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作り話みたいな再会から、数日。
どちらからともなく始まったメッセージのやり取りは、途切れないままダラダラと続いている。文字だけでは終わらず、そのまま通話に移ることもあったりして。
話してみれば、やっぱり心地良い。
応酬のテンポも、相槌のトーンも、沈黙の間合いも。
積もった年月などものともせず、彼はするりと俺の中に入り込んできて、そのまま居座ってしまう。
「みなとくんって人たらしだよね。根っからの」
「……いや、そんなつもりないけどー?」
伸びた語尾には、不服が滲んでいる。
唇を尖らせているところまで簡単に想像できるくらい、わかりやすく。
スピーカー越しに、薄いノイズだけが乗っかる。しかし、その静けさは長く続かなかった。
微かなざらつきの中で、ふっと笑う声が浮かんだから。
「まあでも、お前には特別入れ込んでるからね、僕」
ほら。
こういうことサラっと言っちゃうの。悪い人!
きっと色んな人を泣かせてきたんだろうな。女の人とかさ。
今は特定の人、いないらしいけど。
まあ、そうだろうね。そんな人がいたら、俺なんかと時間潰してないだろうし。
雑談の継ぎ目に、大学時代の話もさわりだけ教えてもらった。
「御名答」
当時は演劇サークルに所属していて、脚本を書いたり、舞台監督をやったりしていたらしい。
この前見かけた二人とは今も付き合いが続いていて、仕事で一緒になることもあるんだって。
俺の知らない八年のあいだにも、みなとくんはちゃんと人生を続けていた。
なんだか嬉しかった。生きてたんだなーって。
「そういえば、見た。みなとくんの経歴。調べて」
「えー?ありがとう。恥ず」
「作品ってネットにないよね、やっぱ。視聴できるの」
「あー、映像で?」
気の抜けた返事と共に、椅子がぎしりと鳴る。
「公演はディスクに焼いたやつしかないな。どこやったか……」
みなとくんはぶつぶつ言いながら、おそらく机を漁り始めた。
がさがさと何かを掻き分ける音が続き、不意に止まる。
「あ、あったわ」
そんな雑多なところにしまってんだ。自分の仕事。
いや、それはいい、そんなことより。
「……どっかで、観に行っても?」
「勿論」
あっさりと承諾されてしまった。
いいんだ、この温度感で。
「これ、うちね。いつ来る?」
そんで位置情報を送ってきたと思ったら、もう日程の話をしている。ずっと早いな、この人。
いくつか候補を出して、あっという間に日取りまで決まった。ようやくこっちの気持ちも追いついて、これでひと段落——とはならない。
みなとくんがまた軽い調子で口を開く。
「僕も調べよっかなー。いぶちゃんの作品」
「やめて!」
俺の作品は、名義まで辿ればネットで簡単に見つかる。別に完全に隠しているわけでもない。
ただ、リアルタイムで邂逅されるのは嫌だ。
居た堪れない。気まずすぎる。
「なんで?読みたいんだけど。今のお前が作るもの」
読んでほしくないわけじゃなくて……。
脚本って書いたことないけどさ。仕上げたところで終わるものじゃないでしょ、きっと。
複数の人の手に渡って、演出を経て、声や身体を与えられて、ようやく舞台の上に立つ。
自分の書いたものを他人に託して、それぞれの解釈まで受け入れながら、ひとつの作品にしていく。
みなとくんがそういう世界の住人だとしたら、俺の世界は、もう少し閉じている。
名義をひとつ挟んで、知らないところで勝手に見つけてもらって、知らないうちに読まれる。
そのくらいがちょうどいいの。
だから。
「調べるのはいいけど、こっそり見て……」
「こっそりならいーんだ」
了解、と。
これまたあっさり許してもらった。
それからも、何往復か話題を投げ合っていた。
会話がひと段落した頃には、さっきまで何を話していたのかも曖昧になっている。
へんなの。
本日も閲覧ありがとうございます。
次回は11/7(土)更新予定です。
朝夕の2回更新を、やってみようかな、と、考えております♡
連日色々好き放題、欲張りセット!ですが、page.2からは全て固定しますので…もうしばらくお付き合いいただけると嬉しいです…!
土曜日もお会いできますように◎




