丸腰の勇者と、呼べば応える相棒
電子マネーで1ポイントを引き当てた佐藤は、意気揚々とスマホショップのドアをくぐった。
「鈴木くん! これ(PayPay)で買い物ができたぞ! つきましては残高を使って、我が相棒を護る『スマホケース』を購入したいのだ!」
「おおっ! 電子マネー成功ですね! おめでとうございます!」
鈴木店員は一緒に喜んだものの、棚に案内したところで申し訳なさそうに眉を下げた。
「……あ、佐藤様。大変申し上げにくいのですが……佐藤様のスマホに合うケースが、お店に一つもございません」
「なに……!? これほど品揃えがあるのに一つもないだと!?」
佐藤のスマホは、文字が見やすく操作もしやすい特別な頑丈モデル。元から本体がしっかりと作り込まれているため、市販のケースのサイズがどれも合わないのだ。
「うーむ……せっかく電子マネーで買い物をしようと思ったのに、これでは相棒が無防備なままでではないか……」
がっかりする佐藤に、鈴木店員は胸を張って言った。
「佐藤様、ご安心ください! 実は佐藤様のスマホは、見やすさと安全性を第一に作られた『特別にタフな構造』なんです。例えるなら、はじめから全身に頑丈な鎧を着ているようなものですよ。わざわざケースをかぶせなくても、このまま裸(丸腰)で十分に戦えます!」
「なに……!? 丸腰で戦えるとな!?」
「はい! むしろケースをつけない方が、せっかくの見やすい画面も押しやすいですし、ポケットにもスッと入りますよ!」
「なるほど……! 飾りの鎧など不要、この素のままが一番強いというわけか! 気に入ったぞ!」
すっかり機嫌を直した佐藤だったが、ふと眉間にしわを寄せ、小さく溜息をついた。
「だがな、鈴木くん……。ケースは良いのだが、実は最近、別の悩みがあってな……」
「悩み、ですか?」
「うむ。朝起きた時や、庭の手入れをした後、『ぬ? 俺のスマホはどこへ行った?』と家中を探し回ることが増えてね。画面が大きくて見やすいのは良いのだが、探すとなると途端に見つからんのだ」
鈴木店員は「なるほど!」と手を叩き、目を輝かせた。
「佐藤様! それならケースよりも、こちら(スマートウォッチや音で探すタグ)はいかがですか!?」
鈴木店員はカウンターの下から、小さな丸いタグ(AirTag)と、手首につけるスマートウォッチを提示した。
「これはですね、スマホと連携させておくと、手元のボタン一つで『スマホの音を強制的に鳴らせる』機能があるんです!」
佐藤の老眼鏡がズレ落ちそうになった。
「なに……!? どこに隠れていても、手元から指示を出せば『ここにおります!』とスマホが音を立てて返事をするのか!?」
「そうなんです! たとえ座布団の下や庭の草むらに隠れていても、ピピピッと鳴って自分の居場所を主張してくれるんですよ!」
佐藤はスマホを愛おしそうに見つめた。
「なんと……! 呼べば応える相棒か! 姿をくらます相棒を、手元の合図ひとつで呼び戻す……これぞまさに理想の主従関係ではないか!」
「ふふっ、佐藤様にピッタリですよね!」
「よし、決めたぞ! ケースはやめて、この『相棒を呼び出す魔法の相棒』を買う! もちろん、電子マネーの残高でな!」
ケース探しの失敗から一転、呼べば返事をするガジェットの存在に男のロマンをくすぐられた佐藤は、興奮気味に電子マネーのバーコードを差し出すのだった。




