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陶器の英雄  作者: 猫人鳥


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12/13

12 平等

 美月は俺から何も貰いたくないのではなく、誰からも何も受け取ろうとしないのだと分かった。

 加えていえば、俺に一切関わりたくない訳じゃないのも分かった。

 だってそうだろ? わざわざ離れた場所にいた俺のところにまで、マドレーヌを渡しにきてくれたんだから。


 改めて考えたら、美月は栄養バランスまで考え抜いた、完璧な弁当を作っているような奴だ。

 スタイルもいいし、自己管理に食事制限等をしているのかもしれない。

 それなら菓子類なんて貰っても困るだけだ。


 食いもんじゃなくて、何か物体として残るもの……アクセサリーとかなら受け取ってくれるか?

 いや、受け取らないだろうな。


 本当に必要としていない人に対して執拗にプレゼントを繰り返すのなんて、嫌われるに決まってる。

 だからもう毎日何かを渡すはやめようと思う。

 誕生日とかみたいな、特別な日とかに渡せば……ってか、美月って誕生日いつだ?


 マドレーヌを渡しに来てくれた事から考えても、俺を無視したいとは思っていないはずだ。

 だったら、俺から話しかけても……大丈夫だと、信じたい。


「なぁ美月? お前って誕生日いつだ?」

「え? 誕生日?」

「そう、誕生日」

「……」


 3限と4限の切り替わりの短い休み時間。

 美月の席まで行って声をかけると、美月は少し驚いたような顔を見せてから、黙った。

 この沈黙はなんだ?

 俺なんかに誕生日を教えたくないとか、そういう類の……


「えっと、あ……はい。11月の24日だね」

「……は? お、おう……」


 俺が内心で慌てていると、美月は何か閃いたような様子でがさごそと自分の鞄をあさり、生徒手帳を取り出して見せてきた。

 確かに紛れもなく11月24日で合ってはいるみたいだけど……


キーン コーン カーン コーン


「あ、教えてくれてありがとな」

「うん」


 授業開始の鐘が鳴ったので、慌てて自分の席に戻った。

 少し遅れて先生が入ってきて、4限が始まる。

 美月に特に変わった様子はない。

 俺が話しかけても不快そうではなかったし、ちゃんと誕生日も教えてくれた。


 ただ、あの反応の仕方には少し気になった。

 まるで自分の誕生日を覚えてはいないみたいな……? って、んな訳ないか。

 あの沈黙は、なんでいきなり俺がそんな事を聞いてきたのかという動揺だったんだろう。

 そして、嘘偽りなく誠意を持って答える為に、生徒手帳まで見せてくれたんだ。


 ……生徒手帳に写っていた美月の写真、綺麗だったな。

 髪も切られる前のロングで……

 サラサラツヤツヤの綺麗な髪。

 切ったのは佐々木だとはいえ、そうなる切っ掛けを作ったのは俺だ。

 いくら美月への攻撃を止めたとはいえ、当然美月は俺を許してはいないだろう……


 それでも、誕生日を教えてくれた。

 これは大いなる前進だ。

 ただ11月か……大分先だな。

 なんかプレゼントが出来たら良かったのに。


 ってか、俺マジで美月の事なんも知らな過ぎじゃね?

 プレゼントを渡すにしても、美月が好きなもんも分からねぇ。

 好きな食べ物、好きなアーティスト、趣味……なんかは知ってねぇと、美月も喜んではくれないだろう。


 あんまりしつこく聞くと嫌われる可能性はあるが、それ以前に俺は既に嫌われている。

 ここから好感度を上げて行くしかないんだから、一旦嫌われるのは覚悟の上で聞いた方がいいな。


 昼休み、美月はいつものように自分の席で滅茶苦茶美味しそうな手作りお弁当を広げていた。

 隣の席の岡島は、今日も自作のタッパー弁当。

 最初よりかは弁当らしくなってはいるが、変わらず不味そうなもんを美月に見せて話している。

 そんな2人の元へと、昼飯の焼きそばパンを持って近づく……


「……なぁ、美月。お前好きな食べ物なんだ?」

「え?」


 ……いきなり過ぎた、いきなり過ぎちまった。

 本当は俺も一緒に食べていいかを丁寧に確認してから、許可をもらって、そこから適当な雑談も挟みつつ、さり気なく聞くつもりだったのに、ガラにもなくテンパった。

 そりゃいきなり聞かれたら困るよな。

 なんでこう上手くいかないんだ……


「なんでも好きだよ?」

「へっ?」

「食べ物に好き嫌いは特にないよ。なんでも好きだよ」

「い、いや、特別に好きな食べ物とかあるだろ?」

「特別に? ううん、ないよ。なんでも好きだよ」


 こ、れは……

 俺に好きな食べ物を教えたくないとか、そういうことか?

 いや、さっきの誕生日を教えてくれた時の誠実さから考えても、美月は嘘なんてついたりしないはず……


「花園、お前なんでも好きってさぁ、なんか1個ぐらいあんだろ? 特別に好きなもんが」

「特別はないよ」

「肉か魚か」

「どっちも好きだよ」

「甘いのか辛いのか」

「どっちも好きだよ」

「お前の弁当の卵焼き、出汁が効いてて美味かったな。出汁巻きが好きなのか?」

「出汁巻きも好きだし、甘い卵焼きも、しょっぱい卵焼きも好きだよ。今日はプレーンオムレツ」

「卵料理が好きか?」

「好きだよ」

「他の料理と比べて?」

「どの料理も同じくらい好きだよ」


 岡島も聞いてくれたが、美月の返答は変わらなかった。

 雑に返事をしている訳じゃなさそうだし、不快に思っている訳でもなさそうだ。

 これは本当になんでも好きってことなんだろうか?


「じゃあ、好きなアーティストとかいるか?」

「いないよ」

「趣味は?」

「特にないよ」

「好きな色とか……?」

「なんでも好きだよ」


 ……詰んでる。

 何をプレゼントすりゃあいいんだ。


 美月は誰でも助ける博愛主義のヒーローだからこそ、物事に対して全て平等に見ているのかもしれないな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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