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渡辺さんと、記録簿のドヤ顔
数ヶ月後、佐藤はすっかり分厚くなった「記録」を見せに、渡辺の書店へ足を運んだ。
「渡辺さん、ちょっと見てくれるかね」
差し出されたスマホの画面には、几帳面に積み重ねられた記録の数々。写真、日付、気づいたこと――三十年分には及ばないが、この数ヶ月だけでも、立派な一冊の日記のようになっていた。
「まあ……! こんなに丁寧に記録されているんですね」
「まあ、渡辺さんの本のおかげで、続けるコツというものが掴めてね」
渡辺は画面をスクロールしながら、心から感心したように頷いた。
「これ、いつか本当に本にできそうですね。『わたしの黒松、三十年の記録』とか」
「な……ほ、本に……!?」
思いがけない言葉に、佐藤の顔がみるみる赤くなった。
「い、いやいや、そんな大それたものでは……」
照れ隠しに慌ててスマホをポケットへしまい込む佐藤を見て、渡辺はくすりと笑った。
その日の夕方、カフェで顔を合わせた鈴木に、渡辺はいつものように今日の出来事を話した。
「――でね、記録簿を見せに来たのよ、あの人」
「盆栽の方は、株よりよっぽど筆まめですね」
「そうなのよ。なんか、あの人にはこっちの方が向いてる気がするわ」




