エピソード アルスエード②
「アルスエード王子、リビティナは北西の砦に向かったソラを付けてたんだ……そしてソラにやられた。ソラは、クラヴィスと一緒にいたらしい。ちなみにリビティナなら心配無い、気を失ってるだけだ」
ジェリドが報告を行った。
北西の砦を叩いて欲しいとソラに頼んだ時の事だ。やはり信じたい気持ちのが強かったので、人選等はソラに一任して任した。
だけど、結果はこれだ。
「北西の砦に行った新兵達は、どうやらクラヴィスの操り人形になってしまってます……みんなこ~んな眼を……」
ミクが操り人形と化した放心状態のような眼付の真似をした。
「例のイッちゃった眼付だな……最悪のシナリオだな…悪い予感ってのは当たるとやりきれない」
ホリンはボヤく。
「ただ少しおかしいんですよ」
「何がだい?」
ミクが怪訝そうに首を傾げたので私が訊いた。
「う~ん…一瞬だったので気のせいだったのかもしれませんが、ソラがリビティナを殴った後、あたしに視線を向けて来たのですよ」
「ミクに気付いていたとしても空には手を出せなかっただけだろ。それよりアルス、覚悟してくれ……こうなったら、直ぐに陣を下げて、まずソラの隊を叩く。新兵ばかりだがクラヴィスの術にかかっているなら侮れない。手遅れになるとヤバい」
ホリンはそう言うがもしかしたらソラは……。
「……駄目だ」
だから止めた。
「アルス、気持ちは分かるが、此処は決断しろ……挟み撃ちにあったら取り返しがつかない!」
「駄目だっ!! ……ソラとは戦わない…ソラは……ソラは私の大切な仲間なんだ」
「……なあアルス、今のソラはお前さんの知ってるソラとは違う。クラヴィスの術に掛かった操られちまった別人なんだよ……たぶんリュウザンを失った心の隙間を突かれたんだろう……人の負の感情を増幅する悪魔なんだよ。クラヴィスって奴は!」
ああ…ダメなのかソラ。
この時、ソラへの疑いが強くなった。その瞬間微かに感じていた剣からの脈動が完全の止まった。
しかし、それは一瞬の事……。
「どうすんだよてめぇ? 新兵部隊は南東……つまり此方を目指しているんじゃねぇか? あんま時間がねぇ…恐らく南西の砦の軍も、それに呼応しつ動いてくる筈…このままじゃ挟み撃ちでパーだぞ」
イスカも口を挟む。
「そうだろ?」
そしてミクに振る。
「はい…このルートを通って来ています」
ミクが地図に指を差す
この場所は……やはりソラは正気なのではないのか? 再び僅かに信じた瞬間再び剣から微かな脈動を感じた。
「……分かった。今回に関しては勝手にやらせて貰うぜ。判断が遅れて無駄死にはごめんだからな」
ホリンが私の指示を聞かず外に出ようとする。
(本当にクラヴィスに操られてしまっているのか…本当に…本当に戦うしか方法がないのか)
いや、違う。それならこのルートを通る筈がない。
「本格的に嵐が来る…騎馬部隊は動き辛いな…これは」
空を見ていたジェリドが呟く。
「嵐?」
ホリンも足を止め、空を眺めていた。
「我らが空から援護する…心配いらない」
セイラがフォローの言葉を入れる。しかし彼女等がいたからって戦況は不利になるのは眼に見えていた。
「(えっ!? 嵐?)そうか…分かったぞっ!!」
ああ…やっぱりソラは正気だ。
「おい…お前、回復魔法まだかけて貰っていないだろ?」
ジェリドが止めに入る声が響く。彼の視線の先では苦しそうにするリビティナがやってきた。
「アルス様、ソラさんを止めてください……彼は……彼は一人でクラヴィスを……!!」
「何っ!?」
「分かってる…ソラを迎えに行こう!」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……。
この時、剣から脈動が再び強くなった。
もうわかってる。この剣は本物の星剣ベーレシオンなんだって事を……。
しかし私の気持ちが揺れる度に脈動を感じなくなる。だからベーレシオンに私は選ばれないのだ。
この剣は理想と解放の剣。それ故、理想を持ち続けないといけないのだと思う。
父上は真の意味ではないにしろ、所有者に選ばれていのだから、何かしらの理想があり、それを貫いていたのだろう。
私は弱いから、いつも揺らいでしまう。そんなんじゃダメだと思いながら、つい揺らいでしまう。
だからベーレシオンは応えてくれない。所有者に選んでくれない。だから私も覚悟を決めなければならない。
そう思いながら、王室に入った……。




