第十三話 星剣ベーレシオン
王室に入ると大陸最強の生物ドラゴンがいた。種類はレッドドラゴン……炎を司るドラゴン。
それともう一人……。
「姉上っ!」
アルスの姉、セレリアが檻に入れられていた。
「ああ、アルス」
セレリアが涙を零す。無事で帰って来れた安堵と大陸最強の生物であるドラゴンを一人で対峙しないといけない不安が入り混じった瞳をしていた。
アルスは大丈夫と言わんばかりに軽く微笑む。しかし感動の再会とは行かない。
「来たな…非常に影響力のある者よ」
そうイクタベーレの指揮官と思われる者で、セレリアが不安に感じているドラゴンがいるからだ。
「星言葉っ!?」
アルスが驚く。
もっとも古い言葉で、ユグドラシル大陸最初の言葉と言われている。アルスは王族の教養で教えられたので意味は理解出来た。
「我が名はドラコーン。我は貴様を否定する」
理解出来なかった。
言葉では無い。否定される理由がだ。そもそもがこの戦争にドラゴンが関わっているなんて聞いていない。
故に……。
「何故だ?」
と訊き返した。
「ドラゴン族をバルマーラ地方に追いやった。故に我らは我が道を行く」
アルスに取って、寝耳に水。ドラゴン族が人型人間外生物と同じように迫害されたなど聞いた事がなかった。
しかし、ドラゴンは大陸最強の生物と謳われている。それ故に人間達から恐れられたのかもしれないとアルスは思った。
しかし、だからと言ってドラゴン族の事まで考える余裕はアルスにはない。
「それでも私は最後までやり抜く」
それ故にアルスはそう言った。
「その強き理想、強き信念を否定する」
「それでも私は私の理想を目指す」
「例え波乱万丈だとしてもか?」
「そうだ」
「その瞳の闘争心は厄介だ」
そしてドラコーンから炎のブレスが吐き出される。
「うわ!」
躱そうとし右に飛ぶが躱し切れず左半身に炎を浴びた。
「アルスーっ!!」
セレシアから悲鳴の声が上がる。
それでもアルスは焼けた体の痛み堪え立ち上がる。
「くぅー……私は信じた道を突き進む」
痛みを堪えた呻きを上げながら剣を高々と天に掲げる。
「hamm?」
ドラコーンが訝しげに見た。
「我、最も重きものとしてこの剣に盟約を交わす。我が理想を目指し突き進む」
自分の理想が直ぐに揺らいでしまう事をアルスは良く理解していた。それ故に星剣ベーレシオンは応えてくれないのだろう……。
アルスは自分が弱い事を良くわかっている。いつも仲間の支えが必要な事。だから裏切りを感じた時、揺らぐほどに脆いと。
だったら、盟約という縛りを自分に枷そうとした。
「裏切られてもか?」
ドラコーンは驚きながらそう言う。
人は平気で裏切る。それは自分にも来るかもしれないぞと。
「だとしても貫く」
真っ直ぐドラコーンを捉え、曇る事のない瞳で力強く発した。
「その信念非常に厄介」
ドラコーンは諦め混じりの呟く。
「そんな自己犠牲はダメよ」
セレシアも思わず星言葉が零れた。
盟約とは、今後も星に縛られるという事。アルスに自由はなくなる。
はっきり言ってしまえば、この選択は短絡的なのだ。しかし、それでもアルスはこのままでは、今後の戦いに勝てないし、星剣ベーレシオンも応えてくれないと思った。
「応えてくれベ-レシオン」
故に覚悟を決めた。
その瞬間、アルスの持つ鉄の剣が四散した。その散った一つ一つが星となりて輝きを放ち、アルスを包む。
「いつの間にか貴方には高い理想を目指す強さがあるのね」
セレシアはアルスの成長を垣間見て再び涙を零す。
四散し星となった物はアルスを包むと剣を再構成するように集まり、輝き出し、その場にいた誰もが眼を背ける。
気付くとアルスの右手には確り星剣ベーレシオンが収まっていた。
「貴様は我が道を行くのだな。ならば……」
ドラコーンはそう言うと檻に入れられてるセレシアに鋭い爪を振るおうとした。
元々セレリアは万が一の時の為の人質だったのだ。アルスが星剣ベーレシオンに選ばれた以上、不利だと悟った。
「慈愛の檻」
その時、アルスの腕と口が勝手に動いた。
ベーレシオンには他の七代秘宝とは違う特性がある。それは所有者にどうすれば良いか教えてくれる事だ。
かつてアルスの子孫イクタは武器が無くなり、このベーレシオンが落ちていたので、それを拾った瞬間、なんとなく使い方わかった。
それが真の所有者になる事……もっともアルスの場合は盟約で無理矢理だが。
アルスはセレリアに向かって横に薙ぎ払うようにベーレシオンを振るった。
その瞬間、ベーレシオンから無数の星が瞬いた。星はセレリアが入ってる檻を包むと防御結界のようなものを張る。
ガッキーンっ!
ドラコーンの鋭き爪が弾かれた。
「何? ……ならば」
ドラゴンの強靭な爪が弾かれた事に驚いたドラコーンはアルスに炎のブレスを吐き出した。
「信念を貫き通す」
それをアルスの一振りでブレスは真っ二つに割れ左右に散る。
「何?」
再びドラコーンは驚き後退る。
それをチャンスだとアルスは思った。
「スターライトっ!」
そうアルスが叫ぶと剣に光が収束して行く。そして一気に間合いを詰める。
「ソォォォルファングゥゥッ!!」
アルスの得意とする闘気剣ソルファング。斬り上げと斬り下げの二段攻撃だ。
プシュっ!
飛び上がりドラコーンの皮膚を禿ぐ。ドラゴンの鱗は強靭でそう簡単に禿げない。しかし、それを星剣ベーレシオンが可能にした。
プシューンっ!!
斬り下げで再びドラゴンの皮膚を裂いた。
しかし、浅い……いかに星剣ベーレシオンでも大陸最強の生物と謳われるドラゴンには致命傷となる斬撃は与えられない。
「juha」
それでもドラコーンは呻く。
気付くと剣に収束した光が星剣ベーレシオンにない。ドラコーンの斬り裂いた傷口に移っていた。
アルスは着地と共にその場を離れるかのように飛び地面に転がる。
ドラコーンの傷口に集まった光が更に収束。そして……。
ドッカーンっ!
弾け飛んだ。
「ハァハァ……終わった」
アルスは呟くと起き上がり、セレシアを檻を剣で斬り解放した。
「アルスっ!!」
セレシアはアルスに抱き着いた。
「姉上」
「アルス、アルス、アルス……無事で良かった」
「姉上こそ……母上は?」
最初こそあの状況だ。あの姉も母も失ったと思った。しかし姉は無事ならるいはと淡い期待をした。
「残念だけど……」
それ以上は言わない。それでも察せられるに十分な言葉だ。
「そうですか……しかし、姉上が無事で良かった」
「私は人質として有用と判断されたようね」
「でも、本当に姉上だけでも無事で良かった」
「貴方も……こんなたくましくなって」
そう言ってセレシアは離れる。
「姉上、此処は任せて良いですか? 私にはまだやる事があるので」
「わかったわ」
「では」
アルスは踵を返し王室を出た……。
この章は描き上げるのに苦労しました
ルビが一定文字数以上振れないので(汗)
どう振ればちゃんと振れるか、読みやすいかを何度も試しました(笑)
ちなみに星言葉とアラビア後の併用の言葉ですが、この物語の都合の良いように意味を多少改変しております
また微妙に会話が噛み合ってないというか語彙力ないっぽくしてるのは古代言語って設定なのでわざとです
ちなみにアルスエードは、<アル・スハイル・アル・ムリフ>、<アル・スハイル・アル・ワズン>、<アルファード>から取り、捩りました
最初はまんまアルファードにしようかと思いましたが、アーク・ザ・ストーリーのアルフォードと被るので止めました(笑)




