~24.消防車さん、火元はこちらです!~
仕事の関係で投稿日が変わりました。
7/2の21:00確定になりました。
遅くなりまして申し訳ございません。
もう少しお待ちくださいm(__)m
「ふむ…たいしたものだ。」
面白そうに伯爵は笑みを浮かべてこちらを見ている。
今はその両手の先には二つずつ、合計で四つの火球が空中に留まっている。
先程から火球の量が増えていき今では大きさが異なる火球まで出てきている」。
しかも操る火球は意思があるかのように自由に動き回り、なかなか動きを捉えられない。
突破口を開こうにもなかなか隙が見つからない…マジでどうしよう…。
「今度はこれで、どうだ!」
伯爵が叫ぶと、四つの火球が俺を目指してリングの中を縦横無尽に走り出す。
しかし俺は近づいても剣を振ろうとはせず、構えたまま機会を窺う。
(くそっ、蠅みたいな動きしやがって…)
勢いにまかせて剣を振るってもこちらを嘲笑うかのように避けるだろう。それは三つのときに経験済だ。まさに広告を丸めた棒を持って待ち構えてるときと同じだ。
ちきしょう。殺虫スプレーみたいなのがあればいいのに…。
俺は伯爵の姿を警戒しながら、周囲の火球を目で追っていく。
やがて不規則ながらも全てが射程内に収まる瞬間を見定め、自ら火球へと飛び込んだ。
「剣舞『吹雪』」
俺の剣から放たれた連続斬りが確実に火球を捉えていき、四つすべての火球を一瞬にして爆発させた。
「剣舞『疾風』」
飛び込んだ勢いのまま連続で剣舞を放ち、下段からの斬撃が伯爵の体を捉えた。
すると伯爵の体は真っ二つに切断され、斬り口から燃え始めると瞬く間に炎に包まれた。
その炎は強く一瞬にして体は燃え尽き、残ったのはわずかな火の粉だけになった。
「俺の…勝ちだ!」
俺は勝利を高々に宣言した。
…心の中でだけどね!
当然そんなあっけなく終わるわけがない。
もちろん消滅したはずの伯爵は俺の目の前にいる。
どうやら伯爵は炎で自分のダミーを作り出しわざと斬らせ疾風を消化させ、自身はその隙に後方へ飛び退いて難を逃れたのだ。
俺はその様子を剣に残った火の粉を軽く振り払いながら伯爵をにらみつけるように見ていた。
「まさか我の火球をいとも簡単に…しかも魔技を一切使わずに斬り伏せるとは…信じられん。」
伯爵は信じられないといった様子で声をあげた。
戦闘が始まってから少し経つがその間、伯爵はあらゆる角度から連続して火球を繰り出している。
だが、どれも俺にはかすりもせず先程同様にすべて斬り捨てられているのだ。驚くのも無理はないだろう。
しかし、その言葉とは裏腹にどこか余裕を感じさせる表情をしている。
「…伊達に勇者を名乗ってないんでね。何度やっても無駄だ。」
俺は顔色一つ変えず冷静な口調で言葉を返した…が、内心ではまったく逆のことを思っていた。
(うわぁ…マジで辛いな。気を抜けば斬り損じるぞ)
以前フィジレスが放った火球は威力も熱量も正直それほど高くなかった。だからこそ斬撃を当てるだけでなんなく斬ることができた。
しかし伯爵の放つ火球はそれとは比較にならないほどの威力だ。それを斬るには火球の中心にある核となる部分を正確にヒットさせなければならない。これはかなりの集中力が必要だ。
さらにそれが俺に向かって次々とあらゆる角度から複数飛んでくる。そんな状態でしかも連続して核を捉えなければならない…それに加えてもう一つ理由があり、まったく気を抜けない。
これで初級の魔技かよ…その後があるって考えたくない。
こ、これはもうチート…いや鬼畜といえるだろう。
「一緒かどうか…これを喰らうがよい!」
自信を持ってそう叫ぶと伯爵は加速して俺に向かってきた。
相手が飛び込んできてくれたおかげで俺との距離がどんどん埋まっていく。
俺は左肩を前にし、腰を低くして座るような構えをとった。その構えは居合いと一緒だ。
ここから繰り出される斬撃…居合い抜きと呼ばれるものは剣術の中で最速の斬撃といっても過言ではない。
とはいえ鞘がなく利き腕ではないため昔と比べると速度はかなり落ちる。
しかしその部分を補えるだけの身体能力があるので確実に相手を捉えられるはずだ。
(向かってくる間に十分力は蓄えられた…この一撃で一気に終わらせる!)
俺は渾身の一撃を放つモーションにはいった。
しかし俺と伯爵が交錯する刹那、伯爵の顔を見て俺は凍りついた。
(笑っている…?まさか嵌められた!)
その瞬間、背後から近づくチリチリと肌を焦がすような嫌な気配に気がついた。
…いや、これは気配ではない。文字通り肌を焦がすほどの熱量を持った火球が襲ってきている!それも一つじゃない。
…やられた。今までの火球は全て伯爵の手から放たれていた。その所為で火球は手からしか生まれないと誤解してしまった。その所為で伯爵の姿のみに集中してしまっていた。
それに先程までの連続攻撃で周囲の温度が上がっている。その所為で温度による察知が遅れてしまった。
それに気づいた俺はつい焦った表情が顔に出てしまった。
「これで終わりだな!」
伯爵はそれを確認すると自分の両手に手にある火球も投げつけた。
前方から二つ、後方からも複数…おそらく着弾は同時。
対して俺はすでに攻撃のモーションに入っている。これでは前方の火球だけしか対処できない…絶対絶命だ。
「…ちっ!またかよ!」
とっさに斬る対象を変えて渾身の一撃を与える。それによって突風が巻き起こるが火球は少し揺らいでスピードが多少落ちる程度で影響はほとんどなかった。
…次の瞬間、俺のいる場所は激しい炎を包まれ、激しい音とともに爆発した。
「…終わった…か。」
黒い煙が舞うリングを見つめながら我は言葉を発した。
勇者に向けて放った火球は十発。しかも全方位を火球で埋め尽くした。
回避することはまず不可能。勇者は跡形も無く消滅し、あの煙の一部となっているだろう。
「・・・。」
しかし天敵である勇者を葬ったにも関わらず、自分の表情に笑顔はなく無言のままその様子を見つめている。
次第に煙は薄れていき、その光景が鮮明になっていく。
勇者のいた場所…リングの中央部分にはクレーターがいつくもできていた。
この光景が火球の威力を物語っている。
我は魔技で自身の身体を浮上させ、クレーターの元へと移動した。
大体一メートルほどのクレーターが重なるようにできている。
上から見ている限りでは勇者が身に着けていたものなどは見当たらない…やはり消滅してしまったか。
(…後は破滅に向かうだけ…か)
我は上に聞こえないようにため息まじりにつぶやいた。
その後も伯爵は注意深くクレーターの周囲を観察し続けた。
世界に対してああ放送したため、せめて勇者が死んだ証拠でも持って帰らなければならない。
それをしなければ誰も納得しないだろう…特にあいつには。
しかし肝心の証拠はまったく見つからない。あるのはリングの破片と岩くらいだ。
困ってしまったと頭を抱えていると、不意にあるものが目に入った。
クレーターの端に線で書かれたような跡がある。あれはなんだ?
気になった我はその場所へ降下し、至近距離でその跡を見た。
見るとそれは地面に線を書いたような小さな跡だった。しかし不可解なことがある。
球体の火球が衝突した場合は円状にクレーターができるはずだ。
こんな地面に線を書いたようなものができるとは思えない。
では元からそんなものがあったのだろうか?
…いや、それこそありえない。
そもそもこのリングは都市部の中心に作ったものだ。地面は当然舗装されている。
前からあったのならその部分に舗装した材料が入り、跡は完全に埋められているだろう。
そのためこれはクレーターと同じときに出来たものだろう…まさか!
「勝手に終わらすなよ。」
その言葉が聞こえるのと同時に鋭い斬撃が飛び込んできた。
とっさに右手で防御壁を張ったが、抑えられそうにない。
とっさに防御壁を解除、残った左手で火球をつくり放ったところで相手は飛び退いた。
その先には心のどこかで期待していた者の姿が立っていた。
なぜか笑顔でこちらを見ている相手につられて、自然に我の顔もほころびかけたがなんとか自重した。
「どうして、生きている……勇者!」
言葉とは裏腹に喜びを隠し切れない我は、相手…勇者に対して叫んだ。
いつも読んで頂きありがとうございます
次回の投稿は7/2 21:00に投稿いたします。
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