陽気な決済音と、一円の歓喜
斎藤の手書きの板に感銘を受けた佐藤は、自宅で再びスマホ活用本をめくっていた。
「ほう……『電子マネー(コード決済)』とな。スマホの画面をかざすだけで、現金を出さずに買い物が完了する……。しかも、またしてもポイントとやらが貯まるのか!」
相変わらずポイントという言葉に弱い佐藤だったが、本に書かれた「銀行口座との連携」という文字を見て老眼鏡を押し上げた。
「ぬ……口座を直接アプリに繋ぐのは、セキュリティ的にまだちと怖いが……何? セブン銀行のATMから『現金』でアプリにチャージ(入金)できるだと!? これなら俺の管理下で安全に運用できるじゃないか!」
自分の意志と現金でコントロールできる理屈に納得した佐藤は、さっそくコンビニのATMへ向かい、三千円を無事にアプリへと入金した。
【残高:3,000円】
極大表示された数字を確認し、佐藤はニヤリと笑った。
「フッ……俺のスマホが、三千円分の財布へと進化を遂げたのだ」
さっそく試運転のため、いつものスーパーへ向かった佐藤。
豆腐とネギをカゴに入れ、緊張した面持ちでレジに並ぶ。
「お会計、五百二十円になります」
佐藤はゴクリと唾を飲み込み、アプリのバーコード画面を極大表示にして、両手で恭しくスマホを差し出した。
「こ、これ(コード決済)で頼む!」
「はい、お預かりしますー」
店員がバーコードリーダーをかざした瞬間だった。
『ペイペイッ♪』
レジから陽気でポップな電子音が鳴り響いた。
「うわああっ!?」
佐藤は思わず跳び上がり、スマホを落としそうになった。
「な、なんだこの軽々しい音は……!? 四十年かけて稼いできた金の重みが微塵も感じられんぞ! 画面の数字が減っただけで本当に支払いが済んだのか!?」
「はい、お支払い完了ですー」
手渡されたレシートには、確かに『電子マネー決済:520円』と印字されていた。
「お……おお……! 本当に財布を出さずに買い物ができた……! これがキャッシュレスか!」
胸を撫で下ろした佐藤がスマホの画面を見ると、突如として画面いっぱいにカラフルなスクラッチカードが現れた。
【スクラッチに挑戦! 指でこすってください】
「む? こすれだと?」
指示通りに極大画面を指でシャッシャッとこすると、パンパカパーンと派手な効果音が鳴った。
【おめでとうございます! 3等:1ポイント獲得!】
「な……なにぃっ!? 一ポイント当たったぞ!!」
たったの一円分、されど佐藤にとっては「自分の意思で掴み取った戦利品」である。
「す、素晴らしい……! 買い物ができた上に、空から一円が降ってきたようなものではないか!」
一ポイントの当たりに大感動した佐藤は、すっかり電子マネーの虜になっていた。
「よし……! 残高はまだ二千四百八十円もある。いつも世話になっている鈴木くんの店に行き、この文明の利器を使ってスマホケースでも買ってみるとするか!」
ホクホク顔の佐藤は、スクラッチの1ポイントを胸に抱き、堂々たる足取りでスマホショップへと向かうのだった。




