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「えー」とか、「すごー」とか、間の抜けた感嘆を漏らしていたみなとくんが、ぴたりと動きを止めた。瞳だけがうろうろと徘徊し、最後は俺の顔に帰ってくる。
「いぶちゃん、どっか悪くした?」
「いや、五体満足、ほとんど大丈夫。みなとくんは」
「僕もほとんど大丈夫。今日は経過観察で来ただけ。親知らず抜いたの」
俺の手を解放し、今度はみなとくんの指が立ち上がる。
四本。
「一気に?」
「そう。全身麻酔で」
気になるな。
経緯も、手術の体験談も、それ以外も。
が、しかし。
入り口で男二人が立ち話をしているの、あまりにも邪魔かつ不審だ。
俺もみなとくんも中学生の時よりでかくなっているし、身長を伸ばしている間お互いに何があったかわからないから話題は尽きないし——ていうか、尽きてほしくないし。
「なんか用事ある?このあと」
みなとくんも同じような気持ちでいてくれたのだろうか。場所を変えることを提案してくれた。駅前のファミレス行かん?って。
行くに決まってます。伝えると同時に、スニーカーのソールがドアの先に向く。
おかしいっちゃおかしい。だってこの人手ぶらだもん。
「薬、今日じゃなくていいの?」
「えっ」
待ちきれない人もいるくらいだもん。日を改めたって良い。だから確認しただけ……なんだけど。
物凄く驚いている、ように見える。
「そんなびっくりする?結構時間かかるじゃん、ここ」
「違う。薬もらってないことじゃなくて、何しにきたか忘れてた自分にビビってんの」
成る程。丸ごと忘れちゃってたのか。
「むっちゃ動揺してるー!」と、両手で頬に風を送りながら笑う。目尻がきゅっと伸びる。かつては毎日見てた表情だ。懐かしいな。
先に出とくよ、と応えたところで、窓口の向こうからみなとくんの苗字が飛んでくる。
「待ってて」
みなとくんが踵を返すと、鮮やかな後毛が膨らんだ。
ミルクティーベージュからラベンダーへ、段を境に色が切り替わる。
わかりやすく奇抜で、綺麗だ。
黒髪もいいけど、今のツートンカラーも似合ってる。
閲覧ありがとうございます。
今回短めなので、明日のお昼に次話を更新する予定です。
またあした、会いに来てくれると嬉しいです!おまちしております◎




