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~26.天災ってこの人のことを言うんだろ!~

俺は走り出してから数秒もしないで伯爵の間合いに入った。

それを見越していたのかすでに伯爵はヴェルフレアを振りかぶり魔技(レソナ)を展開している。

その証拠に刀身は赤く輝いていた…これは先程見せた振り下ろしと爆撃のコンボか。

というかさっき光って無かったよな…じゃああれが本気か?

普通手加減っていったら半分の力ってところか…というかあれの倍かよ!

俺だけじゃなくて俺の居る空間ごと消す気だ…どうすっかな。

このまま剣同士でぶつかったら間違いなくこっちが負ける。

仮に鍔迫り合いをしても爆撃が俺を襲い、体は粉々に吹き飛ばされるだろう。

…相手に命中しなくても致命傷を与えられるってズルいよな。

「…だったら!」

俺は正眼の構えを解き、剣を左手に持ち替える。そして上体を前に倒して一気に加速、まるで弾丸のようにぶれることなく一直線に伯爵へと飛び込んだ。

この動きに伯爵が一瞬止まった。

おそらく俺が一旦止まり、間合いを取って様子を見てくると予想していたようだ。

確かに兵器とも呼べるほどの威力を目の当たりにしたら普通は慎重にならざるをえないだろう。しかも今回は本気。慎重というよりかは逃げるだろう。

しかし俺は止まるどころかさらに加速して近づいた。これは予想外だろう。伯爵は一度攻撃を躊躇してしまう。

これが狙いだった…この隙を逃がさない!

伯爵が攻撃するのを決断する前に一気に間合いを詰め、横薙ぎを一閃。

伯爵はとっさにヴェルフレアを身体の前に出し、楯のようにして防いだ。

俺は上下左右に細かい連続斬りを放つが、伯爵はヴェルフレアを巧みに動かしてこちらの攻撃を全て捌いている。

…さすがラスボス。なかなか命中しないな。

この状況は先程とほとんど同じだが、伯爵はすぐに防御壁を展開せずヴェルフレアで防御に徹したまま反撃してこなかった。

「くっ!」

やがて力を失ったのか、ヴェルフレアから輝きが消えた。これはチャンスか?

しかしそれを合図に伯爵と俺の空間を裂くように二つの火球が飛び込んできた。

俺はとっさに攻撃をやめて後ろに飛んでかわすと、火球はぶつかり衝突し爆発した。

しかし体が飛びそうなほどの爆風は起こらず、地面に跡が付くことはなかった。

(…ヴェルフレアと比べるとかなり小規模だな)

俺は爆発が終わる前に左に回り込み、伯爵の背中に袈裟斬りを放った。

しかし伯爵の身体へ当たる前に斬撃は見えない壁によって弾かれてしまった。

(ちっ…防御壁か!)

どうやら空間が開いた隙に発動されてしまったようだ。わずか数秒で斬撃を弾くほどの防御壁を生成するとは…さすがは伯爵、伊達に冥族最高位じゃないな。

俺は防御壁に弾かれた瞬間に後ろへ飛び、伯爵との距離を取った。

伯爵は俺が着地するのを見ていたがすでに攻撃のモーションに入っていたため、やむなくヴェルフレアを振り下ろざるをえなかった。

先程と同じ様に斬撃と爆撃による爆発が巻き起こるとリングの床は抉られ四散し、粉々になった破片が爆風に乗って空高く舞い上がった。

…この攻撃でリングがほとんど意味なくなったな。

まあデスマッチなのでリングアウトとかないしな。

俺はその様子を見ながら一点をじっと見つめていた。

その視線の先には驚いた表情をした伯爵の姿がいた。

「なんということだ…。」

伯爵はそう口ずさむとヴェルフレアを地面に刺し杖のように寄りかかった。

よく見るとわなわなと震えているようだ…なんで?

「わ、我が丹精込めたリングが…粉々に…」

「おい!自分で壊したじゃねぇか!」

「やりたくてやったんじゃない!勇者が受け止めないから悪いのだ!」

「いやいや、あんなの受けとめたら死ぬだろ!」

「でも勇者が悪い!…後で完成させようって楽しみにしてたのに…ううっ…」

「そんなん知るかっ!…って泣くなよ!?」

…マジ泣きしてるよこの人。さっきも思ったが一応最高位なんだよ…な?

リムもそうだが、冥竜種って結構子どもだな。

「…まあいいか。後で勇者を爆発させてから作り直そう。」

「さらっと怖い事いうなよ!」

俺の言葉を無視して開き直った(?)伯爵は、地面からヴェルフレアを抜き出し俺に向けるとすごい勢いで走ると今度はあっちから急激に距離を詰めてきた。

重装備を持ってるにもかかわらずあの速さ…魔技(レソナ)使ってるな。

くそっ、つくづく魔技(レソナ)ってなんでもありだな。

そんなことを考えながら俺は逃げずにその場で剣を構えた。

あの攻撃力を見ると迎撃するのは無謀な行為だが…俺はあえてこの選択をした。

「リングの恨みだ!」

伯爵は間合いに入るとヴェルフレアを大きく振りかぶった。

「そういわれるとなんか呪われそうだな!」

俺はそれを確認すると地面を大きく蹴り、数メートル上空へと飛び上がった。

それを見て伯爵は口先を緩めると、忽然とその場から姿を消した。

「なっ!」

驚くのも束の間、直後に伯爵は俺の背後に現れ、そのまま豪快にヴェルフレアを振り下ろした。

「…っ!瞬間移動はずるいぞ!」

俺は大きく叫ぶと振り向きながらヴェルフレアの側面に蹴りを加えた。

これによりなんとか軌道をずらすことに成功し、斬撃は俺の体に当たる手前を通過した。

その際にYシャツの端に焦げ跡がついた…あっぶねぇ!

「初撃をかわしたか…なら、これはどうかな?」

挑発するような言葉を俺にぶつけると、ヴェルフレアを突き出すように構えた。

すると今度は空中から落下するとヴェルフレアが再び赤く光った。

そしてそのまま縦横無尽にヴェルフレアを振るい、俺の頭上から斬撃の雨を降らせた。

大剣にもかかわらずその斬撃は速く鋭い。しかも俺は落下しているため避ける範囲に限りがある。

俺は先程と同じようにヴェルフレアを蹴ろうとしたが途中で断念した。

おそらく触れたら足がなくなる。そう思わせるのに十分すぎるほどの熱量を感じたからだ。

唐突に理解した…この攻撃はさっきとは比べ物にならないと。

「こうなったら一か八か…」

おそらく斬撃を完全に止めてしまえばその衝撃で大爆発が起こるだろう。

それを伯爵は狙っているに違いない…この怒涛の攻撃を見れば明らかだ。

回避することはまず不可能…あとは剣で応戦するしかない。

しかし相手の得物は大剣、一撃一撃が重い。片手で対応すればいずれ体勢を崩され致命傷を与えられてしまうだろう…ならば、

「…蒼月流、剣舞『清流(せいりゅう)』」

俺はそう静かに言い放つと剣を両手に構え直した。

両手で行う蒼月流は右肩を壊して以来だ…かなり不安だがやるしかない。

俺は覚悟を決め、斬撃の嵐を迎え撃つ。

伯爵の手から放たれた一撃を限界まで引き付けて直撃する手前で自分の剣を横から軽く力を加えた。こうすることで斬撃の目標を自然に少しだけ逸らすことができる。

そのまま斬撃を回避し続けたが、今のところ大爆発は起こらずに上手くかわすことができている。

その様子に伯爵は焦りの色が見えたが、俺は表情をかえずに淡々と全てを受け流していた。

そして地獄のように長く感じた数秒を何とか防ぎ、ようやく地面に着地することに成功した。

しかし俺は一足先に着地すると伯爵のほうを見ず、その場から全力で逃げ出した。

理由は簡単だ。ものの数秒も合間をおかずに伯爵も着地するからだ…しかも輝くヴェルフレアを先頭に。

まあ…爆弾が降ってくるようなものだ。そりゃ逃げるだろ!

予想通り伯爵が地面に降り立った瞬間、割れるような轟音が鳴り響いた。

周囲は発生した衝撃波で激しく震え、リングから離れた場所にあった建物のガラスが次々に割れていった。

またこれによってリングは跡形もなく壊れ、その破片が四方八方に飛び散った。

さらに凄いのはその中心部だ。

まるでマグマが吹き上がったのように赤く燃える土砂が数メートル上空まで飛んでいる。

それらが隕石のように降り注ぐ…これが魔技(レソナ)を帯びたヴェルフレアの威力か…すごい、テレビ以外でこんなの初めて見たな。

…そんな感想が出てくるほど俺、この状況に慣れてきたみたいだ。

なんかすごく嫌だな。

俺は破片と隕石を剣で弾きながらそんな事を考えながら様子を窺っていた。

やがて変形した地形の中から伯爵の姿が見えた。

でも、なんだか様子が変だ。

なんとなくだが身体がふらついているように見える。

俺は構えは解かず警戒をしながらゆっくりと伯爵に近づいた。

「ごほっ、ごほ…やるな勇者。想像以上の威力だったぞ…」

「自爆かよっ!」

…どうやら自分自身で防御しきれなかったらしい。

よく見ると吸血鬼のようなマントが焦げ、ところどころ服に焦げた穴が開いている。

え~っと…前々から思ってたけど、バカなのかこいつ?

なんか警戒したのが恥ずかしく思えてきたぞ。

「はぁ…。なんで自分を防御しなかったんだよ…?」

伯爵の姿を見ながら放った自分自身のつぶやきに違和感を覚えた。

口元に手を置き少し考えると、あることに気づいた。

「なるほど……っそうか!」

俺の中にある仮説が生まれた。

これはフィジレスや伯爵、それに他のみんなにも当てはまる。

この考えが本当なら…うまく利用すれば勝てるかもしれない。

正直、この状況で勝つには右肩を壊すくらいに全力でいかないと駄目かと思ったが…。

(…いずれにせよもう厳しいな)

この戦いですでに右肩は限界に近い。

思いのほか攻撃は重く、一撃一撃受け流すたびに右肩が悲鳴をあげていた。

それに数日間寝ていたとはいえ痛みが引いていない状態で両手での清流(せいりゅう)は無茶だったようだ。

それに伯爵との戦闘が始まってから結構な時間が経過している。流星(スターダスト)を回避するには余り時間が残っていない。

「そろそろ作戦開始しないとまずいな。」

俺は再びネックレスを左手に握り胸の中心に置き、目をつぶって胸を二回叩くとゆっくりと目を開けた。

「…さあ、準備はいいか?そろそろ本番いくぜ!」

俺は疲労困憊の身体に鞭をうって、地面を蹴った。

―ええ。

俺の耳にはどこかで守ってあげたい女性の声が聞こえたような気がした。


色々ありまして前回の投稿からかなり間があいてしまいました。

本当に申し訳ございません。

内容は実際、前話に乗っける予定でしたが致命的な間違いをしてほぼ全部書き直しました。ほとんど均衡状態で終わってしまいました…

次回はとうとう反撃に出ます。ここは一気に書き上げます。

少しお時間がかかりますが

次回の投稿からはあまり間を空けずに投稿することが出来ると思います。

確定次第こちらにご報告いたします!


8/7 2:00追記

お待たせいたしました!次話が完成しましたので報告いたします。

8/7 21:00に投稿いたしますのでよろしくお願いいたします!

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