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陶器の英雄  作者: 猫人鳥


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4/13

4 誤算

 岡島の停学明け。

 俺が教室に入った時には既に始まっていた。


 岡島が置き勉していた教科書やノートは乱雑に破られ、教室の奥のロッカーの上に"害獣の落とし物"として置かれている。

 呆然と突っ立っていた岡島は、やっと現状を理解出来たようで、慌てて周囲を見回していたが、誰も目を合わせようとはしなかった。

 代わりに返ってくるのは、クスクスとした忍び笑いだけ。


 顔面が一度蒼白になり、それから真っ赤に変わってロッカーへと向かった。

 自分の名前が書かれた教科書やノートの無惨な姿。

 そして"害獣の落とし物"と書かれた紙。

 その紙をぐしゃっと丸めて握り潰している。

 震える拳をどこに向けたらいいのかと、足りない脳をフル回転させて考えているんだろう。


 そんなところに、美月は登校してきた。


「おいっ! これ! お前だろ花園っ!」

「ん? 何……」

「俺の教科書もノートもっ……ふざけやがって!」


 岡島は教室に入って来てすぐの美月の胸ぐらを掴んで、怒鳴り散らした。

 まだ来たばかりで状況が分からない美月は、少し驚いているみたいだ。


「うっわ、やっぱ害獣じゃん」

「な、あんなのもう人間じゃねぇよな」

「ホント野蛮野蛮」


 クスクスと、教室中のあちこちから聞こえる岡島を嘲笑した声。


「クソがぁっ!」

「おい、岡島。止めろ」


 岡島は美月を殴ろうと手を振り上げたが、俺の声に手を止めた。

 不服そうではあったが、美月の胸ぐらを掴んでいた手も放した。

 流石のバカでも、これが俺の指示だと分かっているんだろう。


 そして美月も分かったはずだ。

 俺が岡島を止め、美月への嫌がらせを止めさせた事も。

 これで美月にも俺の強さが……


「教科書、一緒に見る?」

「「は?」」


 美月の声に、俺と岡島の声が重なった。

 今、何て言ったんだ?


「教科書ないんでしょ? 席隣なんだし、私のを一緒に見ればいいよ」

「おま……何、言って……クソっ!」


ガシャンッ!


 岡島は美月の机を蹴り飛ばして、そのまま教室から出ていった。


「み、美月? 今の、本気?」

「……」

「岡島だぞ? あの岡島」

「……」


 俺が声をかけているというのに、相変わらずの無視。

 岡島に蹴られて倒れていた机を直し、いつもと変わらない様子で席についた。


 それから少しだけ辺りを見渡して、


「汚くなった……」


と、呟いていた。


「なぁ、美月?」

「……」

「岡島に蹴られて汚れちゃったな?」

「……」


 本当にただの呟きだったようで、俺の方を見もしない。

 声も聞こえていないみたいだ。

 岡島が潰れたっていうのに、何も変わらない……


 1限、2限と何事もなく過ぎていき、放課後になった。

 岡島の停学が明けても、岡島に何もされないという平和な時間を美月は謳歌したはずだ。

 それなのに美月は……


 翌日。

 俺が教室に入った時、既に岡島は席に着いていた。

 教室にいる奴等はクスクスと岡島への嘲笑を続けていたが、岡島はただ俯いて座っているだけだった。


 そこに美月は入ってきた。

 無言で自分の席に着く。

 美月が隣に来たことに気付いたようで、岡島はむくっと顔を上げ、美月の方を見た。


「……なぁ?」

「ん?」

「昨日の、本気なんか?」

「何が?」

「……とぼけんなよ、その……教科書見せるとか……」

「あぁ、いいよ。一緒に見ようか」

「……まじか?」

「うん、机寄せるね」

「……おう」


 ガタガタと机を寄せ、同じ教科書を美月と岡島の2人で見る構図になった……


「ウケる。キモ女と害獣でお似合いじゃん!」

「間違いねぇな!」

「あ? お前等今、何つった?」

「い、いや……その……」


 ったく、何で俺が朝からこんな不快にならなきゃいけないんだ。

 何で美月は……


 1限から4限まで、美月と岡島はずっと近かった。

 昼休み、いつものように岡島は購買にパンを買いに行ったが、俺が指示を出しておいたことにより、パンは全て売り切れ。

 岡島の昼食はなくなった。


「おい、井浦、山内! お前等そんなにいらねぇだろ! 俺に譲れよ!」

「はぁ? 何言ってんの? これ、俺が買ったんだけど?」

「うわっ、カツアゲかよ! サイテー! おばちゃーん! コイツ俺達が買ったパン奪ってくるんですぅー」

「はぁ? あんた! デカい図体してなっさけないねぇ! ちゃんと自分で買いな!」

「くっ……」


 あれだけ仲の良かった井浦達にも裏切られ、とぼとぼと教室に帰る岡島。

 もう岡島の牙なんてもんはどこにも……


「どうしたの?」

「……昼飯、買えなかった」

「私のお弁当、分けてあげる」

「……いいのか?」

「うん。少ないかもだけど、ないよりいいでしょ?」

「まじで助かる! ありがとな!」


 教室に帰ってきた岡島に、美月が自分の弁当を分けてやっていた……


「うまっ! なんだこの卵焼き!」

「結構上手く作れたから」

「お前が作ったんか!?」

「そうだよ?」

「ホントすげぇな! お前、何でも出来るんだな!」


 ……俺は、何を見せつけられているんだ?

 何で岡島が笑って美月の手作り弁当を食べている?

 何で美月は岡島に優しくする?

 散々自分を痛めつけてきた奴じゃねぇか。

 大人しく、牙もなくなったただのデカブツに……


 何でこうも、俺に不快な事ばかりが起きるんだ……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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