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文字サイズは、「極大」から、老眼に負けるもんか!  作者: 藤一


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百円の歓喜と、魔法の整理袋

LINEのスタンプをマスターし、すっかりスマホを使いこなしている気分になった佐藤は、夕方の買い物で近所のスーパーを訪れていた。

自動ドアをくぐった瞬間、元気な店員の声が響いた。

「いらっしゃいませー! お客様、当店の公式スマホアプリはお持ちですかー?」

普段なら「結構だ」とスルーするところだが、今の佐藤は「スマホを所持する男」である。思わず足を止めた。

「む? アプリとな?」

店員はすかさず笑顔で駆け寄ってきた。

「はい! アプリを入れていただくと、お買い物ごとに『ポイント』が貯まりまして、貯まったポイントでお買い物ができちゃうんです! しかも! 今日ダウンロードしていただくだけで、本日の会計が『今すぐ100円引き』になる特別クーポンをプレゼント中ですよ!」

佐藤の老眼鏡の奥で、目がカッと見開かれた。

「なに……!? 今日のお会計が今すぐ百円引き……!? さらにポイントとやらで買い物が安くなるだと!?」

「はい! 設定もすぐ終わりますよ!」

「入れる! 今すぐ入れるぞ!」

百円の得と「ポイント」という魅惑の響きに完全につられた佐藤は、店員の案内されるままに画面をタップし、見事にスーパーのアプリを導入した。

レジにて、店員に教わった通りに画面の「100円引きクーポン」を提示する。

ピコンッ。

【本日のお会計:780円 → 680円】

「おおおおっ……! 本当に百円安くなったぞ……! スマホをかざしただけで百円の価値が生まれた!」

ホクホク顔でネギと豆腐の入った買い物袋を下げた佐藤は、この大戦果を誰かに報告したくてたまらなくなった。足が自然と、いつものスマホショップへと向かう。

「鈴木くん! 見たまえ! 時代はアプリだな!」

ショップに堂々と足を踏み入れた佐藤は、胸を張ってスマホをカウンターに提示した。

「佐藤様! こんにちは。今日は何か良いことでもありましたか?」

「ふふん、聞いて驚くなよ。スーパーの入口でアプリというものを入れたのだ。するとどうだ、今日の買い物が即座に百円引きになり、さらにポイントという名の金の卵を産む仕組みが手に入ったのだよ!」

「おおっ! スーパーのポイントアプリですね! 百円引きは嬉しいですね!」

嬉しそうに自慢する佐藤を見て、鈴木店員も一緒に笑顔になった。

……しかし、佐藤のスマホ画面を見た瞬間、鈴木店員は冷や汗をかいた。

佐藤のスマホは、文字もアイコンもすべて『極大表示』に設定されている。

画面には、巨大化された「証券アプリ」「LINE」「カメラ」「設定」、そして今回入れた「スーパーのアプリ」のアイコンが画面狭しとドカンと鎮座し、溢れたアイコンが次のページへと追いやられていた。

(やっぱりだ……! 極大表示だから、アプリが増えるとあっという間に画面がアイコンだらけになって、目当てのアプリが迷子になっちゃう……!)

鈴木店員はポンと手を叩き、笑顔で画面を指さした。

「佐藤様! アプリが増えて画面が狭くなってきた時は、この『フォルダ』という整理袋を使うと良いですよ!」

「ふ……フォルダ? 整理袋とな?」

「はい! 画面の上のアイコンを指で長押しして、別のアプリの上に重ねてあげると……ほら! 一つの箱の中に、複数のアプリが綺麗にまとまるんです!」

鈴木店員が手本を見せると、画面の上に「買い物のフォルダ」が生成され、散らばっていたアイコンがスッキリと一箇所に収まった。

佐藤は老眼鏡を押し上げ、穴が開くほど画面を見つめた。

「むおおっ……! 画面のアイコンが、一箇所に整理整頓されたぞ! まるで書類をクリアファイルにまとめて分類するのと同じではないか!」

「まさにその通りです! こうして『買い物用』『証券用』とフォルダでまとめておけば、極大表示のままでも画面が散らからず、いつでもすぐに取り出せますよ」

整理整頓が大好きな佐藤の職人魂に、フォルダ機能が見事に突き刺さった。

「素晴らしい……! ただアプリを放り出すのではなく、箱に入れて分類管理する! これぞスマートな男の画面作りだな!」

「ははは、喜んでいただけて良かったです!」

こうして鈴木店員の神レッスンにより、佐藤は「アプリの整理整頓」という新たなスキルを手に入れ、ますます誇らしげに胸を張るのだった。

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