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スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦ってる  作者: かませ犬
愛の契り編

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曇らせ②

 世界樹(ユグドラシル)さまから聞くとは思っていなかった単語に思考が一瞬止まった。


 なんて言った? 転生者って言ったのか?世界樹(ユグドラシル)さまも、マジカルチンポッコも転生者だって言いたいのか?


 俺と同じようにこの世界が漫画の世界───『アビリティ・ストライク』の世界だと知っている?


「世界樹(ユグドラシル)さまも原作をご存知なのですか?」


『すみません、何のお話をされていますか?』


「あ、すみません。はい」


 もしかしたら俺と同じ境遇かも知れないと思って言葉を濁して聞いてみたら、この反応である。急に恥ずかしくなった。同じ作品のファンがいたって勝手に勘違いした結果だな。


『異なる世界の記憶を持つ者は突出した力を持つ者が多いです。わたしやマジカルチンポッコがいい例です』


「でも俺は⋯⋯」


『そうですね。あなたは比較対象となる魔法少女を知らないので分からないかもしれませんが⋯⋯別格に強いですよあなた』


「え?」


 転生者だから突出した力を持つと言われても素直に納得はできない。身体能力も学力も並、魔法少女の力こそあるが強さという意味では俺より強い人間がこの世界にはいたりする。


 突出した強さだけで判断するなら漆原や若鬼なんかも転生者ということになるぞ。あの二人は別次元で強いからな。


 俺でも勝てるか分からないレベルだ。漆原に関しては完全に無理ゲー。勝ちを諦めるレベルだ。


 それはともかくとして、世界樹(ユグドラシル)の言い分だと俺以外にも魔法少女は存在したことがあるのか?


「俺以外の魔法少女?」


『はい。わたしたちの世界への侵略を始める前のテスト的な行いで悪魔は何度か人間界へと侵攻しております。それを阻止する為にわたしも人間界へと妖精たちを派遣しました』


「その妖精と契約した者が魔法少女として悪魔と戦っていた」


『その通りです。もっとも今から100年も前の話ですからその当時の魔法少女は既に亡くなっているでしょうね』


 もし、今も生きていたら相談に乗って欲しかったけど⋯⋯亡くなってるなら諦めるしかないな。世界樹(ユグドラシル)さまはその当時の魔法少女と俺を比べたってことか。


「俺ってそんなに強いのか?」


『文字通り別格です。悪魔はあなたが思っている以上に強大な敵なのですよ。当時の魔法少女は悪魔一体を倒すのに5人がかりで挑んでいました』


「あっ⋯⋯」


『一人で戦える⋯⋯それこそ突出した強さの証明ではありませんか?』


 ミューが悪魔を倒す度にドン引きしていた理由が分かった気もする。思い返して見ると俺が見ていた日曜日の朝のアニメでは徒党を組んで戦っているヒーローが多かったな。


 それが普通なんだ⋯⋯。


『だからこそ、あなたがこの世界の救世主として選ばれたのでしょうね』


「世界樹(ユグドラシル)さまが選んだんじゃないのか?」


『わたしにそのような力はありませんよ。わたしが行ったのは100年前と同じように魔法少女の素質がある者の元へ妖精を派遣しただけ。そしてその者がたまたま、わたしたちと同じ特異点(てんせいしゃ)だった。それだけの話です』


 なるほどな。


 けど、冷静に考えるとかなり博打に近いと思ってしまった。だってそうだろ?100年前は5人がかりで倒していた悪魔を、たった一人で戦わせるんだ。普通に考えて勝てる筈がない。


 それを承知の上でやる他に選択肢がなかった。気持ち的にはどうにかなーれって感じだろうな。


「世界樹(ユグドラシル)さまは俺が転生者だと最初から気付いていましたか?」


『いえ、わたしがあなたの存在を知ったのはデア・アップファルからの報告を受けてです。契約した際に記憶の共有を行ったでしょう?』


「なるほど⋯⋯ミューか」


『はい。わたしと妖精はマジカルパワーでやり取りすることが可能です。そこであなたの事を知り⋯⋯悪魔とたった一人で戦えることに納得いたしました』


 世界樹(ユグドラシル)さまが俺の存在を知ったのはつい最近か。そして同じ転生者だと分かってる接触してきた。そんな感じか。いったんは納得。


 で、話を中断して申し訳ないが、マジカルパワーが何か気になって仕方ないので世界樹(ユグドラシル)さまに聞いてみた。


 そしたら『マジカルパワーはマジカルパワーですよ』って返ってきた。部下が部下なら、上司も上司だな。返答の結果が残念でしかない。


「それで世界の壁の壊し方ってのは?」


『マジカルパワーを通じてあなたに知識を送り込みます。目を閉じて神経を研ぎ澄ませてください』


 言われた通りに目を閉じて俺なりに神経を研ぎ澄ませていると、体の中に何か暖かいものが入ってくる感覚がした。それはやがてゆっくりと上へと上がっていき頭の中へと到達する。


「これが⋯⋯」


『はい、世界の壁の⋯⋯壊し方です』


 先程まで俺が知り得なかった知識が確かに存在する。けど、本当にこんな方法で?


『世界の壁は一度死んだことがある者しか視ることができません。あなたもよく目を凝らせば視える筈です』


 ベッドから立ち上がって、確認の為に窓を開ける。空には星空とお月様が浮かんでいる。世界樹(ユグドラシル)さまの言葉通りに目を凝らせば遥か上空に薄らと膜のようなものが視えた。


 あれが世界の壁?


『壊し方は先程共有した通りです。最大出力で壁に向かってブッパするだけ!穴が空いたら行き来は可能ですよ』


「あ、はい」


 ───壊し方はめっちゃ脳筋だった。















 ◇


 もうすぐ日が変わろうとしている。


 能力(アビリティ)を使うか、こうして悩んでいるうちに気付けば時間は過ぎていた。


「⋯⋯ふぅ」


 何度目か分からないため息。


 聞くのが怖くて勇気がでない。知りたいことを能力(アビリティ)で確認するだけ。数秒で終わることが怖くて踏み出せずにいる。


「⋯⋯⋯⋯」


 ───オレの命を護る為に純平は身を犠牲にした。だというのに、オレはあの場で純平を救うこともできず、あの場を離れることしかできなかった。


 最悪な光景が脳裏に浮かんで何度も吐きそうになった。もしかしたらもう二度と純平とは会えないかもしれない。そんな最悪の想像が霧崎と別れたオレを純平の家へと導いた。


 正直、会えるとは思っていなかった。オレの想像通りの最悪なことが起きていたなら⋯⋯純平はまだ家に帰れてすらいないだろう。


 そう思っていたからこそ、玄関から飛び出てきた純平の姿を見て心の底から安堵した。元気そうな姿を見て、杞憂だったとその身体を抱きしめたくらいだ。


「色々あったな⋯⋯」


 無事に会えた後は色々と話し合った。


 話の流れで勢いのまま告白したな。


 別にこの恋が成就しなくても構わなかった。


 純平に拒否られて、嫌われなければそれで良かった。告白したのはオレのエゴだ。オレの想いを知って欲しいと思ってしまった。


 結果は予想通りではあったが、オレの告白を受けた純平がオレの事を意識していることが分かった。それがたまらなく嬉しい。


 オレの一方的な好意じゃない。それがわかっただけで十分だ。


 純平がどの選択を選ぼうと、オレはその想いを尊重するつもりだ。オレの望まない結末であっても構わない。


「⋯⋯⋯⋯」


 椅子にもたれ掛かり天井を見上げる。


 最悪な一日だったとつくづく思う。


 任務を失敗して死にかけて、純平を巻き込んだ。オレのせいで純平は『Los Lobos(ロス・ロボス)』に加入した。純平との関係性が好転したと素直には喜べない。


 それに、純平はオレには言えないことをなにか抱え込んでいる。


 本人の口からも大丈夫だと、セックスはしていないとオレが求めていた解答をくれた。


 けど、漆原とどういうやり取りがあったかは教えてくれなかった。オレには知られたくないとはっきりと言われた。


 能力(アビリティ)を使えば簡単に知ることができるが、オレが知ることで純平が悲しむかもしれない。


 なら、知らない方がいい。いつか純平の口から語られるのを待てばいい。


「⋯⋯ふぅ」


 また、ため息。


 だからといって心の中でモヤモヤしているものが消えるわけではない。純平が大丈夫だって言っても嫌な事ほど考えてしまう。


「ごめん⋯⋯」


 先に謝っておく。オレは自分の中のこのモヤモヤを晴らす為に能力(アビリティ)を使う。ここで答えを得ていないと、この気持ちをずっと引きずるような気がしたから。


 とはいえだ!あれだけ言える時に言ってくれって純平を気遣った後に能力(アビリティ)で調べているのは流石にゴミすぎる。


 オレが本当に気になってるのはなんだ?それがこの心のモヤモヤに繋がっている筈だ。聞くのはそれだけでいい。


「遠回しに聞くか」


 オレが能力(アビリティ)で聞いたって純平が知れば悲しむかな?あるいは気持ち悪いと思われるかもしれない。


 そんな最低な事をオレは聞こうとしている。


「⋯⋯ふぅ」


 深呼吸の後、能力(アビリティ)を発動し心の中で問いかける。




 ───純平の経験人数を教えて欲しい。


 


 うん。自分でもゴミみたいな質問をしている自覚はある。純平に知られたらドン引きされるかもしれないな。


 それでも気になってるしまうのは仕方ない!


 純平は大丈夫だって、セックスはしてないと言っても、あの最悪の場面ではその先を想像してしまう。


 純平が漆原に抱かれる姿を想像してしまう。


 クラスメイトに借りたエロ本のせいだな。NTRものが流行っているのが未だに信じられない。オレは純愛イチャイチャものが好きだっていうのに。


 大丈夫だ。大丈夫だ。


 純平はセックスはしていないと言っていた。エロ本のようなことは起きていない筈だ。それでも気になってモヤモヤしてるからこうして答え合わせをしている。


 幾つか質問の候補はあった。


 純平は本当に処女なのか?なんて質問は流石に自分でも気持ち悪いと思ったのでやめた。他にも漆原に抱かれたのかとか、ストレートな質問は返答次第で死ねたので聞けなかった。


 その結果、かなり遠回しな確認になった。


 オレと純平の付き合いは非常に長い。保育園から高校の今に至るまで親友として10数年を一緒に過ごした。


 だからこそ分かる。純平は漆原に抱かれていなければ経験人数は一人もいない筈だ。


 純平に言い寄ってくるクラスメイトはいるにはいたが、それが恋人関係まで発展したことはない。


 純平自身がそういう行為は恋人としかしない主義だと語っていた。誰でもいいから童貞を捨てたいと叫んでいたクラスメイトとは違う。


 だから、オレの能力(アビリティ)で返ってくる数字は『0』の筈だ。


 やがて能力(アビリティ)がオレの質問に解答し、頭の中に数字が浮かび上がる。


 だが、そこにあった数字は⋯⋯。


「っ───!!」





 ───『1』。





 頭の中に浮かんだ数字が見えた時、グラりと視界が歪んだ。


 受け入れられない現実を直視して、急激なストレスを感じた体が意識を飛ばして心を護ろうとしている。


「くっ!」


 ガリッと唇を噛み締め痛みで無理やり覚醒する。能力(アビリティ)によって返ってきた解答は確かに受け入れられないほど残酷な答えだった。


 けど、本当の意味で苦しんだのはオレなんかじゃない!オレなんかの為にその身を犠牲にした純平の方がずっとずっと苦しんだ筈だ!


 こんな結果程度で意識を飛ばして楽になろうとするな!受け入れろ!受け入れろよ!


「⋯⋯くそっ」


 頭の中に浮かび上がる数字は徐々に役目を終えて消えていく。だからといって、解答(こたえ)が消えるわけじゃない。


『大丈夫だから⋯⋯啓吾は気にしなくていいよ』


 あの時の純平は無理して笑っているように思えた。その感覚は決して間違いなんかじゃなかった。


 大丈夫なわけない⋯⋯それなのにオレを心配させないように、純平は気丈に振る舞っていた。




 ───漆原に犯された事実をオレに気付かせないように⋯⋯。

 



「⋯⋯うっ⋯⋯」


 込み上げてくる不快感を耐えながらふらつく足取りでキッチンへ向かう。記憶を頼りに棚を開けると目当てのビニール袋を発見した。一枚を手に取ってトイレへ向かう。


 足取りが重い。傷を負っていた時よりも動くのが辛いと感じた。


 それでも力を振り絞ってトイレに入る。鍵を閉めたところで気力を使い果たしたように力が抜ける。


「⋯⋯っ⋯⋯」


 ショックだった。


 純平に嘘をつかれた事がじゃない。


 純平はオレを傷付ける為に嘘をついたんじゃない。オレを心配させないように⋯⋯オレが自分を責めないように、嘘をついてオレを護った。


 自分がどれだけ苦しんでもそれを表に出さず、心配するオレを逆に気遣った。


「バカ野郎だな⋯⋯」


 元気な姿を見て無事で良かったって、オレが考えた事は杞憂だって⋯⋯自分の都合のいいように解釈した。純平がどれだけ傷付いていたかも知らないで⋯⋯。


「⋯⋯おぇ⋯⋯」


 口元まで込み上げてきたものを無理やり飲み込む。


 吐いて楽になろうとするな。この不快感すら受け入れろ。


 逃げるな。向き合え。


 この不快感も、この胸を劈くような苦しみも全て受け入れろ。


 現実から目を逸らすな。


「あぁ⋯⋯っ───!!」


 感情のままに叫びたい思いを歯を噛み締めてグッと堪える。流れ落ちた涙すら不快で、乱暴に拭き取った。


「こうなった原因は⋯⋯全てオレだ」


 オレが弱かったから⋯⋯護ると決めた純平を、オレのせいで苦しませた⋯⋯。


「⋯⋯⋯⋯」


 ───オレはきっとこの日の事を一生忘れることはないだろう。


 己の無力さで大切な者を傷付けた。護ると決めた人に逆に護られた。


 自分の弱さを嫌というほど突きつけられた。




「⋯⋯まだ、遅くない⋯⋯」




 この痛みも苦しみも、全部噛み締めろ。受け入れろ。


「⋯⋯強くなる⋯⋯オレは今よりもっと⋯⋯」


 もう二度と純平が苦しまないようにオレが護るんだ。覚悟を決めろ。男だろ!大切な人を今度こそ護りきるって自分に誓え!


「オレが必ず護るから⋯⋯」


 もう二度とオレの大切な者には手を出させない。


 何を犠牲にしても、オレは必ず純平を護る。

前世の経験人数まで分かる万能さ(白目)

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