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陶器の英雄  作者: 猫人鳥


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8 看病

「だったらお前は、俺が看病してって言ったら、してくれるのかよ?」


 俺のこの巫山戯た言葉に、美月は、


「私? うん、いいよ」


と、平然と返してきた。


「……は?」


 聞き間違いだと思った。

 だってそうだろ? 俺だぞ? 可燃ゴミだぞ?

 それなのに美月は、


「歩ける?」


なんて言って俺に手を差し出してくるんだ。

 小さくて華奢で、綺麗な手を……


「あ、あぁ……」


 その手をとってもいいのかと悩みつつとり、ゆっくりと立ち上がったが、ふらついてしまった。

 そんな情けない俺の背を、美月は支えてくれている。

 人に支えられただけで、こんなにも歩きやすくなるもんなのか……

 美月だから、なんだろうか……?


「家、こっち?」

「あぁ……」

「ここ?」

「……あぁ」


ガチャ……


 本当に家にまでついて来やがった。

 男の家に上がり込んでんだぞ?

 それも、自分を散々苦しめていた敵の男だ。

 ……俺の事をなんだと思ってんだ。


 でも、それが出来るのが美月なんだと、素直に納得できている自分もいた。

 あの岡島の事だって、許して優しくしてやっていたような、ヒーローなんだ。

 俺の事も助けてくれて……


「はい、寝てね」

「おう……」

「薬は飲んだ?」

「コンビニで飲んだ……」

「ちゃんと何か食べた?」

「そのカップ麺……さっき食べた」

「そう。薬は水で飲んだ方がいいよ、今度からはそうしてね」

「……分かった」


 雑にベッドに倒れた俺に布団をかけ直し、棒アイスを俺の顔の側に置いたりしながら、かいがいしく世話をしてくれている。

 ベッドサイドに体温計と風邪薬を置き、出しっ放しだったゴミも片付けてくれているみたいだ……


「……お前さ、なんでそんな優しいの?」

「え?」

「……俺だぞ? ありえなくね?」

「病人に優しくするのは、当たり前じゃない?」

「……は、ははっ……そうだな、当たり前だわ」


 俺が病人だからか……

 病人だったら、大っ嫌いな顔も見たくない奴が相手でも、看病が出来るんだな……

 岡島と感想が被るのは癪だが、本当にスゲェよ……


ピタッ……


「……んあ?」


 俺の額に、美月が濡らしたハンカチを置いてくれた。

 その上に棒アイス。

 熱を確認しているのか、俺の頬には美月の手が添えられている……

 何というか、冷たさが心地いい。


 あぁ、眠くなってきたな……

 目を閉じたら、夢から覚めんのかな?

 こんなに俺に都合のいいのは、夢に決まってる。

 だったらまだ、寝たくねぇのに……


「誰か……誰か、助けて……助けてよぉっ!」

「私が助けてあげるね」

「ありがとうっ! お姉さんは僕のヒーローだぁ!」


 ……ん? なんか、変な夢を見たな……

 どんだけ熱に浮かされて寝たら、あんな変な夢を見るんだ。

 美月が俺の家にきて看病してくれる夢と、あの頃の俺を美月が助けてくれる夢……

 どっちも現実だったら、よかったのに……


コポコポ……


 ……キッチンの方から変な音が聞こえる? なんだ?

 俺がもぞもぞと動こうとすると、額から何かが落ちた……

 これは、美月のハンカチ?

 ベッドサイドには完全に溶けきっている棒アイスが除けておいてあって?

 いや、あれは、夢のはずじゃ……?


「あ、起きた?」

「……は?」

「お粥作ったけど、食べれそう?」

「……」


 キッチンの方から顔を出したのは美月……

 美月が家にいて、俺の為にお粥を作ってくれていて……?

 夢じゃ、なかったのか?


「み、ずき……?」

「んー?」

「……なんで?」

「え? 消化にいいものを食べた方がいいよ?」


 俺の質問に、本気で何を聞かれているのかが分からないとでもいいたげに首を傾げて、見当違いな返事をしてきた。

 俺はなんでここにいるのかとか、なんで俺にそこまで優しく出来るのかとかを聞きたかったのに……

 多分美月にとっては、それは当たり前すぎて聞かれる訳がない事だったんだ。

 だからこんな、なんでお粥なのかという返事になる。


 本当に、全く違う人種なんじゃないかとさえ思えてしまう。


「……食える、食いたい」

「うん? よそうね」


 美月が持ってきてくれたのは、鮭フレークを使った鮭入りのお粥だった。

 適当に作ったっていいのに、家にあるものからちょっとでもと趣向を凝らしてくれたんだろう。


「ふー、ふー、はい、あーん?」

「……」

「どうしたの? 食べない?」

「……お前さ、天然なの?」

「ん? 天然じゃない人なんていないよ?」

「ははっ、そりゃそうかもな。まぁ、自分で食えるから、そこ置いといてくれ」

「分かった」


 あれだけ相手にしてくれなかった美月と喋れて、手料理が作ってもらえて、あーんまで……

 流石にそれは、許されてはいけない。

 俺はそういう奴なんだから……


「ごちそうさん、美味かった」

「良かった」

「ありがとな」

「まだ寝てた方がいいよ」

「……おう」


 俺が横になると、また美月は布団をかけ直してくれて、額に冷たいハンカチを乗せてくれた。

 その心地よさに眠くなっては来たが、まだ寝たくなくて、美月を見ていたくて、ただぼーっと美月を眺めていた。


 お粥で使った皿を片付けて、俺の寝る部屋に戻ってくると、テーブルにノートを広げて勉強し始めた。

 一応はまだ帰らないでいてくれるつもりらしい。

 それでも、帰っちまうんだよなぁ……

 ずっと側にいてくれたらいいのに……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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