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第十九話 中央集権は「地方分権(デポルタージュ)」から始めます

最前線の辺境都市『ロストガルド』が

アレン(ナオト)の特別地方交付税(魔力)の執行によって、

瞬く間に強固な近代都市へと生まれ変わりつつあった頃。


本国であるバルハイト帝国の王都財務省から、

数騎の装甲騎兵を引き連れた傲慢な男が、領主館へと乗り込んできた。


男の名は、中央徴税総監のヴァルター。

肥大した腹を派手な絹の衣服で包み、アレンを見下ろす目は露骨な蔑みに満ちていた。


「――おい、無能皇子アレン。最前線で奇跡的に生き残ったかと思えば、何やら妙な私産を築いているようだな。本国財務省、および第一皇太子殿下からの公式な命令を伝える」


ヴァルターは、赤黒い蝋で封印された『緊急特別徴税令状』を机の上に叩きつけた。


「ロストガルドが隣国から得た戦利品、および今後この土地で生み出されるすべての税収、魔力資源を、本日より『国家安全保障費』として、100%王都へ国庫返納せよ。拒否すれば、本国に対する『反逆罪』とみなし、直ちに帝国軍がこの街を包囲することになるぞ」


横で控えていた防衛隊長のエリックが、怒りに顔を真っ赤にして拳を握りしめた。


「なっ……! 予算や兵糧を一方的に全額カットしておきながら、こちらが自力で築いた富だけを全て毟り取ろうというのか!? あんまりだ、そんな理不尽が通るか!」

「黙れ、地方の小汚い兵卒が。本国中央の命令は絶対だ」


ヴァルターは鼻で笑い、顎を突き出した。

前世の役所時代、国が地方自治体の独自の財源を都合よく吸い上げ、地方を疲弊させる「中央集権の横暴」をナオトは何度も見てきた。

だが、今の彼はただの文官ではない。

世界を滅ぼせる予算(武力)を握る男だ。


「なるほどね。地方の財政主権を完全に無視した、典型的なお上の横暴(押し貸し)だ」


アレンは羽ペンを回しながら、冷徹な公務員スマイルを浮かべた。


「ヴァルター徴税総監。お役所のルールに則って、一つ確認させてほしい。

本国の『地方自治免除法・第三条』によれば、最前線の防衛特区における独自の財源確保は、

王都の事前承認がなくとも『合法』とされている。

君たちのその命令書は、手続き上、完全に【違法な二重課税】に該当するけれど、

その点についてどう説明するんだい?」

「法律など関係ない! 弱肉強食のこの帝国において、第一皇太子殿下の武力(言葉)こそが法なのだよ!」

「そうか。法律ルールを無視して『武力』の話をしたいんだね」


アレンは静かに立ち上がった。


「なら、話は早い。君たちの言う『武力の規模(予算)』の桁が、どれだけズレているか教えてあげるよ」



アレンはヴァルターたちを連れ、ロストガルドの城壁の上へと移動した。


城壁の外には、ヴァルターが連れてきた本国の精鋭装甲騎兵が、

いつでも街を威圧できるようにと武器をガチャつかせて待機していた。


「おい、無能皇子。観念して、今すぐロストガルドの全財産を差し出す署名を――」

「ヴァルター総監、君たちの後ろにある『バルハイト帝国の今年度の総国家予算』って、金貨に換算するとだいたい一億枚くらいだよね」


アレンは遠くを見つめながら、淡々と言った。


「それがどうした!」

「じゃあ、僕の個人的な『地方分権デポルタージュ』の予算執行を見せてあげる」


アレンがパチンと指を鳴らした。

その瞬間、ロストガルドの街全体を覆い尽くすほどの、天をも隠す『超巨大な純金の魔法陣』が天空に展開した。そこから溢れ出たのは、前世のガルガルドでナオトが稼ぎ出し、

世界の法則すら書き換えるチート能力へと昇華された、天文学的な数字の魔力。


「な……な、なんだ、あのふざけた規模の魔法陣は……!? 街が、国が丸ごと飲み込まれるぞ!?」


ヴァルターが恐怖に顔を痙攣させ、その場にへたり込んだ。

下で待機していた装甲騎兵たちの軍馬が一斉に狂ったようにいななき、恐怖で泡を吹いて倒れていく。


「【特別防衛予算執行ブロック・グラント】。――規模は、金貨【十億枚相当】で」


ゴオオオオオオッ!!! と、世界が震えるような轟音と共に、

ロストガルドの周囲に、厚さ数十メートルに及ぶ『純金の絶対不可侵魔力障壁』が、

地平線の彼方まで一直線に突き刺さるように出現した。


それは、本国の国家予算の十倍に匹敵する、

圧倒的な「富の質量」がそのまま物理的な盾となった、絶対に破壊不可能な壁だった。


「ひ、ひぃぃ……っ!? 国家予算の、十倍……だと……っ!?」


ヴァルターは完全に失禁し、ガタガタと震えながらアレンを見上げた。

「この壁がある限り、本国の軍隊がどれだけ押し寄せようと、一ミリもこの街には侵入できない。

   それどころか――」


アレンは冷徹な目でヴァルターを見下ろした。


「この壁の維持費(魔力)を少しだけ操作すれば、この最前線から王都へ流れるすべての物流と、

隣国との関税の通り道を、僕の意思一つで『完全に閉鎖ロックアウト』できるんだ。

つまり、僕がその気になれば、明日から王都の物価を百倍に跳ね上げ、

本国の経済を内側から崩壊させることもできる。

……さあ、徴税総監。どっちの『武力(予算)』が上か、理解できたかな?」




「わ、分かった……! 我々の負けだ! 徴税命令は全面撤回する! だから、その恐ろしい魔力を収めてくれ!」


ヴァルターは涙を流しながら地面に何度も頭を擦りつけ、令状を自らの手で破り捨てた。

法律を盾にするまでもなく、

国家予算を遥かに超越した「物理的な札束の暴力」の前に、中央の権力などただの紙切れに過ぎなかった。


「話が早くて助かるよ。

それじゃあ、不法な脅迫行為に対する『行政ペナルティ』として、

君たちが乗ってきた高級な軍馬と装備はすべて、ロストガルドの防衛予算として没収(差押え)させてもらうね」


アレンの冷徹なお役所仕事の執行により、ヴァルターたちは身ぐるみを剥がされ、

徒歩で命からがら王都へと逃げ帰っていくのだった。


「……す、凄すぎる。アレン様、ただの壁を造るだけで、

本国の中央政府を経済的にも武力的にも完全に返り討ちにしてしまうとは……!」


エリックが興奮で目を輝かせ、アレンの前に深く膝を突いた。


「これで、ロストガルドの財政主権は100%守られたよ」


アレンは手帳に『第3話:地方分権の確立・完了』と大きなチェックマークを書き入れ、静かに微笑んだ。

中央の理不尽な搾取をはねのけ、最前線の街は完全に独立した「不落の要塞都市」としての歩みを加速させる。


「さあ、財源の安全は確保した。だけどね、エリック。財政が独立したということは……明日からの『独自の予算編成と事業計画の策定(残業)』が、さらに何倍にも増えるということだからね!」


新領主アレンの不敵で、しかし最高に頼もしい号令に、ロストガルドの兵士たちの割れんばかりの勝鬨が、戦乱の帝国の空へと、高く高く響き渡るのだった

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