第十四話 アルスとディーネ
「ディーネ」
アルスはバルコニーに戻って来てディーネに声を掛けた。
「……アルス様」
左半身が焼け焦げボロボロだが、それでも無事で安堵の息が漏れる。
そこで朝日が昇り始める。この長い長い一日だったが、終わらない日だったが、確り世が明けた。
日差しがアルスにかかる。
「……星々の解放者」
ディーネはポツリ呟いていた。
「ディーネっ!」
アルスはディーネを抱きしめる。強く強く抱きしめた。
「アルス様?」
ディーネは少し困惑した。
「……終わったよ。君のお陰だ」
「いえ私は……」
そこで言葉を切りディーネは身を委ねた。婚約を解消したとは言え、ディーネは強くアルスを慕っている。それ故、強く求められて悪い気はしないのだ。
「ディーネ……」
一旦離れ、アルスはディーネを見詰める。
「……アルス様」
ディーネも同じくアルスを見詰めた。
互いの距離が近付く。
後10cm、後8cm、後6cm、後4cm、後3cm……。
ゆっくり互いの距離が縮まり、あと少しで唇が触れ合う。だというのに……。
「ディーネっ!!」
邪魔が入ってしまう。
上空からバルコニーの手摺に降りて来た者がいた。
「っ!?」
パっとアルスとディーネが離れる。
「サラ?」
ディーネは手摺に降り立った者のを見て首を傾げた。
「ん? 無事で何よりだ。邪魔したな」
そう言ってサラは下に飛び降りた。
「何?」
「何だったのだろう?」
アルスはディーネは困惑気味に首を傾げなら再びお互いを見詰める。
「あー…邪魔してすまなったな」
再び第三者の声が聞こえた。
その者はサラと違い飛行魔法で優雅に飛び、バルコニーの手摺に降り立った。
「セイラ王女っ!?」
驚きの声を上げるディーネ。
「どうして此処に?」
アルスも訝しげに言った。
「すまない……サラが連れて行けって言ってな。どうやら邪魔してしまったようだ」
サラにせがまれて転移魔法でサラを飛ばしたのだ。何かあったら困るので、自分も一緒に飛んで来ていた。
「あ、いえ……」
ディーネは何と言って良いのやら困ってしまう。自分を心配してくれて来てくれたのだ。嬉しいのだが、タイミングが悪かった。
「それにしても終わったのだな?」
セイラはアルスを見てそう言う。
「はい」
「ならば停戦の呼び掛けは私がしよう」
「宜しくお願いします」
『ソウテン』
そして、セイラも転移魔法でその場からいなくなった。
「ディーネ……」
再びアルスはディーネを強く見詰める。
「……アルス様」
ディーネも同じくアルスを見詰めた。
「ぅん」
そして唇が触れ合う
何秒か、何分かわからないが、しばらく触れ合っていたお互い唇が離れる。
「……アルス様」
唇の寂しさを感じながらディーネが呟く。
「ディーネ」
そしてアルスがディーネの眼を見た。
「はい」
「この戦いが終わったら、この城に来てくれ」
「えっ!?」
ディーネの頬が朱く染まる。
「やり直そう」
それは再び婚約しようというアルスなりのプロポーズ。
「わ、私で良いのですか?」
ディーネは咄嗟にそう言ってしまう。
「逆に何でディーネだとダメなんだい?」
「私は……私はついきつい態度を取ってしまいます。いつもその時、アルス様は困った態度をされますよね?」
かつて野盗に連れ去れた時、アルスが助けようとして野盗達に袋叩きにされた。
アルスを助けようとして、子供ながらに考え、ディーネの影武者のふりをする為にツンケンする態度を取るようになった。
そして、それがトラウマとなり、今は多少解消されたとは言え、それでもまだツンケンした態度が出てしまうのだ。
「そうだね……でも、そんなディーネを含めて此処に来て欲しいんだ。そんなディーネとも普通に接せれるようになりたいんだ」
「本当に私で良いのですね?」
最後に期待を込めた視線をアルスに送る。
「ああ……私の子を成す道具になって欲しい」
それに対しアルスはおどけて言った。
ディーネは眼を丸くする。それはかつてツンケンした態度でアルスに言った言葉。
おどけてはいるがツンケンした態度を受け入れるというアルスの心の表れ。ディーネもそれに気付く。
「ふふふ……」
思わず笑ってしまった。自分で言った時は気付かなかったけど、これほど滑稽な言葉とは……と。
「あはは……」
アルスも釣られて笑う。
二人でひとしきり笑うとディーネはアルスを見詰め口を開いた。
「私で宜しければ喜んで」
そう言ってスカートの端を掴みカーテシーを行った……。
サラとセーランローヌ王女様出番終了です
お疲れ様でした(笑)




