ!」
声をあげたのは伯爵のほうだった。
攻撃の衝撃の強さに身体のバランスを崩し、その場で転倒してしまった。
「そんなバカな!」
思わずその体勢のまま声を上げた。その視線の先には俺の姿が映る。
その俺は…左足をあげたままの体勢で止まっていた。
「…いつから攻撃が剣だけって決め付けたんだ?」
俺は誇らしげに声を発した。
…そう、俺が放ったのは斬撃じゃない。
俺が放ったのは蹴り…剣術ではなく格闘術であった。
横薙ぎと思わせた攻撃はフェイクで実際にはそのまま剣を投擲して近くの地面につきさしたのだ。
「まだまだ!」
俺は間髪入れずに連続で蹴りを繰り出す。
伯爵は素早く体勢を立て直すと、慌ててヴェルフレアを楯にした。
普通ならこの状態で格闘など自殺行為極まりない。
しかし身体能力が上がっている俺が放つ一撃は想像以上に重い。
本気での蹴撃ならおそらく大人の身体を飛ばすことが出来るだろう。
それでも自殺行為なのはかわらない。
ヴェルフレアの爆発の餌食になるし、今なら火球を防ぐ手段もない。
…しかし爆発は起こらず火球も飛んでこない。伯爵は防御に徹するので精一杯だ。
「ちっ!」
予想外の行動だったのか、伯爵の顔から焦りが見えた。
その表情を見て自分の予想が外れていないと確信した。
(やはり魔技を二種類同時に使うことが出来ない!)
今まで何度か魔技を目撃しているが一度も同時に使っているところを見たことがない。
それにヴェルフレアを召喚した直後に俺は連続攻撃を繰り出した。
その時伯爵は始めヴェルフレアで防御し、後に防御壁を展開して爆撃を起こした。
…よく考えたらこの行動はおかしい。
普通は防御壁を常に発動させておくだろう。そうしていれば高い確率で攻撃は防げるし、その間に爆撃を繰り出せば高確率で俺にダメージを与えられただろう。
そう考えると魔技は一度発動を終えるか解除しない限り別の魔技を発動できない。
だからこそヴェルフレアが輝いたのを見計らって攻撃したのだ。相手の魔技を特定できている瞬間は滅多にない。しかもその魔技の威力は広範囲に及ぶ。避けたところで爆発を避けている間に次の魔技が使われてしまう。
俺はこの初撃が繰り出される瞬間を狙うしかなかった…結構危険な賭けだったがなんとか成功したようだ。
「こざかしい!」
次々と繰り出される打撃を防御しながら叫んだ。その言葉から伯爵はかなり苛立っていることが分かる。
「ヴェルフレアの特性は斬撃と爆撃をほぼ同時に起こして凄まじい威力の攻撃を広範囲に与えることにある…たとえ防御しても斬撃が当たれば爆発することが出来るんだよな?」
伯爵とは反対に俺は冷静に攻撃を放ち続けながら話した。
「ようは斬撃がぶつからなければ爆撃は起こらないってことだ。」
「……。」
捌くのに必死なのだろうか伯爵が無言で聞いている…ということは、いまのところ肯定と捉えていいだろう。
俺は攻撃の手を緩めず話を続けた。
「つまりヴェルフレアは『攻撃の際に爆撃を起こしている』のではなく、『何かと衝突することで爆撃が起こっている』んだ。」
「!」
俺の言葉を聞き一瞬だけではあるが伯爵の表情が変わった。どうやらこっちも正解のようだ。
あれだけの爆発を起こす場合、普通に考えるならダイナマイトなどの爆薬を使用するだろう。おそらく伯爵の魔武具はそれに近いものを生み出せる。
しかしそう考えると一つの問題が発生する。
通常爆弾を爆発させるには雷管と呼ばれる点火装置が必要だ。しかし伯爵の魔技にはその方法がない。点火するには火の魔技…つまり二種類を同時に使用しなければならないからだ。
魔法石を用いれば点火が可能かもしれないがそんな素振りはみられない。
そうなると方法はひとつ…火花を利用することだ。
石や金属などの物体が強く衝突すると周囲に火花が飛び散る。実際に爆発を起こした二回の攻撃はリングの床へ命中している…リングの床はマットの下に鉄筋が組み込まれているのだ。
この方法を用いれば容易に点火でき、かつ自分の斬撃の後に追加して発生させることが出来る…なるほど、よく考えたらあんなルールにリングである必要がない。
本当の理由はこういったところにあったのだ。




