~25.チートが更にパワーアップしちゃだめだろ!?~
7/8追記
急遽入院することになり、次回の投稿を延期いたします。
数日程度なので今週末(13日あたり)には再開できるかと思います。
私事で大変ご迷惑おかけして申し訳ございません。もうしばらくお待ちください。
7/12追記
退院はできました。ー応長時間執筆は出来ないので次回の投稿は連休明けの7/16 21:00を目標に頑張っていきます !!
7/20追記
次回の投稿は7/2021:00を予定していましたが、内容に矛盾が発生したので大幅に修正いたします。その為、次回は7/22 21:00に変更いたします。ふたたびお待たせして申し訳ございません。もう少しだけおまちください。
「運がよかっただけだぁぁぁ!」
伯爵の質問を投げられた俺は同じように大きな声で堂々と答えを叫んだ。
「…はっ?」
その発言に思いもよらなかったのか、伯爵は唖然とした表情で間抜けな声を出した。
…失礼な。ちゃんと答えたのに。
「だから運がよかっただけだって!偶然文化祭のときにリングにあがったことがあって、この目でその構造を見ていたから助かっただけだ。」
「ブンカサイ?なんだそれは。」
「あっ、そうかこっちの人って文化祭って知らないか…」
「う~む…はっ!分火砕…火を砕き分解する魔技か!…くっ、冥族対策の魔技か!」
「あほかっ!なんつう奇跡的な間違え方してんだよ!」
「違うのか?自信があったのだが…」
「全然違うわ!むしろそんな都合のいい間違いがあったことに驚きだよ!」
そんな間違いを導き出すとはある意味伯爵すごいな…というか、よく考えたら説明する必要ないんじゃないか?
それに気づいた俺は説明しないで戦闘を再開しようと思ったのだが、伯爵は腕を組んだままま真剣に悩んでいる。さすがにその状況で攻撃するのはフェアじゃないな。
仕方ない、説明するか。なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情けってどこかの悪役も言ってたことだし。
「まあ、文化祭はいいとして…俺は火球が直撃する直前にリングの特長を利用して逃げたのさ。」
「リングの構造?」
「そう。特にここのね。」
俺はそう言うとリングの床を足で二回踏み音を鳴らした。
「床…?」
「俺はこの床下から脱出したんだ。」
通常リングの構造は四方を支柱で支えられ、床は厚みのある木材に緩衝材などを重ねたものが利用されている。さらに衝撃を和らげるため床自身がしなるようにできている…つまり床下には空洞になっている、ということだ。
俺はそのことを思い出し、とっさに斬撃を前方の火球ではなく床に向け放った。力を溜めていただけあって一撃で見事に床を破壊することに成功した。
すぐに床下へ降りると予想していた通りなにもない空間があった。俺は体勢を低くして走り、なんとか衝突前にその場を離れ今に至る。
「と、とっさにそんな事を考えていたとは…」
「いや、本当に運がよかっただけだって。」
リングが俺の世界と同じ構造をしていたことで移動が出来たことや、火球が俺に向かって飛んできたため爆破範囲が狭まったことでもあり比較的短距離で逃げきることができた。
それに斬撃の衝撃によって火球の速度が衰え、ほんの少しだけ時間を稼ぐことができたのは本当に偶然で俺にとって嬉しい誤算となった。そうでなければ身体の一部に火傷を負っていただろう。
「素晴らしい。さすが我が宿敵!」
伯爵は両手を叩いた。その表情からはこちらを劣情や皮肉なども感じられず、ただ単に俺を賞賛しているように感じられた。
「…一旦戦いに集中したいのだが。」
俺は一度胸に手を当ててから左手の剣を伯爵の前に構え直した。
「集中?ああ、第二ラウンドってことか。いいだろう!」
その様子をみて伯爵も手を叩くのをやめ、その手のひらを俺に向けた。するとその先端に向けて光が次々に集まっていく。始源を溜めて火球を放つつもり…いや光が横長に広がっている。何かを練成しているのだろう。
やがてその光が拡散すると、そこには大きな武器が浮かんでいた。…これは、剣?
そうだとしても随分と大きい…全長で大人の背丈ほどはあるだろう。
それを伯爵は片手で持ち、その場で左右に鋭い袈裟斬りを放った。そこから巻き起こった熱い風圧からはその武器の重量感が伝わってきた。
…あんなのと対峙したら間違いなくやられるぞ。
それは俺の身体も、手にする武器も一緒である。
こっちの剣とあっちの大剣でぶつかったらそのうち折れてしまうだろう。なら…
「これが我の魔武具…ヴェルフレア。」
「悪いが集中するぞ。」
「この炎から生み出された造形美…まさに神業…って!」
伯爵が魔武具の説明を終える前に、俺は伯爵に斬りかかった。
予想外だったのかとっさに大剣ヴェルフレアを横に構え、楯のようにして攻撃を防いだ。
俺はそれに構わずに連続して斬撃を繰り出す。
そのあまりの速さに大剣だけでは防ぎきれないと判断したのか、すぐに防御壁を展開させた。
それを確認した瞬間に、重い一撃を放ち、防御壁を衝突した反動を生かして、後方へと飛び退いた。
「最後まで話を聞かないのは無礼だぞ!」
「独り言に付き合っているほど暇じゃないんだ。」
「独り言だと思われていたのか…ふふふ。軽くショックだよ…」
伯爵はヴェルフレアを杖にしながら下を向いて凹んでいた。
…なんだろう、この罪悪感は。せめて立ち直るまで攻撃はやめておこう。
その後二~三分くらい経ったろうか。伯爵は立ち直ったのかゆっくりと顔をおこした…思ったよりも傷ついていたらしい。
「…我の話を聞かないものは許さん!」
よほど腹が立ったらしく、叫びながら一気に間合いをつめるとヴェルフレアを振り下ろしてきた。俺はそれを迎撃しようと剣で斬りあげようと下段に構える。
(…まずい!)
まさに斬撃を繰り出そうとしたとき、俺の心の中で警鐘音が鳴った。
直感に近いものだったが、それに従い斬撃を繰り出すのをやめその場から思いっきり横へ飛んだ。
…結果的にそれは正解だった。
ドオオォォォォン!
激しい爆発音が鳴り響く。
周囲には熱風が巻き起こり、黒煙と火の粉が周りに吹き荒れた。
やがてそれらが薄れるととともに、その場を見ると戦慄した。
…俺の居た床が消し飛んでいたからだ。
しかも先程の跡、大量の火球がぶつかった跡よりも大きい。
あの一撃にどれだけの威力があるんだよ!
いや、ほんと…直感に従ってよかった。あんなのとぶつかったら剣はおろか俺まで爆発の餌食になってたな。
「避けるなよ勇者。」
「いや、あんなの避けるだろ!」
…無茶言うなよ伯爵。
「話を聞かないのが悪い!」
「話ってその武器のか?」
「そうだ!我のヴェルフレアは相手に斬撃と爆撃を同時に与える。たとえ防御してもその爆撃によって相手を破壊する至高の武器なのだ!」
「話聞いてたらなおさら避けるわ!」
「一度お試しあれ!」
「誰が試すか!なんで相手の攻撃にわざと当たるわけないだろ!」
「…ちっ、我の巧みな話術に引っかからないとは…なかなか頭がいいようだ。」
「全然巧みじゃないからな?バレバレだからな?」
冥族の代表に非常に失礼だけど、こいつ…アホなのか?
しかし…この大剣ヴェルフレアは厄介だ。
あの大剣から繰り出される斬撃の威力は凄まじい。おそらく楯などで防御してもそれらを破壊してしまうだろう。
さらにヴェルフレアは斬撃と同時に爆発を巻き起こすことができる。その威力が合わされば、地形が変わるほどの威力を生み出す。
ヴェルフレアを防御したら自殺行為だ…直感にしたがってよかった。
しかもこの爆撃が大剣の隙を埋めている。
通常、大剣などの大型の得物はその長さと重さの影響で、連続攻撃には向かず一撃一撃に隙が生じる。威力と引き換えに速さを犠牲にしているのだ。
しかしヴェルフレアの場合、爆撃によって繰り出された熱風により近づけないし、黒煙によって視界が悪化する。
なんとかそれを振り切る頃には次撃が待ち構えている。そのためまったく隙を狙えない。
攻撃と防御を一度に行ない、他を寄せ付けないほどの存在感…まさに戦車だ。
…まあ見た目とはまったく違うけど。
そんな得物を伯爵は易々と片手で振っている…って片手でかよ!
なんという力だ…正直どう戦っていいか想像がつかない。というか帰っていいですか?
気持ち的には最初のダンジョンでドラゴンに遭ったような感じだ…こっちは木の棒とか、調理器具の蓋しかもってないのによ…
「まったく…こんな相手になんつう注文してくれてんだ…」
俺は破壊された床を見ながら大きく「はぁ~」とため息を吐いた。
あんな相手にダメージを与えるのは容易じゃないことは明白だ。
…とはいえ方法がないわけではない。
「よし、やるか。」
俺は剣を正面に持っていくと両手で剣を持った。正眼と呼ばれる剣術の基本的な構えである。
「む…。本気というわけか。」
その姿を見た伯爵からは笑みが消え、ヴェルフレアを肩に担ぐように構えた。
なるほど、臨戦態勢ということか。
どうやら伯爵の戦闘能力は俺の想像を遥かに越えているようだ。
正直に魔技対剣の構図を想像していたが、検討違いだった。
こんなにワクワクしたのはいつ以来だろう。
一対一の真剣勝負。しかも相手は相当の実力者。
一時は忘れようとした感覚が沸き起こる。
「…よしっ」
ごめん、ウィン。一度集中するぞ。
俺は一旦全てを忘れて、目の前の敵を倒すことだけに集中することにした。
「第二ラウンド…いくぞ!」
そういうと今度は俺から伯爵に向かって走った。




