~20.俺はこの猫…こほん、この竜に勝てる気がしない~
申し訳ございません。
21:00→22:00に変更いたします。
確定といいながらの変更本当にごめんなさい
もう二度しません。
「わ~い!」
俺がドアを閉めて振り向くとリムはすでにベッドへダイブしていた。そしていつの間にか人の枕を胸に抱いてゴロゴロし始めた…おまえはガキか。
とりあえずこれはよろしくない…先程から動くたびに下着やおへそなどがちらちらと見える。
美少女なリムの無防備な姿に俺の頬が赤くなり、鼓動が早くなっているのを感じる。
なるべく見ないようにしているが…まあ男だもの。多少は仕方ない。
「…っほら、話をしに来たんじゃないのか?」
俺は理性を導入してリムの頭にポンと手を置き、ゴロゴロしているのを止めた。
「む~、止めるな~……ふぁ~♪」
リムはちょっと不機嫌そうな声をあげたが、そのまま頭を優しく撫でるとすぐに表情が柔らかくなった。そして気持ちよさそうに目を細めた。
…くそっ。小動物になりやがって…可愛いじゃないか!
完全にやられた俺はそのまま優しく撫で続けることになった。
「あのね…」
しばらくしてリムの口から小さな声が発せられた。
それを聞いた俺は撫でていた手を離し、椅子を持ってくるとリムと向き合うように座った。
しかし次の言葉は続かず、二人の間には沈黙が流れた。
リムは上目遣いで俺の方を見て何か言おうとするが、口でごにょごにょ言いながら何も言えずに視線を下に落とす…さっきからこの動作を繰り返している。
なにか伝えたいことがあるのだろうか。
「えっとえっと…トウってこの世界じゃない所から来たんだよね?」
「…ああ。」
「それってここと違う?」
なんかリムが言いたかったことと違うような気がする…まあいいか。
「そうだなぁ…建物も、着ている服も、他にも色々とあってぜんぜん違うな。一番違うのは俺の世界には源炉がないんだ。だから魔技が使えないんだ。」
「そうなんだ!じゃあ生活するのすっごく大変だね。」
「そうでもないよ。俺の世界には源炉がない代わりに他のものが発展していったんだ。電話も出来るし、瞬間移動ほどじゃないけど速く移動は出来るし…」
「ああそっか!だからトウもあんなに速く動けて強いんだね!」
「え~っと…それはちょっと…ま、まあそうかもしれないな。」
剣術はともかく、もし俺の世界からここにきたのなら普通の人間より格段に速く動けるだろう。そう思った俺はリムに言ったことを特に否定しなかった。
「そうなんだぁ~。じゃあトウはどんなところに住んでたの?」
「んっと、俺の住んでるところは…」
こうして俺はリムの質問に答える形で話を続け、夜はどんどん更けていった。
そして一時間くらい経っただろうか。
ウィンの部屋から出た時間から考えると…今は夜中くらいだろうか。
リムが先程からあくびをしながら目をこすっているところを見ると一般的に寝る時間なんだろうな。
「リム眠そうだな。そろそろお開きにしないか?」
「まだ大丈夫だよ!全然眠くないし!」
うそつけ!……と言おうとしたが、リムが見たこともない寂しそうな表情を見たら、とても口に出すことはできなかった。
なんだろう…リムが言いたいことが分かった気がする。それも俺にとって大変な苦行になりそうな方向で。
「えっと、う~んと…」
その間にもリムは必死で質問を考えている。やっぱり予想は当たっているだろうな。
「…もしかして一人でいたくない?」
「はうっ!」
ぼそっと言った声が聞こえたのか、ポンッという音が鳴るくらいリムは瞬時に顔が赤くなって目を閉じた。ああ、やっぱりか。
「…あたりだな?」
「お、大あたりだよぉ~…。」
リムはそれを認めると、恥ずかしいのか手にしていた枕に顔をうずめてしまった。
「昨日まではどうしてたんだ?」
「ウィンちゃんとずっと一緒にいたんだよ。でも…」
「そうか。今日から俺を護衛するフリをしているから一人になるのか。」
「…うん。」
リムはいつもの明るさから想像できないほど弱々しい声で頷いた。
…そんな姿見ちゃったら、仕方ないよな。
「いいよ。」
「へっ?」
「一人でいたくないんだろ?なら今日はここで寝ていいよ。」
そういって俺は立ち上がり、自分のバッグの中から読みかけの教本を取り出した。そしてまた椅子に戻って読み始めた。
横でリムがぽかんと口を開けて俺を見ているが、特に気にしないようにした。
「えっ、なんで?どうして?」
「なんでって…眠いんだろ?おやすみ。」
「う、うん。おやすみ…」
俺は一度リムに笑顔を向けると部屋全体の明かりを消し、脇にあるスタンド型の小さいランプに明かりを灯した。俺はその明かりを頼りに教本を読み始めた。
「ふむ、相手の勢いを利用しつつ攻撃か…実に面白い。」
俺は眉間に人差し指を置き、まるで某物理学者のようなポーズを取った…まあ勉強なんてからっきしだけどな。
それにしても教本って色々役に立つなぁ…本当に実践で使うとは夢にも思わなかったが。
(こりゃ部活帰りにこの世界に来たのは、ある意味運がよかったかもしれないな)
そんなことを思いつつ俺は再び本に視線を落とした。
読んでいる途中に横目でリムの方を見たが、横になって布団を頭までかぶっていた。どうやら眠れたようだ、よかった。
そのまま俺は眠気が訪れるまで読書をすることにした。
自分で容認したとはいえ、横で美少女が寝ているこの状況で俺眠くなるかな…
そんな嫌な予感から逃げるように俺は本の世界へと入っていった。
さらに数十分くらいは経っただろう。俺はすっかり教本に夢中になっていた。
(あっ!これなら肩に負担かけずに力入れて斬りつけられるな!)
――くいっ。
(んっ?でも方法だと…連続攻撃には不向きだな。やはり火球は斬った方が効率がよさそうだ)
――くいくいっ。
(いやぁ本当に勉強になるなこれ。実践中心なんて教本でそうそうないんじゃないか?)
――くいくいくいっ!
(…やっぱり気づいてないフリは無理…だよな)
実は先程から視線やら色々感じていたのだが…とうとう実力行使できたか。
俺の究極逃避技『アエテ・スルー』もどうやら限界のようだ。
俺は教本を閉じ、先程から引っ張られている左手の袖に目をやった。
するとリムは布団の中から半分顔を隠しながらも大きな瞳が俺をずっと見つめている。
ああ、これはとっても嫌な予感だ。
「どうした、眠くないのか?」
そう聞くとリムは小さく横に振った。
「それとも灯りがまぶしかったか?」
そう聞いてもリムは同じ様に横に振った。
「…もしかして一緒に寝ろ、と?」
そう聞いたらリムは縦に頷いた。
ですよね~…。実際気づきたくなくて逃げてたんですけどね。
「いやぁ、それはまずいんじゃないか?こ、こう男女的に…そうだ!俺、横のソファで寝るから。それなら近いから大丈夫だって。」
俺はなんとかして逃げるべく妥協案|(?)を考えた。しかし…
「一緒のベッドじゃ、だめ…かな?」
「…はい、わかりました。」
OH!ギャップ、ズルイデスヨ!
俺は心の中でなぜかカタコトで叫んだ。
卑怯な!こんな風に言われたらもう断ることなんて出来ないだろ。
というかこの状況で美少女に甘えられて断れる男子が居たら是非教えてください!
(落ち着くんだ俺、幼少時代を思い出せ…ほら、妹と一緒に寝てたじゃん。そのイメージでいけるって!)
なんとか落ち着こうと自分の中で色々言い聞かせようとした。
しかし相手はリム。言動と行動からは幼さが感じられるが身体は小柄と年頃の女性である。胸もそれなりあるし、腰もくびれている。肌も綺麗だし…まあ意識しないわけがない。
それでも一緒に寝るしかないよな…明日は寝不足決定だな。
「し、失礼します…」
俺は高鳴る心臓を必死で抑えながら、布団の中へ入りベッドの端へ移動した。
いざ入ってみると目は閉じているから照れることもない。ちょっと温かくてなんかいい匂いがするだけだ。次第に鼓動も安定してきたしこれなら大丈夫。あとはこっちが先に寝れれば…いける!
………って思っていた時期がありました。
気が付けば俺の左腕は完全に身動きが取れない状況になっていた。
もっと簡単に言えばリムが左腕にぎゅっと抱きついているのだ。
必要以上に密着しているので女の子特有のやわらかさやぬくもりを感じる。
当然胸も当たっているのだが、その感触に喜ぶ余裕もなかった…本当に残念だ。
「リ、リリリリム?」
動揺が隠せない俺は、盛大に声をつまらせながらリムの名前を口にした。
しかしリムは強く抱きついたままこちらを向こうとしない。
この状況では寝ることはできない、絶対にできない。
とりあえず一旦放そうとそっと腕を持ち上げたのだが、その手を俺は止めた。
なぜなら彼女はあまりに必死で、震えていて…すごく辛そうだったから、振りほどくなんて俺にはできなかった。
(大変だったんだな)
その姿を見て、俺はなんとなくリムの気持ちが見えた気がする。
リムはずっとフィジレスから逃げるような生活を送ってきた。
どんなときでも気を緩めることができずいつも恐怖と隣り合わせだ。
そのことはリムの説明からもひしひしと伝わってきた。
しかもリムは冥竜種と呼ばれる最上位に位置する。
それがどういう意味か俺にはよくは分からない。でもあんなにも民を思い勇敢に立ち向かうウィンの姿を見ると生半可なことじゃないことがよく分かる。
きっとリムもずっとずっと恐怖を我慢して持ち前の明るさでみんなを励ましていたのだろう。
同じ状況で俺はそんなことできるだろうか…多分無理だ。
そしてなんとか助けてもらえたが、他の種族からは迫害され殲滅まで容認される始末…
身内からも他種族からもどこからでも恐怖は消えることは無いだろう。
リムはここで保護されてからもずっと怖い思いをしてきたのだろう。
まったくウィンといいリムといい…自分で背負いすぎなんだよ。
「ふぇ?ト、トウ?」
気が付いたら俺は抱きつかれた左腕でリムの手を握っていた。
その様子におもわずリムは声をあげ目をパチパチしている。
「俺にはどれだけ辛いのかよく分からないけど…今日は俺がずっとそばに居るから大丈夫だ。…だから安心して寝ていいぞ。」
俺はなるべく優しい声でリムにそう言うと、強く手を握った。
俺がそばにいるって証明するように、でもか弱い彼女が壊れないような強さで。
「トウ~…ありがとう…」
感謝を口にした彼女の声はかすかに震え、瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
そして俺の手を強く握り返すと、安心したのか少しすると横から小さな寝息が聞こえてきた。
「…おやすみ、リム。いい夢を見るんだぞ。」
俺はそう願いをこめて軽く頭を撫でた。するとリムの表情がこころなしか嬉しそうに見える。
俺はそれを見て安心してリムから天井へと視線を移した。
…さあ、事態は深刻になったぞ。
抱きつかれたままなのは仕方ないけど、まさか手を握った状態で眠ってしまう思わなかった。
しかもさっきからちょこちょこ腕に頬ずりをして甘えてくる。
…こんなんどうやって寝たらいいんだよ!
そんな叫びも空しく、緊張している俺にようやく眠気が襲ってきたのは空が白んできた頃であった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回は6/12 22:00確定です。
よろしくお願いします。
次回から展開が早くなります!




