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最強OL、羊に転生する。  作者: 月羽めい
雨の日の羊姫編
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第三十一話 王国最高魔導師オルフェウス

翌朝。

 王都アルディアの空は雲ひとつない快晴だった。

 辺境伯エルオーニ、ナザール、アーマル、そして数名の騎士たちは、王城へ向かっていた。

 巨大な王城は白い大理石で造られ、朝日を受けて神々しいほどの輝きを放っている。

「何度来ても立派ですね。」

 ナザールが感心したように見上げる。

 アーマルも思わず頷いた。

「お城というより神殿みたい……。」

 その横でノワールは落ち着かない様子だった。

「グルル……。」

「どうしたの?」

 アーマルが頭を撫でる。

 しかしノワールは王城の上をじっと見つめたまま耳を伏せていた。


 一行は玉座の間へ案内された。

 豪華な赤い絨毯。

 金色の柱。

 そして玉座には、ダザール王国国王・レオニード・ダザールが静かに座っていた。

 五十代半ばとは思えない堂々とした体格と威厳を持つ名君である。

「面を上げよ。」

 国王は穏やかに言った。

「エルオーニ、この度はよくぞ民を守ってくれた。」

「もったいないお言葉です。」

 エルオーニは深く頭を下げる。

 国王は続いてナザールを見る。

「身体の具合はどうだ?」

「おかげさまで問題ございません。」

「そうか。」

 国王は安心したように微笑んだ。

「お前は幼い頃から病弱だったからな。」

 その言葉にアーマルは少し驚く。

(国王陛下が、ナザール様をそんなに気に掛けている……。)

 すると国王はゆっくりアーマルへ視線を向けた。

「そなたがアーマルか。」

「盗賊からナザールを救い、さらに呪われた黒狼まで救ったと聞いている。」

 アーマルは慌てて頭を下げた。

「私は当然のことをしただけです。」

 その返答に国王は豪快に笑った。

「はっはっは!」

「謙虚な娘だ。」

「ナザール。」

「よい護衛を得たな。」

 ナザールは誇らしそうに微笑む。

「はい。」

「彼女は私たちにとって、大切な仲間です。」

 その言葉を聞き、アーマルの胸は少しだけ温かくなった。


 謁見を終え、一行は王城最上階にある魔導塔へ案内される。

 扉を開けた瞬間、アーマルは思わず足を止めた。

 部屋中に古代文字が刻まれ、無数の魔法陣が淡く輝いている。

 その中央には巨大な水晶。

 そして、その前に一人の老人が立っていた。

 長い銀髪。

 白い法衣。

 金色の瞳。

 王国最高魔導師――オルフェウスである。

「待っていたよ。」

 老人は優しく微笑んだ。

 その瞬間。

 アーマルの左手にはめられたマランナが強く輝く。

「っ!」

 白い光が部屋いっぱいに広がった。

 ナザールたちは思わず目を細める。

 オルフェウスは静かに頷いた。

「やはり……。」

「マランナは、君を主と認めている。」

 アーマルは驚きを隠せない。

「この指輪をご存じなんですか?」

「もちろんだ。」

 老人は懐かしそうに指輪を見つめた。

「千年前、世界を救った聖女が身に着けていた神具。」

「それがマランナだ。」

 アーマルは息をのむ。

「聖女……。」

「だが安心しなさい。」

 オルフェウスは穏やかな声で続ける。

「私は君から秘密を聞き出すつもりはない。」

「君自身が話せる時が来るまで待とう。」

 その言葉にアーマルは少し安心した。

 しかし次の言葉で空気が変わる。

「ただし、一つだけ忠告がある。」

「七魔将は始まりに過ぎない。」

「近いうちに、さらに強大な敵が君の前へ現れる。」

「そして――。」

 老人はナザールへ視線を向ける。

「その敵の本当の目的は、ナザール・パルネリックだ。」

「え……?」

 ナザールは目を見開く。

 オルフェウスは静かに頷く。

「君自身もまだ知らない。」

「なぜ命を狙われ続けるのかを。」

 重苦しい沈黙が流れた。

 その時だった。

 突然、魔導塔の窓ガラスが激しく震える。

 バリンッ!

 ガラスが砕け散り、黒い羽根が部屋中へ舞った。

 全員が窓へ振り向く。

 そこには黒い仮面を付けた一人の男が立っていた。

「見つけたぞ。」

 低い声が響く。

「ナザール・パルネリック。」

 男の背後には、十数人もの黒装束の暗殺者たち。

 オルフェウスは杖を構え、静かに言った。

「ずいぶん派手な来客だ。」

 アーマルはナザールの前へ立つ。

「ナザール様。」

「今度は私が守ります。」

 ナザールは彼女の背中を見つめ、小さく頷いた。

「……お願いします。」

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