コミュニティと、渋すぎる会話
ある日、アプリの片隅に「盆栽仲間と交流しましょう」というボタンを見つけた佐藤は、恐る恐るタップしてみた。
てっきり、若者たちのSNSのような、賑やかで軽い言葉が飛び交う場所を想像していた。だが、そこに広がっていたのは、思いのほか静かで、専門的な会話の連なりだった。
『五葉松の芽摘みの時期について、皆様のご意見を伺いたく』
『針金かけの角度、この写真ではやや強すぎるように見えます』
『樹齢六十年、ようやく理想の枝ぶりに近づいてまいりました』
「……ほう」
そこには、派手な「いいね」の数を競う空気も、目立つための過剰な演出もなかった。ただ、同じように長い時間をかけて木と向き合う者たちが、淡々と、しかし熱心に言葉を交わしているだけだった。
佐藤は、しばらく画面を眺めたまま、動けずにいた。
「……俺にも、話せることが、あるかもしれんな」
震える指で、初めての投稿を打ち込む。
『五葉松、樹齢四十年。今年は例年より芽の伸びが早く感じております。皆様のご経験では、いかがでしょうか』
しばらくして、見知らぬ誰かから、丁寧な返信が届いた。専門的で、そして温かい言葉だった。
佐藤の胸に、あのスリランカの一件の時と同じような、静かな高揚が広がっていった。




