2章その0 前世の仲間はどこだ?
ダンジョンから帰り、パトリック公国の宮廷では、王子様とその従者、マリアンヌと共にエミリーはダンジョンを脱出する事にした。
ダンジョンから母竜フレイヤは、ゴブリンが通らない裏ルートを教えてくれた。
エミリーとフレイはお礼と育ててくれた感謝と共に、ダンジョンから地上へと登って行く。
空は台風でも去った後のように快晴だった。
「ちゃんとあの2人断罪しないと困るぜ。」
エミリーは泥まみれのドレスで話した。
(なんとかなるんじゃないですかね……、俺らじゃどうにもならないっす。)
フレイもとい竜雄はエミリーの頭の上に乗ったまま話した。
確かに裁くのはパトリック公国の方々だ。公爵令嬢が騒いだからと言ってとうにもならないと思った。
もしかしたら自分が裁かれる可能性もあるのだ。
ダンジョンのドラゴンは、母竜のフレイヤはダンジョンに残り、ゴブリン達が街に出てこないようにすると話がついた。
そして、ダンジョンのゴブリンの負けていたギルドの人達は戦えなかったので後からダンジョンに来た人達はがっかりしていた。
(落石を砕いたら、下に行けるんだけどな。)
エミリーもとい栄二はそう思った。
落石の事を考えていたらフレイもとい竜雄が
(王子に聞いてみればいいじゃないですか?)
エミリーの頭の上から話し掛けた。
「おーい!王子様。あのダンジョンに落ちているどでかい岩。あれ何とかするのか?」
エミリーは、王子に聞くと、王子はくるっと振り返った。
「ああ!それの事かい?鉱夫を頼んであるから大丈夫だと思うけど。」
王子はおどおど話ながら、話した。
(確かに、掘るのは鉱夫の仕事だけれども王子はなぜダンジョンの中の何かを狙っているか分かるのか?)
エミリーは思わず疑った。
「まさかまたダンジョンの宝を狙おうとしているんじゃないだろうな。」
「いや、そんな事は考えてないよ。」
王子はエミリーの圧に汗をだらだら流していた。
そこをマリアンヌが遮った。
「エミリーさん、疑うのは止めて下さらない?王家に対するお触れはすぐには出せないのです。」
マリアンヌはいつもよりきっぱりと話した。
どうもこの世界ではこう王子様といえどもすぐにはお触れは出せないらしい。
「確かに、電話も無いしな。」
栄二もといエミリーは納得していた。
この世界には電話は無いのだから。
改めて、エミリーは面倒な世界だと感じた。
そもそも、本の世界だからしょうがない。
そして、エミリー含む一行はお城についた。
お城の周りでは、国民達の怒りの集会
が周りを囲い込んでいた。
城壁の扉にはいかにも屈強な兵士が立っていた。
「なんなんだ⋯…これは?」
王子はその様子に驚いていたら、自分がいない間に国民の不満が溜まりに溜まっていたのだ。
「⋯…、自業自得だな。」
エミリーはへっと鼻で笑った。
(多分、これ、俺の母ちゃんが仕向けたのかもしれないっす!)
フレイもとい竜雄は、エミリーの頭の中にそう伝えた。
「マジか!それじゃ困るんじゃねえか!」
エミリーもとい栄二はフレイに話しかける。
(大丈夫っすよ!兄貴、王子の裁きが終われば騒動も落ち着くっす!)
「いや!でもさ⋯…?」
エミリーもとい栄二は自分たちの詫び以上の事を強いられているのを見て、これ王族のケジメかとエミリーは様子を見てそう思った。
エミリーは前世時には、ケジメを手下にも相手の鉄砲玉にもやらしていた。
あまりにも王家のケジメはスケールが違っていた。
「あのまま行くと市中引き回しの上に処刑人に、首を切り落とされますわ。」
マリアンヌは、民衆の怒りを何とかしなればと思っていた。
「なんだぁ、俺たちのケジメより!もっと酷でぇな!」
「貴方もしたことがあるのですか?」
マリアンヌは、思わずエミリーの問いただしてしまった。
「いや、前世でそういう事をして来たからなぁ⋯…。たまたまそういう現場に出くわしちまうとよ、昔の血が騒ぐのさ。」
「でも、この都では王家だけですよ!」
マリアンヌは王子の受ける刑罰をエミリーに説明していた。
エミリーもとい栄二にとっては、王子の受ける刑罰は前世でのヤクザの自分がしていたケジメなのだ。
エミリーもとい栄二は王子の手を無理やり取り、城の前の広場に王子を引っ張り出した。
「おい!てめぇら!」
エミリーもとい栄二は絶叫しながら王子の手を出して金槌で指を潰そうとする。
「待ってくれ!エミリー君!」
王子は抵抗していたが、エミリーはそんな事も聞かずに王子を引きずりながら、大工の家を見つけてから、金槌を貰って、その家から離れた。
そして、エミリーは群衆が広場に集まりだしたのを確認してから、そしてエミリーは叫びまくった。
「おい、てめえら!王子の悪行が嫌だと言うのなら、俺がこいつにケジメをつけてやるぜ!」
エミリーは広場に集まった群衆にヤクザのケジメを見せようとした。
エミリーは広場の台に王子の右の小指を載せた。
「王子!きちんと指詰め覚悟しろ!」
エミリーがそうしようとすると、群衆の中から、修道女が現れた。
「おやめください」
「ああっ?なんだと?」
エミリーもとい栄二はブチ切れていた。何しろ何も知らない修道女が注意してきたのだ。
エミリーにとっては怒るのも当たり前だ。
「……、確かに王子は、悪行を起こしましたが、私の信仰している神も改心するというのなら、王子の罪は許されます。」
その修道女はエミリーに説明してきた。
「私は聖ペトラ教会で奉仕しているシスター・ヴィヴィアンと申します。」
「なんで!シスターさんが公爵令嬢のすることにケチをつけるんだよ!」
エミリーもとい栄二の生きていた世界は許しのない非情な世界だと。それに対して文句言う人も一人もいなかった。
たが、このシスター・ヴィヴィアンと言うらしい人が初めて文句をつけたのだ。
驚くのも無理は無い。
「……、てめえ!俺にも文句をつけるのかあ?」
エミリーは外見の可愛らしさとは裏腹に非情な言葉を話した。
「王子様は我が聖ペトラ教会の孤児院の資金援助をなさってます。」
ヴィヴィアンはエミリーの非情な発言に反論した。
ヴィヴィアンにとっては、資金を応援してくれる人なら仕方ないと、言わんばかりにエミリーもとい栄二は
「畜生!」
と叫んで王子の手を離した。
王子はホッとした顔で、台の前にへたり込んだ。
群衆のどよめきも落ち着いてきた。
「聖ペトラ教会には君を連れて行こうと思ったていたんだ。」
王子は溜め息をつきながら、やれやれといえ顔をしていた。
「だって、それだったら俺の提案したのが一番楽じゃねぇかよ。」
エミリーはまだ燻っていた。
慌ててエミリー達の後をマリアンヌが追ってきた。
「あなたは、シスター・ヴィヴィアン!お久しぶりです!」
マリアンヌは軽く一礼をした。
どうやら従者は城に帰っていたらしい。
マリアンヌは城の周りの群衆の騒いでる方向が、城の前の広場のどよめきが大きかったので、城に戻ろうとしていたマリアンヌは慌てて方向を変えてこの広場の前に来た訳である。
さっきそこにいたのはいつも顔を見合わせている修道女のヴィヴィアンだった。
「聖ペトラ教会では子どものお世話もいつもしてくれて助かります。マリアンヌさん。」
ヴィヴィアンは厳しい顔から、ニコニコした表情に、変わった。
「マリアンヌさんより、ヴィヴィアンのがよっぽどこえーよ!」
エミリーは思わず声を出した。
群衆のどよめきを鶴の一声で黙らせる迫力は栄二でもビビる位だった。
「王子は我が聖ペトラ教会にとっては大事な方であり、市中引き回しにしてもいい方ではありません。」
ヴィヴィアンは群衆にもエミリーにも釘を刺した。
「聖ペトラ教会は年中資金不足であり、その信者を援助してくれる方はとてもありがたいのです。」
ヴィヴィアンは悲しそうな顔をした、
「孤児院の子達には着る物も食べる物もありません。」
ヴィヴィアンが話をしていると、マリアンヌがヴィヴィアンの手を取って優しく話しかけた。
「ヴィヴィアンさん、出来ればこのまま孤児院まで案内してくれませんか?彼女の仲間を探しているのです。」
マリアンヌの話にエミリー同様に血が昇っていたヴィヴィアンははっと気がついた。
「す、すみません!つい暴力を見るとカッとなってしまって……。」
ヴィヴィアンは恥ずかしそうに頭を下げた。
「案内してくれると助かります。」 マリアンヌもお礼をした。
「西の丘の上の方に教会が建っています。そこに向かって案内しますね。」ヴィヴィアンは、エミリーにも元の笑顔に戻って、西の丘の上にある聖ペトラ教会まで向かった。
聖ペトラ教会までは緩やかな坂道が続く。
本当に街の外れにある孤児院だった。
「ペトラ教会自体、街の外れにあるんですよ。」
と、ヴィヴィアンは、丁寧に聖ペトラ教会の場所を説明した。
確かに教会は高い丘にある方が分かりやすい信仰の場だった。




