渡辺さんと、仲間たちの報告
「渡辺さん、ちょっといいかね」
シニアコーナーで棚卸しをしていた渡辺は、どこか晴れやかな顔で現れた佐藤に出迎えた。
「あ、佐藤様! 今日はどちらの章を?」
「ふふん……実はね、我がスマホには『執事』や『トレーナー』が常駐していることが判明してね。翻訳アプリを使えば、俺の声は一瞬で『英国紳士の挨拶』になるのだよ」
渡辺は一瞬パチパチと瞬きをした。
(また鈴木くんが素晴らしい名言でフォローしたのね……!)と全てを察し、いつものプロの笑みを浮かべた。
「まあ! 英国紳士ですか! 佐藤様の渋いお声にぴったりですね!」
「そうだろう? 現代の技術というのは、使う人間の格に合わせて進化するものらしい」
「本当にその通りですね! この本をお使いいただいて、どんどん賑やかになっていきますね」
「うむ! また新しい『仲間』が増えたら報告するよ!」
満足そうに胸を張って去っていく佐藤の後ろ姿を、渡辺は温かい目で見送った。
その日の夕方、いつものカフェで鈴木と顔を合わせた渡辺は、コーヒーを吹き出しそうになりながら言った。
「ちょっと鈴木くん! 『英国紳士の挨拶』ってなに!? あのおじさん、すっかりその気になって本屋で自慢していったわよ!」
鈴木は嬉しそうに目を細めて笑った。
「だって渡辺さん、あのお客さんの『あー、これでいいのか?』っていう声、本当に深みがあって格好良いんですよ。次はどんな機能で驚いてくださるか、僕も楽しみで仕方ないんです」
二人は顔を見合わせ、まだ見ぬ佐藤の新たな大冒険に、楽しそうに微笑み合うのだった。




