表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強OL、羊に転生する。  作者: 月羽めい
雨の日の羊姫編
PR
31/37

第三十話 王都アルディア

翌朝。


 朝霧が晴れ始める頃、一行はついにダザール王国の王都・アルディアの正門へ到着した。


 巨大な白い城壁は朝日に照らされて輝き、何本もの塔が空高くそびえ立っている。


「これが……王都。」


 アーマルは思わず立ち止まった。


 目の前には、人で埋め尽くされた大通り。


 商人が威勢よく客を呼び込み、旅芸人が大道芸を披露し、露店には見たこともない料理や果物が並んでいる。


「すごい……。」


「辺境伯領とは全然違います。」


 ナザールは微笑んだ。


「初めて来た人は、みんな同じ反応をします。」


「少し時間ができたら案内しますね。」


「本当ですか!」


 アーマルの表情がぱっと明るくなる。


「ぜひお願いします!」


 二人の楽しそうな様子を見て、エルオーニは苦笑した。


「まずは屋敷だ。」


「観光はその後にしてくれ。」


「はい。」


 二人は声をそろえて返事をした。


 その息の合った様子に、バーバラは思わず笑みをこぼす。



 王都の大通りを馬車が進んでいく。


 すると、道行く人々がざわめき始めた。


「あれはパルネリック辺境伯様だ!」


「北の英雄がお帰りになったぞ!」


「隣にいる金髪の方がナザール様ね。」


「相変わらず素敵……。」


 若い女性たちの歓声に、ナザールは困ったように苦笑する。


「毎回こうなんです。」


「人気者なんですね。」


「身体が弱くて剣も振れないのに、不思議です。」


 アーマルは首を横に振る。


「違います。」


「ナザール様は優しいから、みんなに慕われているんです。」


 その一言に、ナザールは少し照れたように笑った。


「ありがとうございます。」



 やがて一行は、王都にあるパルネリック家の屋敷へ到着した。


 白い石造りの大きな屋敷に、整えられた美しい庭園。


 使用人たちが一斉に頭を下げる。


「お帰りなさいませ。」


 荷物を運び終え、一息ついたその時だった。


「辺境伯エルオーニ・パルネリック様。」


 一人の王国騎士が訪れる。


「国王陛下より書状を預かっております。」


 エルオーニは封を開き、内容を読む。


「……なるほど。」


 ナザールが尋ねる。


「兄上?」


「明日の午前、王城へ登城せよとのことだ。」


「陛下が今回の襲撃事件について直接話を聞きたいらしい。」


「やはり王都にも情報が届いていましたか。」


 ナザールは静かに頷く。


 騎士はさらに続けた。


「もう一つございます。」


「王国最高魔導師オルフェウス様が、アーマル殿との面会を希望されています。」


「私と……?」


 突然名前を呼ばれたアーマルは目を丸くした。


「私は普通の護衛ですよ?」


「理由は聞かされておりません。」


 騎士も首を横に振る。


 その瞬間だった。


 アーマルの左手にはめられたマランナが、淡く白く輝く。


 誰にも気づかれないほど小さな光。


 しかし、その温もりは確かに彼女へ語りかけていた。


(この指輪……。)


(オルフェウスという人を知っているの?)


 答えは返ってこない。


 それでも胸の鼓動だけが少しずつ速くなっていく。



 その夜。


 王城の最上階、魔導塔。


 銀髪の老人――王国最高魔導師オルフェウスは、水晶へ映るアーマルの姿を静かに見つめていた。


「前世の魂。」


「羊姫。」


「そして……マランナ。」


 老人は穏やかに微笑む。


「運命の歯車が、ようやく動き始めた。」


 一方その頃、王都の地下深く。


 暗闇の中でゼルヴァンが片膝をついていた。


「羊姫は王都へ入りました。」


 玉座に座る人物は静かに口を開く。


「ご苦労。」


「計画は予定どおり進める。」


「まずは――ナザール・パルネリックを孤立させろ。」


「羊姫は必ず彼を助けに現れる。」


 ゼルヴァンは不敵な笑みを浮かべる。


「承知しました。」


 闇の中で二つの黄金色の瞳だけが妖しく光っていた。


 王都で、新たな陰謀が静かに動き始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ