ACT:15 あだ名を賜る、スズキタロウ!
今回は大分短め。
ちょっと息抜きです。
今回また一つお気に入りが増えてました。ありがとうございます。
地味かつ着実(?)に頑張ってます。やっと5000PVです。ありがとうございました!
これからもよろしくです。
昼休みを告げるチャイムが耳を打つ。
よし、やっと昼飯の時間だ。学業ほどおれに似合わぬものはない……。
学生の本分は勉強だと人は言う。だがそれはおれには当てはまらない。何故かって?
スズキタロウの本分は、存在を把握してもらうことだからさ!
……言ってて悲しくなる、鈴木です。こんにちは。
あのバカらしい「ターゲット・オブ・スズキタロウ」から既に一週間が経っている。あの後おれ達は弓奈たちによって星喰いに関するあれこれについて説明を求められ、サポートセンターエウロパ支部に連行されて大変だった。
主に、
『あんた、折角のサンプルを微塵も残さず処分するってそれでもプレイヤー!?』
『スズキです~』
『……微塵も残らないわよ?』
『おれ達が悪かった! だから〝サテライト〟だけはよせ!!』
というやり取りや、
『タロー、キミ達のアバターの強さが規格を逸脱しているのか、あの星喰いが何らかの理由で弱っていたために簡単に事が済んだのか、どっちだと思う?』
『あまりに格好よく決めすぎたと、正直思う……』
『……全裸になったのに? あぁ、ごめんなさい。人って精神の動物だって言ったわよね? 私、怒りのあまり今ならあなた達を星喰い以上に〝呆気ない人生〟にできるわ……』
『マジ、ごみん』
という会話、
『とにかく! 生態も明らかでない地球外生物は可能な限り欠損を出さないよう、サンプルとして回収するのはプレイヤーの基本でしょ? 一体これをどう責任取るの……』
『主に、弓奈とレイラが頑張って』
『少し、黙れ……』
『……すんまそん』
『そもそも過去の事例に比べて今回は異常だらけだったのよ? あの戦闘力の低さもあるし、かつての星喰いの情報自体は全惑星支部に行き渡ってるのよ?
なのにあんたたちがイベントで探索するまで誰もその音が星喰いの鳴き声だと気付かなかった』
『……どゆこと?』
『あぁ、ごめんなさい。馬鹿には難しかったわね』
『ば、馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞう!』
『……あんたたちにもわかるように言うとね。最近サポートセンターの内部も少しきな臭いわ。もしかしたら情報の隠蔽もあり得るのかもしれないの』
『はぁ? 派閥争いなんかやってんの、サポートセンター? あぁヤダヤダ。二年前に報酬を辞退しといてよかった』
『それほど簡単なら良かったんだけどね。もし今回の事件が誰かの思惑の末にある物なら、星喰いの存在を隠蔽するメリットがそいつにはあったということよ。分かる? かつて人が月を見捨てようと言い出し始める生き物を匿うのよ? この推測が正しければ思った以上に大変なことになるの』
『……つまり、おれ達が簡単に星喰いを討伐できたのも、何らかの理由があるだろうと?』
『それはさっきから言ってるでしょ? 私達が問題視しているのは、それが』
『人為的なものであった場合。あなた達地球人のアバターと言う最新技術や私達のような地球以外の太陽系惑星人の身体能力すら及ばない〝何か〟が存在する可能性がある』
『……あ、もういいっす。これ以上はパ~ス』
『いいえ、今回こそはあんたも参加してもらうから良く聞きなさい?
いい? 人為的だった場合、二種類考えられるわ。まず私達に隠蔽された技術だという可能性。それはまだいい。技術くらい今も発達してるし隠されているのなら探ればいい。
問題は未だ私達が遭遇していない知的生命体が関与している場合。まぁ人型とは限らないんだけど、暫定的にね?
で、開拓当初から僅かながら問題視されていた、『敵対性宇宙人問題』よ。敵対の意志があり、私達より進んだ技術、優れた身体能力、知識など、そんな諸々を備えた存在が居ないとは言い切れないほどに宇宙は広いんだから、当然の可能性』
『そんな事情もあったわけで今、あなた達を叱ってるの私達。貴重な情報の消失、どうもありがとう』
『いや~どういたし……嘘です! ごめんなさい! ってか、それなら先に言ってくれよ!?』
『だから、情報源の確保は基本でしょーが!!』
といった後に三時間強に及ぶ説教が続いたのさ。
今思い出してみても、面倒事の匂いしかしない。おれの人生にそこまで重いシリアスいらないよ?
しかも星喰い討伐で「これ個人認識キタ」とか思ってたのに、世の中そんなに甘くないということを思い知らされた。どういうことかと言うと、
「おーい、マッパマン」
「誰が、マッパだ! 名前で呼べ!」
「………………え? 何だっけ?」
「……泣くぞ……?」
と、クラスメイトとの会話があったり、
「おい」
「あ、あんたは〝霧ケ峰高校紳士の会〟会長!」
「お前たちに言いたいことがあってな……この通りだ。済まなかった」
「え、ちょ、頭上げろよ。こんなところで目立つだろ……」
「お前こそ俺の後を継ぐにふさわしい……変態と言う名の紳「ブッ殺!!」ぐはぁっ!?」
そんな会話をした。
ローやキタちゃん以外の人と会話をすること自体はいいんだ。でも何故名前で呼んでくれない!? あれか? いらりん☆レボリュ~ションがいけなかったのか?
とりあえず「鈴木 太郎」や「鈴北 楼」、「珠洲 喜太郎」という個人としての認識はされていなかったんだね。主に「マッパマン」、「全裸卿」などと認識されちゃった……あんまりじゃね、神様?
神「世の中はスズキタロウに優しくない。これ神界の常識。ハイ、此処テストに出ま~す」
そっすか。ホント、やるせないっす……。しかも女子の間では「スズキタロウ・トライアングル」と言う名のBLが普及し始める始末。曰く「小柄ながら引き締まった肉体に想像力含め色んなものが掻き立てられる」ということだった。〝発酵の美少女〟という新たな派閥が生まれることになるんだが、ここでは割愛しようと思う。精神衛生上良くない。
まだまだおれ達の悲願は遠いということか。
「おい、タロー。飯買いに行こうぜ」
「早く行かないと購買が行列で埋まっちまうよ」
「……あぁ、そうだな。行こう。星喰いについて考えている場合じゃないな」
おれがそう返し、昼飯を買いに行こうとすると今度は二人が立ち止まった。
「……? どうした? 行こうぜ」
「なぁ、タロー。お前はあれについてどう思ってんだ?」
「え?」
「だから、前のエウロパでのことだよ。今もそれ考えてたんだろ? 正直オレ達が証拠を完璧に消しちゃった可能性もあるしさ……」
ふむ。事が事だけに少しナーバスだね、キミ達? 仕方ない。少し肩の荷を降ろしてやろう。感謝しろよ?
「いいか、ロー、キタちゃん? あれはあくまで可能性であっておれ達に責任があると思うことは筋違いだぜ? そりゃあ深刻になるかもしれないけどさ? 所詮おれたちゃ高校生。なるようにしかならん。
それよりもさ、わくわくしねぇか?」
おれがそう言うと怪訝そうな顔でおれを見返してきた。おいおい、重症だなこりゃ。惑星開拓でわくわくすると言えば、
「〝未知〟の存在、おれたちもまだ見当もつかないような〝未知〟がある可能性がわかったんだぜ? もしかしたら太陽系だけじゃない、もっと遠くの惑星だっていつか――まぁアバターの脚だけど、歩く日が来るかもしれない、そう思うとおれは今回の〝ターゲット・オブ・スズキタロウ〟はいい刺激だった。おれ達、まだ皆を見返すチャンスがあるぜ?」
にやり、と笑う。今回のイベントでは不本意ながら「マッパマン」になってしまったが、まだまだおれ達の個人認識への道は途絶えても終わってもない。
そもそも、不名誉すぎて嫌だわ、こんなあだ名!
どうやら二人もいつもの様子に戻ったようで、不敵な表情を返してくる。
「確かに、まだ皆に名前で呼んでもらうことが果たされていないな……」
「それに新たな未確認生物か……いいね、折角魔王認定までになったんだ。行けるとこまで行くかね」
「そうそう。それに今回の件も捨てたもんばかりじゃなかっただろう? 羽場し……叶たちと仲良くなれたんだぜ? 正直おれ、もう一生分の運を使っちゃったのかと……」
「タロー、タロー! 最後の方、泣き言になってんぞ!」
「……まぁ今までのオレ達からしたら考えられんほどの進歩だしなぁ。でも男友達も出来なかったオレ達が、女子の友達を作れるなんて高校生活も幸先が良いんじゃねぇか」
「……甘い、甘いぞ。ロー君」
「なんだよ?」
貴様、自分の好みの人物にお近づきになれて、その程度で満足か!?
「タロー貴様……まさか……。それは俺達には過ぎた理想だぞ!」
「馬鹿野郎! 男なら……男なら期待したいだろぉぉぉぉ!?」
「な、泣くなよ……」
出せるなら、血涙を出したかったよ!
いいじゃんかよぅ、夢見ても。折角なら行けるとこまで行こうって、お前らも言ったじゃんかよぅ。おれだって年頃の男だよぅ。
「それはまぁ……親密になれるなら、なぁ?」
「でもさ、今思えば俺達結構いい印象持たれてるんじゃね?」
『うぬぼれるなよ!』
『うおっ!?』
教室中に響く大音声に、振り向くとクラスに入る男子が幽鬼のごとく立っている。いや、お前らもっとマシな状態になれんのか?
「今まで群体だったくせに、羽場下さんたちと仲良くなりやがって……」
「それすら許せないのに、いい印象だと!?」
「たとえ神が認めても、我らが認めん!」
神『いや、ワシも普通に認めんけど?』
神ぇ……。
「うるせぇ、個人の自由だよ! 人付き合いは」
「貴様ら〝全裸卿〟なんかに羽場下さんたちを任せられるか!」
「誰が〝全裸卿〟だ!」
不名誉すぎる!
「じゃあ、洋服脱いでマッパマン」
うるさいわ! 上手く言ったつもりか!? ちっとも上手くねぇよ! そのままじゃねぇか! 好きでマッパになったわけじゃない! ああいう設定にしたのは自分たちだから自己責任なんだけど……早急に設定を弄らねば。
クラスの男子たちと醜く言い争っていると廊下から別のクラスの男子が顔を覗かせた。
「おーい、なんか羽場下さんたちが屋上で先に待ってるってよ。確かに伝えたからな、〝変態と言う名の紳――へぶぅ!?」
『ソレだけは言わせねぇよ!?』
おれ達の神業的コントロールによる、黒板消し(いつの時代もこの文化はしぶとく生き残ってきたのだそうだ)が、そいつの顔に直撃した。
とにかく。折角お誘いが来たので、こんな場所さっさと去ることにしよう。
『待て! マッパマン!』
…………このあだ名、絶対に変えてみせる(泣)。
活躍自体も、活躍の後も微妙に残念、スズキタロウ。
ご意見・ご感想など頂けると嬉しいです。
また次回! そんなに間を開けないように気を付けたいです……が! 予定は未定。
頑張ります。




